>『シンドラーのリスト』(93)や『マイケル・コリンズ』(06)などで、演技派として知られる名優リーアム・ニーソン。知性を感じさせる落ち着い たたたずまいに加え、『96時間』(09)や『特攻野郎Aチーム』(10)などでの派手な本格アクションにも挑戦するなど、58歳となった今もなお演技の 幅を広げているスターだ。そんなリーアムの主演作『アンノウン』(公開中)、『クロエ』(5月28日公開)が立て続けに公開されるが、この二作ではそんな リーアムが次から次へと散々な目に遭ってしまうのだからまさに見逃せない。
『アンノウン』でリーアムが演じるのは、異国で記憶喪失に陥る植物学者の役。交通事故に遭遇し、昏睡状態だった彼が目を覚ますと、見たこともない男 が自分になりすましていて、妻からは「知らない男」だと言われ、挙げ句の果てには「お前が偽者だ」と罵られることに。訳がわからないまま、警察に駆け込む も相手にされず、さらに謎の殺し屋から命を狙われる。「もう勘弁して」と言いたくなるような酷い仕打ちに見舞われてしまうのだ。だが、常人なら心が折れて しまいそうな状況も、リーアムには問題なし。絶対に真実をつかんでみせると、謎の敵を相手取り、タフな格闘やスリリングなカーチェイスを披露する。どこま でも謎を追いかけるアグレッシブな彼の姿に、ぐいぐい引き込まれていくはずだ。
一方、妻から浮気を疑われ、受難というより、むしろ女難に巻き込まれる大学教授役を好演しているのが、官能サスペンス『クロエ』だ。講演中に女学生 たちから食事に誘われたり、レストランではウェイトレスの女性と思わせぶりな会話を交わしたりと、若い女性たちから熱い眼差しを送られているダンディな 夫。ジュリアン・ムーア扮する妻は、そんな夫の不審な行動に疑惑を抱き、アマンダ・サイフリッド演じる若く美しい娼婦クロエに「夫を誘惑してほしい」と依 頼する。クロエにてんまつを逐次報告させるものの、その内容を聞いて呆然となってしまう。なぜなら、クロエの魅力にメロメロになっていく夫の姿がリアルに 語られるからだ。映画はその後、嫉妬と猜疑心に狂った妻が、クロエの誘惑に負けて危険な関係に落ちていく姿が中心に描かれる。リーアム演じる夫も、そんな 彼女たちに翻弄されていくのだが、真面目そうな彼が年下の悪女に迫られタジタジとなるシーンは『アンノウン』とは違った表情が見られて面白い。ちなみに、 どちらの作品でも学者や教授といったインテリな役柄を演じている点は、さすが知性派俳優といったところだ。