『ミッシング ID』公式サイト


本日から公開の『ミッシング ID』ですが、実は私はBlingで当選した試写会で一足お先に見て来てしまいました。ほぼ満席の場内はテイラー君のファンとおぼしき女性が絶対的に数で勝っておりましたが、男性も結構いたので「ボーン・アイデンティティーのDNAを受け継ぐ」等の宣伝文句が効いてるみたいですね。なにしろ「ボーン」シリーズといえばリアルなアクションのキレの良さで有名ですからね。


で、どっちかというと『ミッシング ID』を見て気に入るのは、「ボーン」系のアクション好きの男性客の方なんじゃないかな~、と思ったりして。


あ、物語の方は「ボーン」とは全然違います。どっちかというと他の有名なアクション作品の方によく似てました。これはタイトルを書くと、ほぼ『ミッシング ID』のネタバレになっちゃうんでここでは秘しておきますが、オスカーウィナーやノミニーがガンガン出てる映画で、公開は2008年。「イーグルアイ」じゃないですよ。


さて、女性客がどう思うかというと、アクション好きならいざしらず、「トワイライト」のジェイコブが好きという方なら、本作はいささか物足りないのではないかと。


というのもですね、『ミッシング ID』、テイラー・ロートナーのかっこよさはとことん追求してるんです。この映画の中のテイラー君はもう何をやってもかっこよくて申し分ないんですが、残念ながらあまり可愛くはないのですよ。ってゆーか、可愛さは追求されてない。なにしろスタッフが「ボーン」だから、そんな事は考えつきもしなかったんじゃないかと思う。


でもさ、「トワイライト」のジェイコブって、ベラに弟みたいに扱われて、それでも喜んでついてくような、ちょっと子犬みたいなところが可愛いくて、それで女性ファンのハートをとらえてるわけじゃないですか(少なくとも私はそうです)。かたやに絶対不動の超絶美形でベラが一身に愛を捧げるロブ様エドワード&その一族がいて、「トワイライト」の美とかっこよさはそっちが一手に引き受けているからこそ、テイラー/ジェイコブのいたいけで素直で純真な感じがいっそうひきたつわけで、そこで培われた愛しさというのはその後ジェイコブが何に変身し同成長しようとも失われずについてまわるものだったのよ。彼にはその「弟みたいに可愛い」キャラがとても似合っていたし。


ところが『ミッシング ID』だとテイラー君はピンで映画を背負って立たなきゃいけないわけで、そうするとヒーローとして可愛さを振り捨ててもかっこよさを追求しなければならないのね。それはそれできちんと成立してたんだけど、でもファンの女の子やもうちょっと年齢層の高い女性達が見に行って、それで納得するかというとそうではないわけで。映画って難しいです。


それでまた、アクションは完成度は高いと思うのですが、お話の方がテイラー君を主役にするためにいささかムリした面があるみたいで、そのムリが最後までたたってる感じですかね。もひとつ、リアリティーに欠けるのですわ。アクションはすごいリアルなのに、裏付けとなる物語が薄いため、なんでそこまでするのか分からない、というのが正直なところ。「そこまでする」の主役のネイサン(テイラー)の周囲にいる大人達ですが。


この「そこまでする大人達」、これがすごくって!

まずはネイサンのパパ、ジェイソン・アイザックスって、「ハリー・ポッター」のドラコのパパ、ルシウス・マルフォイですからね! ルシウスってプラチナブロンドの髪を長く垂らして一見優男風に見えますし「ハリー」では魔法の戦いがメインなので肉体派には見えないでしょうが、実は「ブラック・ホーク・ダウン」等ではバリバリの軍人役で出ているぐらいで結構な武闘派なのです。肉弾戦もこなすし、髪を短くしただけでマジ強そうに見えますよ。


このパパがですね、もう絶妙に上手い。ママ役のマリア・ベロもそうですが、この二人の「両親」の感じがリアルなんですよね~。


私の友達に血のつながってないお母さんに大事に育てて貰ってた子がいたのですが、そのお母さんの反応ってやっぱり血のつながっている子を育てている人とは違うんですよ。その子を愛しているんですが、決して盲目的な愛ではないんです。甘やかさず立派に育て上げようという意識の方が先に立つんですよね。子どもを信頼してないわけではないけれど、周囲から守ることに必要以上に神経質になってる感じで、私なんかはどうやら「悪い友達」の部類にカウントされてたようです。


そういう微妙な愛し方の差がすっごくよく出てるんですよ。大切に思うあまりに子どもの「今」を可愛がるより「将来」への備えをまず万全にしておこうという気持ち。それも愛なんですが、それがわかるためには子どもが大人にならなければならないというのがつらいところで。ジェイソン・アイザックスもマリア・ベロもホント名演だったと思います。


ちなみにマリア・ベロは「ハムナプトラ3」のイヴリンで戦うママは経験済み。この方はいつも最高に気の強い女性役がはまっておりますね♪


ネイサンのカウンセラー役がシガニー・ウィーバーで、言わずと知れた「エイリアン」のリプリー。恐らくSF映画史上、最も強い女性役(人間役といってもいいかも)。「宇宙人ポール」でもそうでしたが、出てきた瞬間、その場をさらいます。なんつったってその圧倒的な存在感! なんかわかんないけど彼女が関わってるなら宇宙規模の陰謀が仕組まれてたって不思議はないと、観客がそこで納得してしまうというのが最大の強み。 



シガニーとは別にネイサンのサポートにまわるのがアルフレッド・モリーナ。最近は「魔法使いの弟子」とか「プリンス・オブ・ペルシア」等でいい味出してましたが、「スパイダーマン2」では主役のむこうをはる堂々の悪役もできる方。右往左往というか、スクリーンの中をあっちにこっちに大きな体でチョコマカかけずりまわるのが意外と似合って可愛いのですね♪ 今回もネイサンにさんざんふりまわされておりました。


そして極めつけの悪役にミカエル・ニクヴィスト。「ミレニアム」のミッケ。ミッケの時はとても優しい顔で虫一匹殺せなさそうに見えたのに、「ミッション・インポッシブル ゴーストプロトコル」では狂信的なテロリストそのものでびっくりしたものですが、「ミッシングID」ではさらにその上をいく悪役ぶりで観客を震え上がらせてくれました。もーすごいんだから! このまま「007」シリーズに出ても歴代悪役にひけをとらないべ、というより新たなる悪役のアイコンとして名を残すのではないかというぐらい、悪の権化になりきってました。もう理由はいらない、ただそう生まれついただけ、みたいな圧倒的な悪のカリスマぶりに見ていてくらくらしましたよ。その彼が追っかけてるのがなんか自分でも自分のことがよくわかっていないネイサンなわけですから、ちょっとアンバランスではあるんですが、でもミカエルのその真剣な悪ぶり見られただけでも満足かも。いや、スゴかったです。


それからダーモット・マローニーがちょこっとだけカメオ出演してます。顔はあまり出ないんですが、いいとこもってっちゃう美味しい役なので、彼のファンの方はご期待下さい♪


これらのいい役者さん達がよってたかってもり立ててくれてるんだから、テイラー君も果報者ですよね。彼と行動を共にするリリー・コリンズも文句なしに可愛いのですよ♪ だから見ていて退屈するということは一切ありません。彼らの不器用な恋愛模様もそれなりにロマンチックです。


あとはホント、もうちょっとだけネイサンにジェイコブ的可愛さと笑顔があったらよかったのですが……ホント、映画って難しいものです。