さて、以前「ムカデ人間」の恐怖はその奥に潜む「幼児性」にあると書いたものですが、これが「2」になるとモロ、幼児性の爆発でした。もう、そのまんま。主人公であるマーティン自信の外見が幼児を彷彿とさせるものなのですよね。あの太鼓腹ですら幼児体型のパロディなのですわ。
実際「ムカデ人間2」で主役をはってるローレンス・R・ハーヴィー、きちんとしてれば可愛くさえ見える顔立ちなのですよ。まあ私が映画見ながら思い出してたのは藤子不二雄A先生の「魔太郎がくる!!」の魔太郎でしたけど。丸顔で飛び出しそうな目の三白眼。髪は魔太郎の方があるけどね。似てるよ。
で、「ムカデ人間2」のマーティンはやってることもあんまり魔太郎と変わりないのでした。日本語が喋れたら「こ・の・う・ら・み・は・ら・さ・で・お・く・べ・き・か」と呟いてるに違いないシチュエーションばっかりで、魔力が使えないかわりに自力でムカデ人間作っちゃうのでした。
あ、「ムカデ人間2」にはストーリーの進行途中に二、三腑に落ちない部分が出てくるのですが、一応ラストでそれは綺麗に払拭されます。払拭されたと思わせておいて一抹の謎が残るという、よくできた作りになっております、ハイ。
「ムカデ人間2」の恐怖は「幼児性」にあるわけですが、幼児の何が恐いって歯止めがきかないことですよ。だってやっていい事と悪い事の区別がないんだもん。思いつきでやりたいことをやりたいだけやって、飽きたらポイ。おもちゃや虫が相手ならいいけど、人間相手にそれやられたら……つるかめつるかめ
「ムカデ人間」ではいい大人のハイター博士がやってたから恐かったんですけどね、でも昔からマッド・ドクター&マッド・サイエンティストを主人公に物語が描かれるのは、彼らの研究に対する飽くなき情念が見境なくなった時の事なんですよね。彼らの心の奥に潜む幼児性が全開になった時が恐いんです。
だって人つなげてムカデにするくらいならまだ可愛いけど、人類や、或いは地球を破滅させるパワーをもった人が暴走したら、いきなり危機的状況じゃないですか。そういうパワーを持ってる人は自重すべきなんです。或いは子どもの頃に映画見たりSF読んだりしてそういう事しないように学習すべきなんだわ。
残念ながら今の世の中映画やSFはエンターテインメントとして受け取られているのでその内容を真剣に受け止める人はあんまりいないんだけど、でも随分前から人間にとって何が危険かをずっと訴え続けているんだぜ? 何故人間は物語が伝えてきた事を「文学」にくくって現実世界と切り離して考えるの?
とはいえ、ひとつの(ふたつのかな?)本に生活のすべてを委ねてた時代がヨーロッパでは暗黒時代だったわけだから、現代はその反動がきてるってことなのでしょう。現代の日本見てると石のパワーなんぞを霊験あらたかに語ってたりして、いつまで戻ったんだという気がしないでもないけど。
はい、「ムカデ人間2」に戻ります。この作品での幼児性の発露は主に怒りでして、怒りの対象は自分の欲求にダメ出しをする相手も含まれます。幼児のしつけというのはトイレットトレーニングから始まりますので、つまり排便に対する自由度を阻害される事に対しても怒りを覚えてたんですね、マーティンは。
「ムカデ人間2」のマーティンの場合、精神的な成長が子どもの時に止まってしまっているという設定なので、その排便に対するコンプレックスが生々しいままなのですよ。それゆえ「ムカデ人間」の消化管の先端と末端(曖昧表現。要はクチとケツ)をつなげるというコンセプトに心惹かれた事になってます。
もう一つ「ムカデ人間2」の映像を見てると、ムカデにされた人間の視点からだと常にマーティンは見上げられているのですね。マーティン、身長も子ども並なので普段は見下ろされている立場なのですよ。でもムカデにしちゃうとどんな大男でも自分より目の位置低くなるので、それが気持ちいいんだろうなと
ムカデ人間ってのは人間を四つん這いにしてつなげた状態なんですよ。四つん這いっていうのは、人が直立する以前の赤ちゃんの状態での移動法でしょう。中身が幼児であるマーティンにとって自分より下の存在って赤ちゃんしかいないわけです。だから大の大人を赤ちゃんの様にして悦に入ってるんだな、と。
そうそう、私は女なので特にどうとも思わなかったのですが、ムカデ人間にされる人達は基本全裸ですので(モノクロですが)男性には嬉しいのかも。女ばっかりじゃなくて男もいるけどね。でもマーティンの趣味なのか女性は皆若くて美人です。ほぼ血まみれだけど。
というわけで「ムカデ人間2」、決して思いつきや行き当たりばったりではなく、考え抜かれ吟味されて作られた作品です。本人役で出ているアシュリン・イェニーは美人の上にぬぎっぷりも抜群で、しかも女優だけあってめっぽう気が強い! その根性なら今後ホラー映画の女王として君臨できるかも!
あ~~~、当然ですが「ムカデ人間2」には痛そうな描写が山程……というより全編それしかないと言っても過言ではないので、お好きな方は存分に期待して下さって結構です。苦手な方はゲロ袋ご持参で。ってゆーか劇場窓口でサービス(&汚れ防止)に配ったらいいんじゃね?
ちなみに私が「ムカデ人間2」で一番びびったのはある登場人物がムカデに咬まれるシーンでした。いや~~~~~っ!!