橋下市長も見たい! 人気脚本家、三谷幸喜さんが「文楽」を手掛ける(産経新聞) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120622-00000509-san-ent
>【話の肖像画】
発祥地・大阪市の補助金削減方針もあって、揺れる文楽。そんな中、偶然とはいえ人気脚本家が新作を手がける。実は人形こそ三谷ドラマ最初の“出演者”。人形浄瑠璃と三谷喜劇が融合した「三谷文楽」は自然な流れだった。(文・飯塚友子)
--東京のPARCO劇場で8月に上演される三谷さん作・演出の文楽「其礼成(それなり)心中」((電)03・3477・5858)は4年前から進めた企画とか
三谷 知人の紹介で人形の首(かしら)を作っている方に舞台裏を見せていただいたら、「文楽の若い人が新しいものをやりたがっている」と声をかけられた。僕は人形でコメディーをやってみたかったし、技芸員さんも賛同してくれました。
--近松門左衛門「曽根崎心中」の後日談だそうで
三谷 文楽でどんな場面が一番面白いか考え、浮かんだのが心中しようとする男女のシリアスな場面で、「待て待て!」と変なおっさんが割り込んでくるシーン。この場面が成立するよう物語を考えました。
あと「曽根崎-」は近松が実際の心中事件をすぐ舞台化した。心中する2人はともかく、(2人を死に追いやった)九平次(くへいじ)のモデルは「曽根崎-」を見に来たか。相当迷惑だったでしょう。「お前、出てるぞ」とか言われて(笑)。あんな悪役で。九平次にも言い分はあるだろうけれども、近松は彼に取材してないと思う。あの事件の関係者は、どんなふうに「曽根崎-」を見たか、というところに喜劇の芽を感じたんですね。
--そこで(心中現場の)天神の森の饅頭(まんじゅう)屋の夫婦という主人公が生まれる
三谷 心中しそうもない夫婦が、心中に至るまでの話です。人形遣いさんが最初、「人形は、人間の俳優が演じられるものは全部できる」とおっしゃった。NHKの人形劇「新・三銃士」の脚色をしたときも同じことを言われ、普通のドラマと同じに書いたら、何倍にも膨らましてくれた。今回も楽しみです。
文楽は「女性を演じさせたらとても力を発揮する」と伺い、また死を描くと人間が演じる以上に心に来るので、女性が美しく見える場面と心中は欠かせない。さらに「人間ができないことも、人形はできる」とも言われ、クライマックスで人間の俳優ではできないシーンを入れました。
--「女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)」のスーッと油に滑る動きなども、人形ならではですよね
三谷 最初、人形も人形遣いも水浸し、みたいなものをやりたいと思ったんですが、それは大きな勘違いだった。そもそも人間がやるものを人形がやる、すべてが嘘なんです。だから油まみれにならなくても油まみれに見せる、それが文楽だと。反省し、そこから発想した、絶対人間ではできない場面を出します。
伝統的なものに新しい何かを入れることが今、やるべきことだと思った。人間の俳優とからむ計画もあったんですが、「それでは文楽ではなくなってしまう」と言われました。それをぶっ壊そうと言いたくない。
僕は文楽が大好きだし、初めて文楽を見る人だけでなく、文楽ファンにこそ喜んでほしい。それにはできること、できないことを考えなければ。若い技芸員さんが「こういうものがやりたかった」と喜んでくれたのがうれしかったです。
--文楽は東京で人気ですが、大阪では不入りです
三谷 文楽を見たことがない人、日頃僕の芝居を見る人にも見せたい。面白いはずです。文楽は何でもできる可能性のあるジャンルです。もっと活性化させたい。それは一文楽ファンとしての思いです。実績を挙げ、大阪で上演できたら。
--橋下徹大阪市長も「三谷文楽は見たい」とツイッターに書いています
三谷 ごらんくださったら絶対楽しんでいただけます。
--改めて三谷さんのお考えになる文楽の魅力は
三谷 いじらしさです。人形である限り小さいから、僕らは俯瞰(ふかん)で見る。それにより彼らの生きるさま、人生が全部見える。僕らは神様の目線で見るわけで、あんな小さい人が一生懸命、必死に生きている。そこにいとしさを感じます。