本日から公開の「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」、私はトーキョー女子映画部(こちら) の試写会で見たんですが、いや、こんなに何回も劇場中が笑いにわいた映画を見たのは久しぶりでした。最近の観客はお行儀がよいので、笑えるシーンでも我慢して笑わない方がほとんどなのですが、この作品に限ってはそれが不可能だったみたいですね~。シーンが切り替わった瞬間、爆笑! というのが何度もありました。


ロバート・ダウニーJr. 自分がハンサムな事をすっかり捨て去ってのコメディアンぶりが完璧に板についておりましたよ。

「アイアンマン」のトニー・スタークだとまだまだ気取りが捨て切れてないんですが、シャーロック・ホームズに至ると時代も違うし国も違うし2作目だし、自分ももういいトシだしと好き勝手やってる感じ。劇中何度か変装を披露してくれるのですが、「どうしてそれでバレないの?!」とツッコミ入れたくなるような姿もあったりして……とにかく笑わせてくれます。


対するワトソンのジュード・ロウの方も同じくなりきりぶりがスゴくって、この方は「男前だからこそできる観客のわかせ方」を心得てるなあと思いました。ジュード・ロウって本人は輝くような美男なんですが、ワトソンを演じる時はその「輝く」部分は全部抑えてるんですよね。そのぐらい抑えてちょっとばかり野性的というか野獣味を加えると、男性受けのよい、素直に誰からもかっこいいと認めて貰える男前になります。そういうワトソンを本当に心から楽しそうに演じていて、これはジュードにとってもハマリ役なんだなあと思いました。


この、世紀の美男二人が二人とも美形度を落としたことにより、逆に人間臭さが魅力的なキャラクターとして生き生き見えるようにしたのが監督であるガイ・リッチーの手腕なんですかね~。この監督って、男性キャラを女の目から見ても男の目から見ても魅力的に見せる天才ですね。


ガイ・リッチーがマドンナのご亭主だったことは周知の事実ですが、この方の作品を見ると常に男性に対する賛美と愛に満ちあふれているんですよね。それは男同士の熱い友情やかたい仲間意識として語ることも出来ますが、なんかどことな~くその範疇を軽々と乗り越えたその先に到達点があるような気もするんですが、まあ、それはこの際おいといて。深く広い意味でも人類愛とでもしておきましょう。


その深くて広くて熱い人類愛が「シャーロック・ホームズ」でも炸裂しておりまして。


一作目でもそうだったんですが、それがヒットしたもんですから「シャドウゲーム」なんかそれに輪をかけちゃいまして。


もはや誰はばかることなくホームズもワトソンも地球のあちこちで互いへの愛を叫んでましたわ。いや、お熱いことで。


彼らの場合、性的嗜好は女にあっても精神的拠り所は男にあるって感じでしょうかね。


そういう男性は実は意外と多いのでして、日本だと三池監督なんかがその旗手ですよね。その内東の三池、西のガイ・リッチーで語られる日も来るかも。それはどうでもいいんだけど。


俳優達はその男同士の気安さに満ちた自由な空間においてのびのびと演技ができるのでしょうか。とにかく、そういう雰囲気が「シャドウゲーム」からは漂ってきていて、それが映画を楽しいものにしているのです。マイクロフト・ホームズもモリアーティー教授も出てきてホームズものとしても役者は揃っていますしね。いや、楽しい楽しい。


マイクロフトといえば演じているのはスティーブン・フライで、これがまた傑作でございましたよ。うん、この兄にしてあの弟ありだわ。


ストーリーは前作を踏襲しつつその上をいくという、続編の正統的スタイル。前の作品を完全になぞるのとは違っていて、新機軸を打ち出すのが成功の秘訣ですが、バッチリ決まっていたと思います。


ノオミ・ラパス、ヒロインですがオリジナルドラゴン・タトゥーの女のリスベットですから、美女の役でも男前なんですよ~。ロバートやジュードに混じってひけをとらない存在感、さすがでした。


この作品、時代が1891年と定められております。それだけで分かる人には分かるのですが、その話とは別に、この時代に四輪の自動車が出て参ります。それと同じ様な自動車と同じ様な女性達の服装の映画を見た覚えがありまして、それはサイモン・ウェルズ監督の「タイムマシン」なのですね。「タイムマシン」の原作者はH・G・ウェルズでイギリスのSFの父ですが、確かにシャーロック・ホームズの原作者であるコナン・ドイルと同時期に活躍した作家なのですよ。それとはまた別に現在公開中の「ヒューゴの不思議な発明」にはフランスのSFの父であるジュール・ヴェルヌが出てきてまして、なんとなく現代のエンターテインメントの祖先がこの時期一堂に会したような気がして一人で喜んでました。


ま、とにかく「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」、おもしろいし楽しいしハラハラドキドキで笑えます。ホワイトデーのデートムービーに、春休みにご家族で、無論おひとりでも是非どうぞ! 音楽は今回アカデミーにノミネートされていなかったことで感謝されてたハンス・ジマー。「ランゴ」もいいけどこちらも最高。「ダークナイト」以来の低音もきいててジマーファンなら感涙ですよ!