オリコンより(以下一部抜粋)

>上流階級の邸宅に雇われ、家主と不倫関係に陥ったメイドの行く末を描く官能サスペンス映画『ハウスメイド』(イム・サンス監督)が公開中だ。『シークレット・サンシャイン』の主演で2007年カンヌ国際映画祭の女優賞に輝いた韓国のトップ女優チョン・ドヨンの恥らいのない脱ぎっぷりと、無垢な女性が狂気に満ちた女性へと変貌する振り幅のある演技が絶賛され、昨年韓国で大ヒットした。

観る前にチェック!『ハウスメイド』予告編

 ドヨン演じるウ二は、離婚歴がある中年女性。裕福なフン(イ・ジョンジェ)の邸宅のメイドとして働くことになり、双子を妊娠中のフンの妻ヘラ(ソウ)と6歳の長女ナミの世話をする。この家には長年仕える年配のメイド・ビョンシクもいて、一家の秘密もたくさん知っていた。ある日、主のフンがウニの部屋に忍び込み、ウニも彼を情熱的に受け入れる。二人の関係を鋭く察知したビョンシクは、ウニが妊娠したことにも気づき、ヘラの母ミヒに告げ口する。ミヒは密かにウニの出産を阻止する行動に出るのだが…。

 同作は、韓国映画史上の傑作と言われる故キム・ギヨン監督の『下女』(1960年)のリメイク。オリジナルが映画館で公開された当時の韓国では、「ちょうど中産階級が生まれ、田舎から都会に出てきた若者の働き口として、住み込みのハウスメイドの仕事も人気があった」とサンス監督はいう。

 しかしながら、当時の“現代性”も50年後の今となっては昔。サンス監督は「いまどき、ハウスメイドを雇っている家なんて、ほんの一握りの大富豪だけ。同じ題材を扱っても、社会が変わっているわけだから、私は私なりに今の時代の韓国の社会を映画の中に反映させたいと思った。リメイクといっても、いろいろなアプローチの仕方がある。オリジナルをリスペクトしつつ、骨組みだけを残して、中身はガラリと変えようと思った。マーティン・スコセッシ監督のスリラー『ケープ・フィアー』(J・リー・トンプソン監督の『恐怖の岬』のリメイク)のようにね」。

 「お金持ちの考えることって…」といささか呆れてしまうほど、今作の登場人物たちの業の深さにも驚かされる。天真爛漫で無垢な反面、主人の誘惑も受け入れてしまうウ二の浅はかさ。主人の秘密を利用しようとする狡猾な年配のメイド。裕福な暮らしを捨てたくないために、夫の浮気にも目をつむろうとし、イライラを募らせる妻。ウニの出産を阻もうと手段を選ばない姑。そして、メイドと肉体関係を結んでも罪悪感のかけらもなく、妻に対して自らの行いを恥じることもない屋敷の主人。邸宅で起こるこれら全てを観客に“のぞき見”しているような感覚にさせ、人間の心の奥に潜む負の感情をあぶり出す、サンス監督の演出が冴える。「観客の不安と緊張が募って爆発しそうになる。このときに抱く感情が“サスペンス”なのです」。