サシャ・バロン・コーエンが「ディクテーター」で見せるプロ魂 : FROM HOLLYWOOD CAFE #映画 #eiga http://eiga.com/l/0eZ4H @eigacomさんから
サシャ・バロン・コーエン の新作コメディ映画「ディクテーター 身元不明でニューヨーク 」を鑑賞した。アリ・Gやブルーノ、ボラットと個性的なキャラクターを生み出してきたコーエンの新キャラは、なんと独裁者。彼が演じるアラディーン将軍は、北アフリカの架空国家の支配者という設定で、絶大な武力と救いようのない無知を武器に、権力を維持してきた。しかし、国連で演説を行うためにアメリカに渡航したとたん、ベン・キングズレー 演じる腹心の裏切りに遭い、ニューヨークの路頭に迷うことになる。果たして、世界でもっとも嫌われている独裁者は生き延びることができるか、というストーリーだ。
「ボラット
」や「ブルーノ
」と同様、お下劣なギャグと辛辣な風刺が織り交ぜられた、まさに彼らしい作品となっているのだが、これまでと決定的な違いがひとつある。
「ボラット
」と「ブルーノ
」がドキュメンタリータッチで描かれていたのに対し、今回は完全にハリウッド映画の体裁になっているのだ。「ボラット
」が「華氏911
」だとすれば、「ディクテーター 身元不明でニューヨーク
」は「オースティン・パワーズ
」なのである。
コーエンがこっちの方向に進んだ理由は想像できる。ドキュメンタリー撮影のふりをして一般人を騙すゲリラ手法は、有名人となったいまでは難しい。本人としてもハリウッド映画の手法のなかでも自分の笑いが通用することを証明したかったのだろう。
その試みが成功したかどうかは、人によって評価が異なると思う。典型的なコメディ映画の体裁を取ったことで、より広い観客層にアピールできる作品になったことは確かだ。偏狭で無知な独裁者が、ニューヨークで自らの愚かさを悟り、おまけに恋に落ちるという展開になっているからだ。ただ、疑似ドキュメンタリーがもたらす手に汗握る緊張感や、思わず目を疑うようなショッキングな展開が消えてしまったのは個人的には残念だった。
ただし、自分が作り上げたキャラクターを100%演じ上げるプロ魂はいまでも変わっていない。「ディクテーター 身元不明でニューヨーク 」の記者会見にも、サシャ・バロン・コーエン はアラディーン将軍として登場。記者からの質問にすべて、独裁者目線で答えてくれた。ぜひ来日してほしいものだと思う。
「ディクテーター 身元不明でニューヨーク 」は、9月7日から全国で公開。