ぴあ映画生活 より(以下一部抜粋)


>全米で初登場ナンバーワン・ヒットとなり、日本でも好評を博しているスリラー『ラスト・エクソシズム』。『ホステル』シリーズ等で知られるイーライ・ロス監督がプロデュースを手がけた本作は作り物の記録映像、いわゆるフェイク・ドキュメンタリーのスタイルで作られているが、この手法を用いた作品はここ数年、増加の傾向にある。日本でも評判となった超低予算映画『パラノーマル・アクティビティ』や、スペイン製ホラー『[REC]』は、予想外の反響ゆえにシリーズ化されたほどだ。このブームの背景には何かあるのか、ジャンル映画に造詣の深い映画評論家、江戸木純氏に舞台裏の事情を訊ねた。

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注目すべきはフィルム撮影からデジタルカメラへと移行しつつあるハード面の変化だという。「デジタルカメラの技術的向上によって、小型軽量、高性能のカメラが作られました。そのおかげで、フェイク・ドキュメンタリーは世界的に激増しているし、“POV(主観映像)”を部分的に取り入れた作品も増えています。つまり、“フェイク”か否かを抜きにして、誰でもドキュメンタリーを撮ることができる時代になった、ということです」

『ラスト・エクソシズム』も、この流れの中で生まれた作品といえる。新鋭ダニエル・ニューマンを起用した本作は、ハリウッドのインデペンデント系スタジオが作ったもので、『パラノーマル・アクティビティ』に続く作品として期待されている。「製作会社のストライク・エンタテインメントは『ドーン・オブ・ザ・デッド』や『遊星からの物体X』などのリメイクを手がけています。おそらくは、『パラノーマル…』の大ヒットを見て、『エクソシスト』の現代的なリメイクとしてドキュメンタリー手法を取り入れ、『SAW』シリーズの行き詰まりを感じていたアメリカの配給会社ライオンズゲート社がそれに乗ったという企画でしょう。イーライ・ロスの名前も効いてか思惑どおりに大ヒットし、来年公開で続編も決定しています」

映画の都ハリウッドでさえ、オーソドックスな手法で撮るホラーは減少し、この手法で作られた作品が増えているという。「何より、安い製作費で高い利益が見込めるジャンルという理由があります。また、一攫千金を狙う若手クリエイターたちも多数、低予算で儲かりそうなこの手の企画を各社に持ち込んでいます。ハリウッド大作の多くはCGを多用し、一見リアルに見えますが、逆に“作りもの”感の強い作品が増えています。そんな中で、フェイク・ドキュメンタリーの“リアルな怖さ”は新鮮に映るから、人気を博しているのでしょう。多少飽きられてきてはいますが、業界全体としては内容次第で“まだイケる”という感じではないでしょうか」

今後もさらに増えるであろうフェイク・ドキュメンタリー作品。そのブームを盛り上げる作品としても、『ラスト・エクソシズム』はぜひとも注目しておきたい。

文:相馬学


『ラスト・エクソシズム』
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