「インモータルズ 神々の戦い」(公式サイト


いや~、美しい全ての人々&神々vsミッキー・ロークでも、ミッキー・ロークの方に軍配があがるであろうという存在感でした。圧倒されましたわ。「アイアンマン2」のウィップラッシュもそうでしたが、今や彼のキャラは神をも地に引きずり下ろすだけのパワーを得た存在。心の底から湧き上がる人としての情念が全て怒りとなり、その結果として復讐にむかうわけですが、雑念とか欲望とかがないので純粋な分、美しささえ感じられてしまうのですよね(ミッキーそのものはむさ苦しいですが)。普通「悪」と言われるのは人間の欲望から出る行為なのですが、ミッキーの表現する怒りの念は大きすぎてそんな欲望なんか消し飛んで見えるのですわ。希有な役者になったものです。


彼は「レスラー」に出たおかげで、単なるカムバック以上のことを成し遂げましたね。それまでも「レジェンド・オブ・メキシコ」や「シン・シティ」、「ドミノ」等で腕っ節の強い用心棒的な役はやってましたが、殺しの際はさすがに銃やナイフといった凶器を使っていたんですが、今や素手で簡単に大の男を殺せるだけのキャラになりました。今のミッキー・ロークなら、誰もそこにウソっぽさを感じません。


それと同時に、「レスラー」のエンディングを見た観客の目には彼は一種死を超越した存在にうつるのですね(きっと「ブラックスワン」のナタリー・ポートマンもそうなります)。神話の悪役としてこれ以上の適役は他にいないだろうと、ミッキー・ロークのハイペリオンを見ていて思った次第。彼が悪逆非道の限りを尽くせば、それはそのまま伝説になるでしょう。もっともそれは英雄としてではなく、日本で言うと鬼のような、ぐずる子を脅して言うことを聞かせる時に「泣き止まないとハイペリオンがさらいに来るよ」的なものになるでしょうが、それでも伝説は伝説。いつまでも語り継がれるであろうことに変わりはありません。


今に伝わる伝説の元になった古代の人々の激しい情念がどれほどのものだったか、ハイペリオンを演じることでそれをミッキー・ロークは観客に伝えたのだと思います。それは演技を通り越した、彼自身の深い感情が元になっているもので、だからこそ観客は彼を見て感動を覚えるのでしょう。