cinemacafe.netより(以下一部抜粋)



「ルパンと次元のようなコンビ」(プロデューサー談)とはよく言ったもの。レトロなバーを根城に、いまどき見かけない黒電話で依頼を受けるキザな“探偵” と、何を考えてるのかよく分からない“相棒”。見るからに正反対で、どこか憎めない2人の関係は大泉洋と松田龍平そのままである。最近、見かけなくなった のは黒電話だけではない。探偵という存在そのものが、日本のストーリーテリングで絶滅危惧種と言えるかもしれない。煙草をふかしてどこか気だるそうに事件 を嗅ぎ回る探偵。そんな、男ゴコロをくすぐる古き良き時代の“かっこよさ”を『探偵はBARにいる』の探偵&相棒コンビは思い出させてくれるのだ。北の哀 愁あふれる繁華街・ススキノを舞台にした、美しくも儚い“新”探偵物語を2人に改めてふり返ってもらった。

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探偵のアドバイスに「好きにやらせてください」と相棒は拒否

子供の頃から探偵ドラマに親しんでいたという大泉さん。
「僕の世代はギリギリ、TVで実写の探偵ものを多くやっていて身近に感じていました」。
一方、松田さんが抱く“探偵”という職業のイメージは?
「状況によって正義にも悪にもなれる存在かな。いろんな探偵が描かれていて、だからこそ『探偵と言えばこういうもの』というのがないところが好きですね」。

謎解きの面白さは言わずもがな、シリーズ化を目論むだけあって、探偵と相棒の高田という、この正反対の2人のキャラクターこそ、本作の魂とも言える。絶妙な掛け合いを見せる大泉さんと松田さんだが、実は本作が初共演。

大泉さんが「(松田さんは)無口な人なんじゃないか? と構えていた」と初対面をふり返れば、松田さんが「構えてらしたんですか?」とボソリと低い声で真 顔で聞き返す。この松田さんの予期できない“食いつき”が大泉さんにとってはツボのよう。爆笑しつつ“松田龍平”という男をこう解説する。
「正直、イメージしていたよりも面白かったです(笑)。『あ、この人、面白いんだ』って、僕の“おもしろレーダー”に引っかかりました。こうやってちょっ と話しているだけでも面白いでしょ? 『構えてらしたんですか?』ってそんな食いつかなくてもいいのに(笑)。共演しながらそういうとこ楽しんでました ね」。

一方、「会う前にイメージを持ってお会いしたわけじゃないのに、それでも『あぁ、イメージ通りの人だなぁ』って思えた」とは大泉さんについての松田さんの弁。この答えに隣の大泉さんは再び大爆笑だったが、まさに言い得て妙。

2月の北海道ロケでの、雪の中での激しいアクションシーンは苦労の連続だったようだが、次々と現場でのエピソードを語る2人の表情は楽しげだ。
「(雪上での)車の運転では、大泉さんが北海道生まれの知恵を授けてくれました。『いきなりアクセルを強く踏むとタイヤが空回りするから、ゆっくりじんわりとかけるといい』とかね」と松田さん。

だが、大泉さんの口からは全く別の事実が…。
「龍平くんはすごくうるさそうな顔して聞いてましたね。明らかに『はいはい』みたいな感じで。おれが知恵を授けてるのに『分かりました。でも最初の一回だ け好きにやらせてください』とか言って、言うこと聞かないの(笑)。それでやってから『あぁ本当だ。大泉さんの言うとおりでしたね…』って」。

「東映が撮れないなら自費で作ろうかと」(大泉洋)

まさに2人の関係性は劇中の探偵と高田そのもの。ちなみに探偵と高田に関して、特に映画の中でバックグラウンドの説明などはなされない。そもそもこの2人がなぜ一緒にいるのか? 謎めいた2人の関係について大泉さんの意見は?
「何なんでしょうねぇ…(笑)? でも僕自身、妙に落ち着くものがあるんだな、という気はしました。僕はどうしても高田を龍平くんの印象と被せて見てしま うところがあると思いますが、やっぱり似たようなところ――見てて思わずニヤッとさせられるところがあるんです。今日も、龍平くんが来てくれただけで嬉し い。そう思わせる“危うさ”があるんですよ、『いつでもいると思うなよ』という類の。なんか寝過ごしそうな感じが多分にあるから『あぁ来てくれたか。彼に もスケジュールが行ってたか』という感じ(笑)」。

その言葉にさも心外といった表情で、「来ますよ」とつぶやく松田さん。だが大泉さんの言う、“何となく居心地の悪くない2人”というのは松田さん自身も感じていたよう。
「どうやって出会ったのか忘れてしまったけど、よく一緒にいる奴って僕にもいたりするんです。『あぁ、そういえばどうやって出会ったんだっけ?』と思いつ つ、そんな頻繁に互いを確認し合わなくても一緒にいれる相手というか。探偵と高田もあのバーで、おそらく大したこと話してなくて、お互いが自由にしながら 隣に座ってる。どこか自分を投影できたところもあった」。そう語る松田さん自身、どこか物憂げな表情を浮かべながら、それでいて大泉さんの隣を楽しんでい るように見える。

先述の通り、当初よりシリーズ化を視野に入れて製作された本作だが、公開前からすでに続編に向けて大泉さんは意欲満々。
「バーのカウンターになかなか手に入らない1枚板を使ってお金をかけすぎたらしくて、1作じゃ元が取れないそうです。万が一、東映が撮れないなら自費で作ろうかと。龍平くんは出てくれるってすでに確約は取ってるので(笑)、スタッフ兼俳優の弁当手配でやります!」

ナレーションでハードボイルドな渋みの効いた声を響かせたかと思えば、なぜか自宅の狭いアパートでガウンという間の抜けた姿をさらす探偵。そのひとつひと つにいまどき流行らない、男たちの男くさ~い憧れが詰まっている。「男ってやつは…」そんな感想を持ちつつ、ニヤリと笑ってほしい。

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