私、「セルラー」の頃からクリス・エヴァンス好きだったんですよね♪ だから「ファンタスティック4」も見たしその続編も見たし、まだアカデミー賞とる前のダニー・ボイル監督の「サンシャイン2057」も見ました。キアヌ・リーブス主演なのに観客のあまりいなかった「フェイクシティ ある男のルール」も見たし、ダコタ・ファニングと共演した「PUSH 光と闇の能力者」も見ました。これらの作品が主としてファンタジー、SF系なのは私の趣味だからですが、彼の容姿がその手のジャンルにぴったりはまるということもあるのでしょう。


私の見た作品の中では、クリス・エヴァンスは常に誰かを助けるために体を張っていました。

「セルラー」で、たまたま受けた電話の相手の彼女の願いを聞いて、縁もゆかりもない彼女とその家族を救うべく必死に奔走していた頃から彼の本質はちっとも変わっていないのです。

「ファンタスティック4」の脳天気なヒューマントーチだって、心の底に「誰かの役に立ちたい、人を助けたい」という気持ちがあるからこそ、楽しく浮き浮きとヒーロー活動にいそしんでるわけですよ。

天真爛漫さが影を潜めてしまった「サンシャイン2057」でも「PUSH」でも、それでも彼は他人のために自分の身をなげうって、そして見返りは求めませんでした。「フェイクシティ」でもそれは同じだったのだと思います。


見ず知らずの他人のために自分の身を投げ出して、そして何の見返りも求めない。それこそがヒーローの資質だとしたら、クリス・エヴァンスは常にその王道を歩んでいたことになります。


「キャプテン・アメリカ」はその「ヒーローの王道」を何のてらいもなく前面に押し出して、そして押し切ってしまった映画でした。クリス・エヴァンス以上にそのタイトルロールにふさわしい俳優はいなかったでしょう。


コミック原作だから許される、あり得ないほど善良な人間、スティーブ・ロジャース。そんな主人公を描きながら、しかし「キャプテン・アメリカ」はリアリティーに満ちていました。スティーブ・ロジャースみたいな善人、現実にはいるわけないです。ファンタジーが前提であっても、映画を見ながら「こんなヤツいねーよ」と思ったら、その瞬間からその作品はリアリティーを失います。ところが「キャプテン・アメリカ」ではそうならなかった。何故なら彼の示している「善良さ」が決して特殊なものではないからです。普通の人が心の奥に秘めている「誰かの役に立ちたい」という心――電車でお年寄りに席を譲ってあげるとか、義援金を寄付するとか――その延長線上に「キャプテン・アメリカ」の精神はあるのですね。間近で転んだ人がいたら助け起こしてあげるような素朴な親切心、それは全人類に普遍に存在しているものなのでしょう。だからこそ「キャプテン・アメリカ」はアメリカの名を冠しているにもかかわらず全世界で受け入れられた。それはまだまだ人類も捨てたもんじゃないという福音でしょうか。


ちなみに監督のジョー・ジョンストンも好きなんですよね、私。

「オーシャン・オブ・ファイアー」のように、心にトラウマ抱えた主人公がそれを乗り越えて新たな世界へ踏み出すタイプの作品がお得意ですが、「キャプテン・アメリカ」においてはそれはスティーブ・ロジャースが小柄故にこうむる数々のトラブルという形で表現されていました。だから乗り越えるのも心じゃなくて肉体。それがちょっと目新しい点かな? スティーブの場合は最初から黄金の心を備えているので、あとはそれを如何に表現するかだったのですが、本当にまっすぐに、一点の曇りもなく美しい心を描ききってましたね。普通、できないです、そんなの、恥ずかしくて。でも監督自身がそれを乗り越えて作った作品だから、「キャプテン・アメリカ」は素晴らしく、そして美しいのでしょう。


そういえば「ウルフマン」に続いてヒューゴー・ウィービングもご出演でしたが、今回見てしみじみ思ったのが、彼はどこかが壊れたまま世界の支配を目論む人の役が上手いんだなということ。「壊れた」というのは「V フォー ヴェンデッタ」のように肉体的な傷の場合もあるし、「トランスフォーマー」のメガトロン(声)のように実際に壊れている場合もあるし、「マトリックス」のエージェント・スミスのようにソフトがバグってる場合もあるし、「ロード・オブ・ザ・リング」のエルロンドのように娘を溺愛するあまりちょっと精神的にキちゃってる場合もありますが、とにかく何か大事なものを欠落させた存在を演じると迫力倍増なのですよ。「キャプテン・アメリカ」のレッドスカルも完全にイっちゃってる人で、ついでに言うなら「そんなイっちゃってる自分が好き♪」なナルな方でした。このナルっぷりも大体いつもどの役でもそんな気が……。いやしかし、だからこそ悪役やらせたらピカイチなんだと思いますよ。最近売り出し中のマーク・ストロングなんかヒューゴーに比べたらマトモすぎて物足りないと思ったもん。


ヒロイン役のヘイリー・アトウェルは当時の化粧とヘアスタイルが完璧に似合っていて美しく、かつ腕っ節も強くて良い感じでしたよ~ん♪ 「大聖堂」でファンになった方の期待は決して裏切られないと思います。


肝心な3Dですが、なんかもう慣れてしまったので……映画が終わってトイレに入ってそこで鏡見て、初めて自分が3D眼鏡かけっぱなしなのに気づいたくらいです(赤っ恥)。


そうそう、エンドロールが終わってから、かなり長い「アベンジャーズ」へのフリがありますので、最後まで席を立たないように。特に「マイティ・ソー」のロキのファンは必見かも♪