衝撃的という意味ではこれが一番!
おもしろいとかおもしろくないとか通り越して、とにかく凄かった! 銃撃戦の激しさや肉弾戦の迫力、その他武器及び凶器&そこらにある物を何でも使っての殺し合いという点で軽く「エクスペンダブルズ2」を凌駕してました。同じ命がけでも真剣さの度合いが違う。「エクスペ2」の場合は俳優さん達がそれぞれ主役級なので劇中まず死なないとお約束があるようなものですから、見る側も余裕というか安心して派手なアクションを楽しんでいられるんですが、「ザ・レイド」の場合は何しろ誰一人として出演している俳優さんを知りませんから誰がどうなるか分からない! それだけでもうサスペンスですよ。椅子にふんぞりかえって見ていられる「エクスペ2」とは文字通り見る姿勢から違うわけです。で、身を乗り出して見ているのかというと案外そうではなくて、映画の中で進行するストーリーのあまりの恐さに座席の上で縮こまっているという感じ。
これに近い作品としては「スズメバチ」(こちら )や「要塞警察」(こちら )がありますが、根本的に違うのはこれらの映画では主役達は襲われてたてこもる側だったのに対し、「ザ・レイド」では主人公側が襲撃する方だということですね。辞書で調べたら「RAID」というのは「警察の手入れ」の事だそうで、お話そのまんまのタイトルですから。
ところでハリウッド映画やアメリカのドラマだと「警察の手入れ」というのが大体どのように進行するかというのはこちらも見慣れているのである程度見当はつくんですが、しかし「ザ・レイド」で手入れを敢行しちょうとしてるのはジャカルタのSWATなんですよ。ジャカルタって、インドネシアの首都って事ぐらいしか私知らないし、大変失礼ながらSWATがある事だってこの映画見るまで全然知らなかったです。そんなわけですから、そのSWAT20名がこの先劇中でどういう風に動くのかなんて全く見当つかないんです。
しかしこの映画のストーリーの先の読めなさって、恐らくインドネシアの観客が見ても同じだったでしょうね。だって次に何が起こるのかまるで予測できないんですから。不測の事態だからとかじゃなくて、敵としてそこにいる人達が何考えてるのか分からないんですもん。そういう意味ではいわゆるゾンビの襲撃に近いのですが、ゾンビと違って人間ですから知性もあれば計略もたてられる、銃器も鈍器も刃物も自由自在に操れる、殺意は旺盛で躊躇は一切ないとくれば最強最悪の敵ですよ。形が人間ってだけで、内容的には「スターシップトゥルーパーズ」のバグが一番近いのかも。
ところがそう思って見ていたら、ちゃんと人間らしい話も要所要所に盛り込まれているんです。非常にドライに描かれてはいますが、そこにはちゃんと愛もある。感動に至るには、そこまでの道のりであまりにたくさんの血を見すぎて感情が麻痺してしまってますが、一応心に残るものはある。上手く作ってあるな~と感心しちゃいました。
アクションもサスペンスも直前に似た「シャドー・チェイサー」よりずっと見応えありました。似たようなシークエンスがあっても、「ザ・レイド」の方が上というか説得力&迫力ありましたもの。「ボーン・レガシー」と比べると……アクションがおもしろいのは「ボーン」の方かな? シリーズものなので洗練されていて多彩なので。でも「ボーン・レガシー」一本と「ザ・レイド」だったら……「ザ・レイド」の方が凄いかも。凄いの「凄」の字は「凄惨」に通じるので。はい、凄惨極まりない映画なのです、「ザ・レイド」。並のホラーよりよっぽど恐い。「バイオハザード4」や「バイオハザード ダムネーション」に比べてもずっと恐ろしいのは、敵がゾンビじゃなくて生きた人間だから。同じ人間同士で血みどろの殺し合いをやってるのに、戦争映画じゃないから。マフィア映画と違って、殺しに来るのがスタイリッシュな殺し屋じゃないから。商売が犯罪にあたるからといって、そこに住んでいる普通の人達がいきなり臨戦態勢に入ってしまうから。
ふと気づいたら、自分のまわりに居る人がみんな人殺しで、そして自分の命を本気で狙ってるとしたら、どう思う?
もーあたし恐くってジャカルタの街歩けないよ!