『ノルウェイの森』がいよいよ今週アメリカ公開!トラン・アン・ユン監督が語る原作の映画化ができた理由とは?

シネマトゥデイ より(以下一部抜粋)


>映画『青いパパイヤの香り』や『シクロ』などで世界的な評価を受けたトラン・アン・ユン監督が、これからアメリカで公開する新作『ノルウェイの森』について語った。

 同作は、親友キズキ(高良健吾)を自殺で失ったワタナベ(松山ケンイチ)は、東京で大学生活を送っていたが、ある日キズキの恋人だった直子(菊地凛子)と偶然に再会する。ワタナベは再び直子と過去を共有しようとするが、直子の喪失感だけが深まっていき、京都の療養施設に入所することになる。ワタナベは直子に会いたくても会えない中で、同じ大学の女学生、緑(水原希子)に徐々に惹かれていく。

 多くの日本人が村上春樹の原作を読んでいるため、映画化するうえでプレッシャーはなかったのだろうか。トラン監督は「原作を読んだのが1994年で、新鮮に感じたことは覚えているが、そのときは映画化したいと考えてはいなかったんだ。それに、彼の作品はこの原作しか読んでいなかったために、日本でかなり支持されている作品であることさえもそのときは全く知らなかった……」と明かしたが、この映画を製作することになって、日本のプロデューサーと会ってみて「そのとき、ようやくこの作品が多くの日本人に影響を与えたことを知ったんだ。ただ、(制作が決まってからも)良い映画を作ることへのプレッシャーは感じていたが、原作が日本での評価が高いことへの懸念はなかったんだよ」と語り、出来る限り原作の内容に忠実に製作したことも教えてくれた。

 おそらく多くの日本人監督やプロデューサーが、村上春樹に原作を映画化したいとアプローチしているはずだが、彼はなぜあなたを選択したのか話してくれたのか、との質問には「あくまで想像だが、ちょうどいいタイミングで僕らが映画化の依頼をしたのかもしれない。おそらくこの時期になって、ようやく彼も原作と距離を置くことができると感じたのかもしれないね。なぜなら、それまでは彼にとってこの原作は、すごく個人的なものであったと思うんだ。もちろん、これは僕の推測で、その理由については彼とは語ったりしなかったんだ」と答えた。実際に日本人監督ではなかったからこそ、描けた映画なのかもしれないと思わせる演出だった。

 直子役の菊地凛子の演出について「彼女が演じた直子は、心の中に闇を持ちながら苦悩していて、かなり泣くシーンや感情的になるシーンが多い。もちろん、そんな彼女の演技を評価して、彼女にハグをしたりすることもできたが、そうすることで凛子に安堵感を与えたら、すべてが台無しになってしまうと思ったんだ。そのため、凛子には最後まで直子の感情のままでいてもらって、凛子とはセット以外で会ったり、一緒に食事したりもせずに、わざと距離を置いて撮影していたんだ」と演出のために意図的な手段を取ったことを明かした。

 最後にトラン監督は、村上春樹の原作を読んだときに、まさに女性の頭の中を見せられた気がしたと語り、キャラクターの存在を人々に認めさせる点にも素晴らしさを感じたことを教えてくれた。『ノルウェイの森』は、1月6日よりアメリカで公開される。