オスカー女優ティルダ・スウィントンが3度目の来日!師である故・デレク・ジャーマン氏へ感謝の気持ちを表明

シネマトゥデイ


 映画『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』のキャンペーン以来、約5年半ぶり3度目の来日を果たしたオスカー女優ティルダ・スウィントンが、ミラノの裕福な家庭に生きる孤独なマダムを体当たりで演じた映画『ミラノ、愛に生きる』。長年、妻、そして子どもたちの母親として家族に尽くしてきたもののその役目を終えようとしたとき、息子の友人と激しい恋に落ちる女性のさがをオールヌードもいとわず演じ切ったティルダが、生涯の師とあおぐ故・デレク・ジャーマン氏への思いなどを口にした。

映画『ミラノ、愛に生きる』場面写真

 東日本大震災の後、来日を避けるスターも多い中、「マイ・スウィートハート」と呼ぶ恋人と共に3度目の来日を果たしたティルダは、とにかく何よりも早く日本に戻りたいという気持ちが強かったという。「今回、日本に来ることについてはまったく躊躇(ちゅうちょ)しなかったわ。それに、わたしが『のどがイガイガするの』と言うだけで、すぐにのど飴を差し出してくれるようなステキな彼と一緒だからとても幸せよ」と早速アーティストの恋人サンドロ・コップとの関係をのろけた。

 ヒロイン、エンマの持つ静けさに共感したというティルダは、今回の役柄にすんなりと入り込めたそうで、本作をいつかは必ず訪れる巣立ちの時を描く「大人になった女性を描いた映画」だと分析。「子どもたちが成長して自分の元から去り、母親自身は再び自分が19歳か20歳のころに戻ったように自由な気分になれる、とても美しい瞬間を目の当たりにできるのがこの映画の醍醐味(だいごみ)でもあるのよ」と太鼓判を押す。この作品では、食べ物もストーリーの中で重要なポイントを占めるが、好きな日本食については「ワカメは故郷のスコットランドでもよく食べるから、日本食にはとても親しみがわくわね。あとはお漬け物なんかも大好きよ」とスコットランドの名家出身の割には庶民的な一面も見せてくれた。スコットランドの代表的なおふくろの味は「ハギス、ニプス、タティス」とのこと。ハギスは羊の内臓をその胃袋に詰めてゆでたもので、ニプスはカブのような野菜をゆでてつぶしたもの、そしてタティスはマッシュポテトのことだそうで、「スプーン1本で食べられること!」が条件だとか。

 1986年製作の『カラヴァッジオ』でデビューして以来、デレク・ジャーマン監督のミューズとして活躍し、1994年に彼が没した後も着実にキャリアを積んできたティルダは、2007年の『フィクサー』でアカデミー賞助演女優賞を獲得するまでに成長した。故・デレク・ジャーマン氏のことを振り返って郷愁に浸る趣味はないそうで、「いつだってデレクはわたしと共にあると思っているし、彼から教わったすべてが今のわたしの経験に役立っていて、本当に感謝しているわ。彼は今もわたしにとってとても大きな存在なの」と締めくくった。仕事もプライベートも充実した51歳の彼女が演じる孤高のヒロインが、新たな人生に向かって羽ばたくさまを、ぜひともスクリーンで体感してほしい。(取材・文:平野敦子)

映画『ミラノ、愛に生きる』は12月23日よりBunkamura ル・シネマほか全国順次公開


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