シネマトゥデイ より(以下一部抜粋)


>新年を迎え、2011年の日本映画興行収入(以下、興収)を振り返ってみた。1年を通じて洋画が好調な年で、ここ数年の例にもれずシリーズものに人気が集中していた。

映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』未公開映像集

 年間を通じての国内興行収入ナンバーワンの座についたのは『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』の約96億2,000万円(11月27日までの日本映画製作者連盟の集計より。以下同様)。10年間続いた人気シリーズの最終章ということや3Dでの公開ということも手伝った。さらに2位は『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉』の約88億4,000万円と、洋画が1位、2位を獲得した。邦画は、ジブリ宮崎吾朗監督の『コクリコ坂から』が約44億2,000万円で3位に入ったが、1位、2位の洋画の興収に比べると約半分の興収という寂しい結果となった。

 『ハリー・ポッター』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』はもともとシリーズを通して公開すれば1作品について100億円前後は狙える力を持った作品だけに当然の結果ではあるのだが、2011年はそのほかでも洋画の興収が例年に比べると好調だった。4位に『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』約42億4,000万が入り、5位以下からは邦画の『GANTZ』約34億5,000万円、6位『SP 革命篇』約33億3,000万円、7位『ステキな金縛り』約32億4,000万円、8位『名探偵コナン 沈黙の15分(クォーター)約31億3,000万円が続のだが、9位に『カーズ2』約30億円が入っている。

 10位『GANTZ: PERFECT ANSWER』約28億円も入れるとベストテンのうち6作品は邦画だが、金額の大きさや1位2位の独占を考慮すると、2011年は洋画に軍配が上がったと言ってもいい。ただし課題として残るのは洋画だけのランキングだけ見ても(1位『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』、2位『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉』、3位『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』、4位『カーズ2』、5位『ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島』)すべてがシリーズものの続きで、シリーズものは回を追うごとに興収が下がっていくのが普通のため新たなテーマへの取り組みが求められる。

 邦画のベスト10もマンガの原作ものとテレビシリーズものが多く見られ、2011年は全体的に洋画に差をつけられたことを考えると、守りの姿勢から攻めの姿勢に転じることが今後の課題といえる。また、邦画ベスト10すべてが東宝配給の作品ということを考えると、興行収入を得る→製作費が多くとれる→質の高い映画を作れる+宣伝費を多くかけられる、という大ヒットスパイラルをほかの配給会社が眺めるだけという現状を斬新な策を練って打破することが邦画全体の質の向上につながるといえよう。