夕刊フジより(以下一部抜粋)
> 「僕は秀忠が好きですね。おやじに反発したり、かわいらしさがあったり、頭の回転も速くて、人間味がありますよね」
ご存じの通り、NHK大河ドラマ「江~姫たちの戦国」で徳川秀忠役を好演中。秀忠といえば、江戸幕府第2代将軍であり、徳川家康の三男。そしてドラマでは、上野樹里が演じるヒロイン・江の3番目の夫でもある、かなり重要な役どころだ。
「秀忠は、当時の政略結婚や戦などに嫌悪感を持ちながら、どこか諦めているところがあります。でも根っこの部分では、それに反発している江と似ているところがあると思いますね」
基本的には寡黙な人のようだが、秀忠の話になると雄弁。多忙なスケジュールの中で、役作りにも相当熱心に取り組んだようだ。
「言葉遣いや所作などは指導の先生に教わっています。文献も5冊ほど読みましたね」
もともと、凝り性なのだ。明治大農学部在学中に国際動物遺伝学会議のベストポスター賞という権威ある賞を受賞したのも、才能は当然として、努力家でもあったからだろう。しかし卒業後は、理系とは程遠いバーテンダーの道へ。
「店長という中間管理職もやりましたよ。オーナーや現場の意見を自分がすべて背負わなくてはいけなかったので、結構キツかったです。当時は今よりも体重が10キロほど少なく、60キロを切っていました」
身長は182センチだ。かなり痩せていたのだろう。
「あの仕事で、打たれ強くなりましたね。それが今では役立っています。ありがたいですね。って、純粋には言えませんが…」
転機となった仕事といえば、言わずとしれたNHK「ゲゲゲの女房」の水木しげる役だが、この作品への出演には、かなりプレッシャーを感じていたようだ。
「作品と同じくらいに水木さんも有名で、しかも実在している方ですしね。本質的なところを見抜いて役作りをしなくてはいけないのですが、水木さんのイン タビュー映像などを見ても、シャイな方なので捉えどころがなかったんです。でも実際にお会いして、雰囲気や優しさなどを感じることができ、演じることがで きました」
この作品のタイトルは流行語大賞を受賞。そして彼自身も第35回エランドール賞で新人賞を受賞した。
「賞を獲ることや人気者になるためにやっていたわけではないけど、ひとつの結果として受け止めるのであれば、自分のやってきたことは間違いではなかったということですね」
2006年にテレビCMでデビュー。そのころと比べると、顔つきも変わった。その理由には、内面の変化もある。
「最初は右も左も分からなかったので怒られてばかりで、現場に行くのが怖かったんです。それに、もともとネクラなので、あまり目立ちたくはないんです。 でも割り切ろうと思い始めてからは、楽しくなりました。経験したことがない環境の中で仕事ができるのは刺激になりますし、大御所の方々の芝居は勉強になり ます」
本人以上に変わったことがある。
「周りが変わりましたね。僕は普通の人なので、何でこんなことになっているのか、分からないんです。こんなはずじゃなかった…」
大ブレークしたからこその悩みは尽きない。
「バーテンダーといっても、一種のサラリーマンでしたからね。この業界(=芸能界)に対しての違和感はあります。仕事で注目されることは良いことだと思うのですが、それ以外のことでは、良いことはひとつもないです。そこが難しい」
なんとも正直な答えだ。人気者になっても、ずっと変わりたくないことがあるという。
「役者という職業の前に1人の人間なので、その感覚は持っていたい。普通の生活をしたいけど、それができなくなっているので、せめて普通の人の感覚だけは忘れたくないんです」
周りの熱狂とは裏腹に、とても冷めた目で自分を見つめている。そんな人の話、どこかで聞いた気がしたなと思ったら、思い出す前に答えを教えてくれた。
「どこか冷めているところはあります。そこは秀忠と似ているかもしれませんね」
(ペン・加藤 弓子 カメラ・寺河内美奈)
■向井理(むかい・おさむ) 1982年2月7日生まれ、29歳。神奈川県出身。2005年、雑誌のストリートスナップに出てスカウトされる。06年に CMデビュー。その後、「バンビ~ノ!」、「ハチミツとクローバー」などのドラマに出演。10年放送の「ゲゲゲの女房」で人気に。映画「Paradise Kiss(パラダイスキス)」が公開中。「江」には先月から徳川秀忠役で出演中。
> 「僕は秀忠が好きですね。おやじに反発したり、かわいらしさがあったり、頭の回転も速くて、人間味がありますよね」
ご存じの通り、NHK大河ドラマ「江~姫たちの戦国」で徳川秀忠役を好演中。秀忠といえば、江戸幕府第2代将軍であり、徳川家康の三男。そしてドラマでは、上野樹里が演じるヒロイン・江の3番目の夫でもある、かなり重要な役どころだ。
「秀忠は、当時の政略結婚や戦などに嫌悪感を持ちながら、どこか諦めているところがあります。でも根っこの部分では、それに反発している江と似ているところがあると思いますね」
基本的には寡黙な人のようだが、秀忠の話になると雄弁。多忙なスケジュールの中で、役作りにも相当熱心に取り組んだようだ。
「言葉遣いや所作などは指導の先生に教わっています。文献も5冊ほど読みましたね」
もともと、凝り性なのだ。明治大農学部在学中に国際動物遺伝学会議のベストポスター賞という権威ある賞を受賞したのも、才能は当然として、努力家でもあったからだろう。しかし卒業後は、理系とは程遠いバーテンダーの道へ。
「店長という中間管理職もやりましたよ。オーナーや現場の意見を自分がすべて背負わなくてはいけなかったので、結構キツかったです。当時は今よりも体重が10キロほど少なく、60キロを切っていました」
身長は182センチだ。かなり痩せていたのだろう。
「あの仕事で、打たれ強くなりましたね。それが今では役立っています。ありがたいですね。って、純粋には言えませんが…」
転機となった仕事といえば、言わずとしれたNHK「ゲゲゲの女房」の水木しげる役だが、この作品への出演には、かなりプレッシャーを感じていたようだ。
「作品と同じくらいに水木さんも有名で、しかも実在している方ですしね。本質的なところを見抜いて役作りをしなくてはいけないのですが、水木さんのイン タビュー映像などを見ても、シャイな方なので捉えどころがなかったんです。でも実際にお会いして、雰囲気や優しさなどを感じることができ、演じることがで きました」
この作品のタイトルは流行語大賞を受賞。そして彼自身も第35回エランドール賞で新人賞を受賞した。
「賞を獲ることや人気者になるためにやっていたわけではないけど、ひとつの結果として受け止めるのであれば、自分のやってきたことは間違いではなかったということですね」
2006年にテレビCMでデビュー。そのころと比べると、顔つきも変わった。その理由には、内面の変化もある。
「最初は右も左も分からなかったので怒られてばかりで、現場に行くのが怖かったんです。それに、もともとネクラなので、あまり目立ちたくはないんです。 でも割り切ろうと思い始めてからは、楽しくなりました。経験したことがない環境の中で仕事ができるのは刺激になりますし、大御所の方々の芝居は勉強になり ます」
本人以上に変わったことがある。
「周りが変わりましたね。僕は普通の人なので、何でこんなことになっているのか、分からないんです。こんなはずじゃなかった…」
大ブレークしたからこその悩みは尽きない。
「バーテンダーといっても、一種のサラリーマンでしたからね。この業界(=芸能界)に対しての違和感はあります。仕事で注目されることは良いことだと思うのですが、それ以外のことでは、良いことはひとつもないです。そこが難しい」
なんとも正直な答えだ。人気者になっても、ずっと変わりたくないことがあるという。
「役者という職業の前に1人の人間なので、その感覚は持っていたい。普通の生活をしたいけど、それができなくなっているので、せめて普通の人の感覚だけは忘れたくないんです」
周りの熱狂とは裏腹に、とても冷めた目で自分を見つめている。そんな人の話、どこかで聞いた気がしたなと思ったら、思い出す前に答えを教えてくれた。
「どこか冷めているところはあります。そこは秀忠と似ているかもしれませんね」
(ペン・加藤 弓子 カメラ・寺河内美奈)
■向井理(むかい・おさむ) 1982年2月7日生まれ、29歳。神奈川県出身。2005年、雑誌のストリートスナップに出てスカウトされる。06年に CMデビュー。その後、「バンビ~ノ!」、「ハチミツとクローバー」などのドラマに出演。10年放送の「ゲゲゲの女房」で人気に。映画「Paradise Kiss(パラダイスキス)」が公開中。「江」には先月から徳川秀忠役で出演中。