産経新聞 より(以下一部抜粋)

> NHK大河ドラマの51作目となる「平清盛」が、8日にスタートする(日曜後8・0、総合)。「源氏物語」などで優雅なイメージがある平安時代だが、その末期は貴族社会が揺らぎ、武家の世への転換点となった混沌の時代。制作スタッフは「時代を変えた先駆者としての清盛を描く」と語る。(草下健夫)

 ◆源平の攻防に重点

 大河で清盛が主役となるのは、仲代(なかだい)達矢(79)が演じた昭和47年の「新・平家物語」以来、実に40年ぶり。「新-」が平家の栄華と滅亡を描いたのに対し、今回は貴族社会から武士の台頭への過程や、源平の攻防に、より重点が置かれる。

 制作統括の磯智明チーフ・プロデューサーは「この時代はダイナミックな展開を遂げたが、幕末や戦国時代に比べると(手掛かりに乏しく)映像表現が少ない。今回、難しいことにチャレンジしてしまったとも思うが、一人の人間像で時代をひもとくことで、私たちが生きる今の時代を俯瞰(ふかん)する手がかりにしたい」と語る。

 今回、NHKが掲げたコンセプトは「たくましい平安」。演出を手がける柴田岳志エグゼクティブ・ディレクターは「平安にはきらびやかなイメージがあるが、300年を経た平安京は決してきれいな都ではなく、内裏はボロボロで帝(みかど)が住めなかった。貴族も庶民も地域を分けずに交ざって暮らしていたといわれる」と説明する。そうした点から、人々が“がむしゃらに生きた”とのイメージを膨らませたという。

 ◆扮装に最大の手間

 リアルさを出すため、例えば、岩手県奥州市内に荒廃した都のセットを設置してロケを敢行。また「人物の扮装(ふんそう)には、今までで最大の時間と手間暇をかけた」と柴田氏。髪の生え際は、かつらではなく役者本人のものにしたり、衣装は着慣れたようにみせるため、ストーンウオッシュ(特殊な石を一緒に入れて洗濯する)によって着込んだ風合いを出したりと、「工夫は挙げるときりがない」(柴田氏)という。

 磯氏は「烏帽子(えぼし)ひとつとっても、皆一様に被っていたのか。決まり事の多かった貴族社会にも個性を描きたい」と話す。考証については「儀式や儀礼のやり方などは史料が残っているものの、どう映像化できるのか。複数の専門家の意見を仰ぎながら進めている」と説明する。

 脚本は、連続テレビ小説「ちりとてちん」(平成19~20年)などを手がけた藤本有紀さん。藤本さんについて磯氏は「非常に勉強熱心で、いろいろな視点でドラマを描く群像劇にしたいとのこだわりがある。1回60ページほどでよい脚本を80ページも書き、20ページ減らさねばならず、そこで落としたエピソードを集めれば大河ドラマがもう1本できるほど」と語り、脚本の充実ぶりをアピールする。