ぴあ映画生活 より(以下一部抜粋)


>2期にわたるTVシリーズを経て、満を持してスクリーンに登場した映画『けいおん!』。現在大ヒットを記録している本作を手がけたのは、京都アニメーションの山田尚子監督。このシリーズで初監督を務めた、新進気鋭の女性演出家だ。彼女が本作について語ってくれた。

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『けいおん!』は軽音楽部に入部した女子高生たちのゆるやかな日常を描く作品。山田監督は、登場人物たちをひたすら見つめ、声に耳を澄ますことで、本作を作っていったという。「唯たちがストーリーを語るための道具になってはいないか。自分たちの意識で動くことができているか。常に練り込む作業をしていました」

今回は卒業を控えた主人公たちの卒業旅行が描かれる。卒業前の彼女たちの姿を描こうと考えたのは、山田監督たちのこだわり。女子高生として一番輝いている季節を、映画として描こうとしていたのだ。卒業旅行の目的地は音楽の聖地ロンドン。山田監督らメインスタッフはロンドンへロケハンに向かった。「いわゆる観光名所は意識せずに、道に落ちている葉っぱの形がかわいいとか、外国の家の窓はかわいいとか、そういう部分を見るようにしましたね。個人的に驚いたのは、外国の人の背はおっきいこと。身長差はうまく映像化できたと思います」

キャスト陣が勢ぞろいするアフレコのときは、山田監督がロンドンで買ってきたお土産の紅茶でリラックス。TVシリーズの収録と変わらない雰囲気で収録を行ったという。「映画では映像的に盛り上げたり、感傷的な演出もあるんですが、登場人物の唯たちにとってはそれは関係ないことで、あくまで映像の作り手側が勝手にやっていることなんです。キャストさんたちには"過剰に美化しないで、どんな素敵なシーンであっても普通にしゃべってください"とお願いして、アフレコを行いました」

キャラクターたちはTVシリーズと変わらず自然体でありながら、映像面では映画らしくスペシャルに。ひと手間をかけた作り込みがなされている。「より生っぽい映像を目指して、映像を手持ちカメラ風にしたり、広角レンズ風にしたり、TVシリーズのときからもうひと手間、もう一歩踏み込んだ映像作りをしているんです」

TVからスクリーンへ。『けいおん!』のブームは止まらない。はたして、なぜこの作品はヒットしたのか。山田監督なりの分析を最後に伺った。

「時代の最先端では決してない、ちょっと懐かしい、昭和のような温かみがあるところが魅力なんだと思います。音楽もストーリーも、どこか懐かしい。私自身、80~90年ぐらいの音楽が好きなんですよ。あのころの多幸感が、きっと女子高生を魅力に輝かせているんだと思います」

映画『けいおん!』
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