シネマトゥデイ より(以下一部抜粋)


>アラブ首長国連邦(U.A.E.)で開催中の第8回ドバイ国際映画祭「ムハ・アジアアフリカ長編部門」で現地時間11日、沖田修一監督『キツツキと雨』が上映された。しかし戒律の厳しいイスラム圏の映画祭とあって、劇中、主演の役所広司と小栗旬が全裸を披露していることが問題となりR15+(15歳以上鑑賞可)と厳しい規制が設けられていることが、日本人関係者を驚かせている。

映画『キツツキと雨』場面写真

 同国の一般劇場で公開される映画には各国同様にレイティングシステムが設けられているが、同映画祭のアジアアフリカ部門のプログラマー、ナシェン・ムードリーによると、出品作は映画祭オリジナルの規定に基づきすべての作品にレイティングが明記されている。重要視するのは暴力、性描写、汚い言葉、ヌードと、他国とは変わりないが、イスラム圏の場合、女性がニカーブやヒジャブといった全身を多い隠す民族衣装を着用しているように、近親者以外に肌をさらすのは御法度。そのため映画でもヌードはもちろん、水着姿も規制の対象となる。

 『キツツキと雨』は映画のロケ地で偶然出会った若手映画監督(小栗)と木こり(役所)という意外な組み合わせが、撮影を通して心通わせるハートウォーミングストーリーで、日本公開は何ら問題はない。しかし今回は、二人が温泉に浸かって胸の内をさらすほのぼのとした場面がまさかの規制対象となった。映画祭のカタログやチケットなどすべてに「15+ 男性ヌード有」の但し書き付き。15+は日本で言えばR15+となるが、いまおかしんじ監督『おんなの河童』のようなピンク映画と同等レベルとなる。

 その他の出品作だと、アミール・ナデリ監督『CUT』が「かなり激しい暴力と言葉の問題が有」でR18+(18歳以上鑑賞可)。ガンで余命宣告された父親を追った砂田麻美監督のドキュメンタリー『エンディングノート』は「成人向けのテーマや問題が含まれている」ということでR12+(12歳以上鑑賞可)。また、劇画作家・辰巳ヨシヒロの半生をシンガポールのエリック・クー監督が手掛けた『TATSUMI』は「かなり強い、バイオレンス・言葉・性描写・成人向けのテーマと問題が含まれている」と規制重要ポイントの4つすべてが入っておりR18+(18歳以上鑑賞可)となった。

 ムードリーは「特に『TATSUMI』の場合、U.A.E.ではいまだアニメは子どもが観るものという認識があるので、子どもが誤解しなようにという警告も込めてレイティングを厳しく設けました」と説明する。続けて「我々のレーティング表記はあくまで観客のために、鑑賞ガイドの一つとして役立てて欲しいと提示しているだけです。それを理解した上で、両親同伴で来ていただければ年齢が達していなくても鑑賞は可能です。またレイティングが問題になるからという理由で作品を選ぶような事はしていません。作品の質を最重要視して選んでいます」という。

 そのムードリーの言葉を裏付けるように、『キツツキと雨』は映画冒頭から場内が爆笑に包まれるほど好評だった。残念ながら仕事の都合で沖田監督をはじめ、役所も小栗も現地入り出来なかったが、宗教や文化は違えど、笑いのツボは世界共通であることを実証していた。


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