「マイウェイ 12000キロの真実」公式サイト

も~~~~~~、信じられない程おもしろかったです! 映画ってこんなにおもしろいのか、と改めて思い知らされたというか……今までいろいろ見てきた日本映画ともハリウッド大作ともインディーズ作品とも香港映画ともヨーロッパ映画ともどこか違うんだけど、とにかく、とことん、どこまでも、どうしようもない程おもしろいんです。監督、韓国の方ですが「韓国映画」によくある暗くて陰惨で救いようのないタイプの作品とも一線を画してるんですよね。いえ、描かれているのはほとんどが戦争中の暗くて陰惨で救いようのないできごとなんですが、それなのにどこかカラッとした、突き抜けた明るさがあるんです。陰湿なシゴキのシーンも凄惨な戦闘シーンもどれもリアルで震え上がってしまうような描写なのに、物語全体のトーンは決して暗く沈まないんですよね。

それはたぶん、主人公の視線が決して下を向いたきりにならないから。
何があっても、どんな不幸が降りかかっても、常に常に上を見て、自分と仲間が生きる道を模索しているから。

この映画見ながら思ってましたよ、「グッド・ドクター」の監督連れてきて正座させて見せながら「おもしろい映画とはこういうもんだ、魅力的な主人公とはこういうもんだ」とお説教してやりたいって。こんな悲惨としか言えない題材を扱ってるのに、そのおもしろさに圧倒されるような作品が作れるのは、監督の人間に対する理解が深いのと、それとやっぱり愛があるからなんでしょうね。

この作品、公式サイトはおろか公開前にマスコミにどっと流れる宣伝の記事などにもほとんど目を通さないようにしていたのですが、その甲斐あって次にどんな展開になるのか全く先が読めず、おかげで意外性が損なわれることなく監督の思惑通り一喜一憂しては興奮のしっぱなしでした。チラシやポスターに書かれていた分ぐらいの情報は知っていたのですが、映画が始まった瞬間からそんなのどっかへ行っちゃって、映像の美しさと物語の激しさにただただ心を奪われておりましたよ。細部までよく練られた見事な脚本で、伏線も上手に張られていて忘れた頃にさりげなく「あ、あの時の、あれ……」と出てくるのが心憎かったです。いや、もう、泣かされました。

日本映画と違ってセリフでいちいち説明しないし、ハリウッド映画ほど変なルール(「帰ってきたら~しよう」と約束した人物は行った先で死ぬ、みたいな)に縛られてもいないので、映画のもつダイナミズムに乗って、というか押し流されて、あれよあれよという間に2時間半がたってしまいます。そんな中でも登場人物達の性格や感情はきちんと伝わってくるし、そこでおきる変化はごく自然で無理がないんですよね。映画を見ていてちょっとでも感情の流れに不自然な部分があると結構気になってそこに引っかかったままになったりするものなんですが、そういうのは一切ない。登場人物達の境遇が変わっていると、それに伴って表情も変化しているのですぐに納得できるんですよ、そこに至るまでにどういう心の軌跡があったのか。監督の演出もすごいですが、それができちゃう役者さん達もすごいです。オダギリジョーが本気で取り組むとここまでいけるのか、と思いましたね。彼の演技力の全てを引き出した監督もまたすごいんですが。もちろんチャン・ドンゴンも。

この映画見ていて思い出したのは「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」の冒頭で、ウルヴァリンとセイバートゥースの兄弟が歴史上有名な激戦に幾つも参加している場面ね。「ウルヴァリン」では一種のハイライトシーンのように描かれていたそれを、時間をかけて綿密に描写したらこうなる、みたいなのが「マイウェイ」でした。

それから「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの戦闘シーンを第二次世界大戦当時のリアルな武器でやったらこうなるんだなあ、とも思ってました。移動の距離の長さでいったら「マイウェイ」の方が上なんだろうけど(上映時間は「ロード」の方が長いです)。

要するに、延々と苦役と戦闘シーンばかりが続くような映画ではあるのですが、でも見終わって暗い気持ちにはならないのです。何がすごいって、これが一番すごいわ。おかげで「グッド・ドクター」を見て以来もやもやしていた気持ちが晴れました。映画の悩みは映画で解決ですね♪ 今なにかイライラしている方は「マイウェイ 12000キロの真実」見に行ったらいいですよ。気が晴れること間違いなし(あれだけ戦闘シーンを見せられたら、裡に秘めたる破壊衝動もいいだけ満足するってば)。カタルシスを得にレッツゴーです。