衝撃!老々介護の現実…上映時間44分の傑作、無名監督のため配給つかず、今日イベント上映!

シネマトゥデイ 寄り(以下一部抜粋)


>力作ながら、なかなか日の目を見ない作品にスポットを当てるイベント「オールモスト・フェイマス-未配給映画探訪」が12月19日、東京・渋谷のアップリンクで行われる。クローズアップするのは、『あんたの家』が第32回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)でグランプリを受賞し、自衛隊出身という異色の経歴を持つ山川公平監督。イベントを企画したライターの鈴木沓子は、昨年のPFFで同作品と出会い衝撃を受けたものの、無名監督の上映時間44分の中編になかなか配給が付かない現実に自ら立ち上がった。鈴木は「観客の私たちが“この映画を見たい“と声をあげないと、スクリーンで見られる自由はないのだと痛感。このイベントで、何とか配給や他館上映につなげたい」と意気込んでいる。

 同イベントはカルチャー情報サイトwebD!CEの同名連載との連動企画で、上映イベントは2回目。第1回は同じく、本年度のPFFで審査員特別賞を受賞し、監督の実体験をもとに性同ー性障害に悩む高校生を主人公にした『僕らの未来』の飯塚花笑監督をピックアップした。山川監督の『あんたの家』もまた、大阪の下町に住む老夫婦が主人公で、寝たきりの夫を妻が支えている老々介護という難しいテーマに斬りこんでいる。山川監督がかつて住んだアパートの隣人をモデルにしており、夫は大腸がんを患っていることから人工肛門(ストーマ-)を付けている設定も生々しく再現している。

 鈴木は「『あんたの家』を観たとき、社会問題をテーマにしていながらこんな方法論があるのかと新鮮で、衝撃を受けました。老々介護という、近い将来に誰もが直面する問題なので、映画関係者だけでなく幅広い人に見て欲しいと思った。何より「作り手のコレを作品にしたい!」という強い意思で制作された自主映画には、その思いがストレートに伝わる純度の高さがあり、商業映画にはない面白さがある。私自身、それまでインディーズ映画と言えばアート系で、わかってくれる人だけに観てもらえればいい……という難しい作品いう印象を持っていましたが、飯塚監督や山川監督たちの作品に触れて、そのイメージを完全に覆されましたから」と力説する。

 イベントではほかに、迷子になった外国人兄妹とホームレスの交流を描く短編『路上』と、幕末の京都を舞台に、徳川幕府の侍2人が図らずも阪本龍馬暗殺に関わってしまう時代劇『田村どの佐久間どの』も上映される。また上映後には、山川監督が小説「ガラスの巨塔」のファンだという元NHKプロデューサーで、人気番組「プロジェクトX挑戦者たち」を手がけていた今井彰を迎えてのトークショーも行われる。

 山川監督は「今は介護の仕事をしつつそこから新たな引き出しを見つけて新作の企画を考えていますが、『あんたの家』が僕の創作活動の起点になったと思います。本来、自作の公開は自分から率先してやっていくべきであるのに、こういう機会を頂いて有難いと感謝しています」と語っている。

 同イベントは今後、月に1回のペースで開催し、ここから劇場配給を目指していくのはもちろん、若手作家が新たな企画を発信していく場としていきたいとという。

「オールモスト・フェイマス-未配給映画探訪」連動企画 山川公平特集は12月19日、東京・渋谷アップリンクで19時開演 東京・渋谷アップリンクで19時開演。電話:03-6825-5502