これと似たような作品、どこかで見たことあると思って、思い出したら「AVP2」だった。そういえばあの作品も兄弟監督だったけど、この作品も確か兄弟監 督のはずで「もしや」と思ったら同じ人達だった。く~~~~~! 予めそうと知っていれば、こんな作品に貴重な時間とお金をつぎこんで損害を被ることもな かったものを! 事前調査はやっぱり重要だわ。

「AVP2」といえば私が見た中でも5本の指に入るであろう稀代のバカ映画でさ、監督達とって重要なのは逃げ回り生き延びようとする人間達ではなく、彼ら を追い回し殺戮しようとするクリーチャーの方なのよね。監督達の投影とおぼしき兄弟が生き残れば、あとは全人類が滅亡しても一向に構わないと思って映画を 作ったとしか思えない。全人類の未来が男兄弟二人に託されてもねえ、子孫の繁栄のしようがないからどっちみち人類は滅亡するんだけど。

彼らの人類の未来に対する期待の無さは本作でも健在で、相変わらず圧倒的に強いクリーチャー側にたっての買勝って当たり前な戦闘を繰り広げておりました。

この映画は人間に感情移入したんじゃダメ。
自分が人間以外のエイリアンとかプレデター、或いは「マトリックス」に出てきたセンチネルみたいな戦闘マシンになりきって人類掃討作戦に手を貸せるような人じゃなきゃ楽しめません。

とはいえ、湿度の高い日本で泣ける映画ばかり上映中のシネコンにあっては一服の清涼剤になるかも。子どもや犬やその他の動物出して無理矢理情緒に訴え、登 場人物をやたら余命幾ばくもない設定にしてはお涙頂戴を始める邦画に飽きた時には、このドライ極まりない「スカイライン-征服-」は泣いてる暇もない分 いっそすがすがしいかも。襲い来るエイリアンは子どもも動物も西田敏行も分け隔てなく襲いますからね、西田敏行は出ていないけど。とにかく「泣けない」。

泣けないのはまあいいとしても、笑えないのは頂けない。
何故笑えないのかというと、おもしろいシーンがないからなのだけど、演出する側にとってはひょっとしたら「人間が○○される」というシーンそのものが「お もしろ」かったのかもしれません。「ボス」より「雇い人」の方が危機管理能力あるとか、そういうのが面白いシーンとして用意されてたのかもしれないけど、 そのおもしろさは全く伝わらなかったということで。ま、どうみても「笑えない」。

その上、観客には襲ってる側の事が何にも分かりません。
まあ、あれです。私達が庭にはびこってる雑草だとしたら、ある日突然容赦なく抜かれる日が来たとしても理由も何も分かりませんよね。「今、つぼみ付けた ばっかりなんです。せめて咲くまで、いえ、実を結ぶまでお慈悲を~」と雑草が訴えてたとしても人間貸す耳持ってないわけだし。そういう状況で雑草が人間の ことを理解できないように、「スカイライン」の登場人物達(=雑草)も襲ってくる相手(=人間)のことは全く理解できない。それはそれで大変リアルだとは 思うのですが、だからといっておもしろいわけではないのでして。

あれでですね、襲ってきた相手が美しかったとすればまだ何か見る喜びがあったと思うんですよね。でも「マトリックス」に出てくるセンチネルのように機械な のになんかグチャグチャした感じのヤツに襲われたら、映画で見てても生理的嫌悪感ですよ。同じデザインでももっと無機的に硬質なものにすればまた違ったか もしれないけれど、妙に有機的に、それも汚い方向で描いてるんだもんな。確かに動きはすごいのだろうけれど、美しくもなんともないものなんざ、まともに見 る気も起こりませんっての。

というわけで、何かよっぽどおもしろくない事があって人類なんて壊滅すればいいと思っている人でもない限り、チケット代は別の作品のためにとっておいた方がいいと思います。

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