はい、紛れもない傑作です。もう、それ以上言うことないかも。
いや~、ワクワクドキドキがずっと続く冒険映画をこのトシになって心から楽しめることができるなんて思いもよりませんでしたよ!
実写じゃない故に成立する世界観の魅力をここまで見せてくれるのはやはりスピルバーグの天才あってこそでしょうか。だって同じモーション・キャプチャーでもゼメキスのはキャラクターに魅力ないもん。まあゼメキスの作品はキャラがほとんど人間そっくりなのでそもそもアニメで見る意味あるのかという部分があるんですが(俳優の年齢を自由自在に変えて見せることができるという利点はあった。でも今の技術ならそれも実写で可能になったので)、「タンタン」は原作が漫画なので、キャラクターは皆ある程度は人間らしいのですが最終的には漫画的な顔に落ち着いているわけで、それがいいんですよね。だってタンタンの顔を見るだけでそれが一種のファンタジー作品であることがすんなり理解できますもの。そうなれば、あとは何でもござれです。
この作品に出てくるタンタンって、言ってみれば若くてお行儀のよいインディ・ジョーンズなんです。世界を股にかける冒険者。「ユニコーン号の秘密」では宝探しまでしちゃうし。でもどこまで行ってもタンタンは礼儀正しくて言葉遣いも丁寧なんですよ。今時珍しい(当たり前。タンタンの時代は第二次世界大戦前だから)好青年というか、少年像ですが、見ていて大変さわやかでした。
さて、背景となる時代のせいか、はたまた原作者のシュミのせいかは分かりませんが、「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」にはもう一つ重要な特徴があって、実はそれこそがタンタンとインディの大きな違いなんですが、色恋沙汰が一切出て参りません。というより女性キャラがほとんど出てこないんです。セリフがあったのはタンタンが下宿している家の大家さんとオペラ歌手のカスタフィオーレ夫人ぐらいかな? これって、恐らく実写で見たらえらく不自然でしょうね。これが実写映画だとしたら、絶対タンタンにからむガールフレンド候補の一人ぐらいは出てきてなきゃいけないはずです。現に「スーパー8」にはそういう少女が出てきます。年齢が年齢なのでさすがに「色恋沙汰」にまで発展はしなかったですが、「ほのかな心の交流」ぐらいはありましたね。
しかしですね、全編通してハラハラドキドキのジェットコースタームービーを作る時って、恐らく女がからむ色恋沙汰ってテンポを落とすばっかりで邪魔なのに違いないのですよ。自分が第二次性徴をむかえる前の時代を思い出せばお分かりになると思いますが、アクション主体の映画やドラマを見ていて、そこに女が出てきて主人公とダラダラ恋を語り始めるとかったるくなってイライラしませんでした? 大体そういう女は最後何故か人質になって主人公の足引っ張るし。あたしゃ思ってましたよ、恋だの愛だのって邪魔なばっかりだって。恐らくスピルバーグも思ってたんでしょうね。「激突」には恋も愛も無縁だし、「ジョーズ」なんて主人公達は恋愛時代はすでに過ぎ去っている設定でしたもの。スピーディーなアクションを追求したかったら、恋愛感情は抜きにした方がいいのです。
でも若い男の子を主人公にしたなら、彼が女の子に全然関心がないというのは実写だとやっぱりどうしても不自然に見えてしまうと思うのですよね。例え男の子同士でつるんでいたとしても、会話に女性の話題が出てこないのは……その年頃ではちょっと妙なわけで、リアリティーに欠けてしまうのは否めないと思います。
でもアニメならね。実写じゃないですから、画面からその不自然さを如実に感じるということはないわけですよ。特にスピルバーグの繰り出すアクションのテンポとスピードに酔いしれていれば、見ている間はその世界に女性が存在するかどうかだって気にならないかも。
それで思ったんですが、アニメで作れば画面上における性や人種の不均衡を気にしないでもいいんでしょうか? そういう意味で自由に作れるのも魅力の一つだったのかなと思ったりして。というのも黒人キャラもほとんどと言っていい程見かけなかったので。まあそういう時代だったんでしょうが、それをそのまま描けるのがアニメのいいところなのかもしれません。
そうやって、徹底的にシーンのムダを省いてできあがった「タンタン」は、アニメの顔をしてるのに感情表現はしっかり生身の人間ですから、危険なシーンではしっかり手に汗握るほど感情移入してのめりこんで見てしまうので、スリルに次ぐスリルが矢継ぎ早にやってくるので興奮からさめる暇がないぐらい。それでもタンタンはどこまでもお行儀がよくてさわやかなのですよ。タンタンのお声は浪川さんで、相棒のハドック船長のお声がチョーさんなので、これって「ロード・オブ・ザ・リング」のフロドとゴラムと同じコンビなのですよね。フロドとゴラムに比べればタンタンとハドック船長はずっと良好な関係を保ってますが、聞いてるとちょっとおかしかったりして……。
そういえば、敵役のサッカリンの手下達の顔がどことな~くシルベスター・スタローンとジェイソン・ステイサムに似ていたような気がするんだけど(声はもちろん違います)、ご愛敬でしょうか。
それにしてもタンタンって元々二次元の漫画のキャラだったのに、三次元で動いて全然遜色ありませんでした。しつこいようですが、アクションは「インディ・ジョーンズ」並です。陸海空、様々な乗り物が登場するのも楽しいです。子ども心に直撃という感じですね♪ そして「ET」同様、かつて子どもだった大人が見ても楽しい作品です。スノーウィーが活躍するので犬好きの人にもピッタリかも?
12月1日公開ですので、是非ご覧下さい。
もちろん3Dで♪