【後編】堺雅人、初参加の赤堀作品を語る「ゴミのような日常は崇高で美しい」(オリコン) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121118-00000300-oric-movi


 映画『その夜の侍』(公開中)で初メガホンを執った赤堀雅秋監督と主演の堺雅人がORICON STYLEで初対談を行った。町の小さな鉄工所で日々働く男が、ある日妻を殺される。平凡だった男が犯人への復讐に全てを捧げ、社会との関わりを見失っていく同作。一貫して「市井の人々を描く」ことにこだわってきた監督の思いを堺が受け止める。

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――今作も含め赤堀さんの作品は、人間の「美しい」と「汚い」が対局ではなく、同居しながらも混沌としている印象を受けました。作品や登場人物に盛り込むと決めているエッセンスのようなものはありますか?

【赤堀】一貫しているのは生活者を描くこと。例えば、チェーホフ(ロシアの作家)を読むと、物語自体はすごく面白いんだけど、どこかで「お金持ちが“哲学”しよう」という感じがあって…暇だから哲学を語り合うような。僕からすると「いいから働けよ」って思うんです(笑)。僕の場合はそういう“哲学している暇もない”ような、いわゆる市井の人々を描きたいと思っています。

―― 登場人物に順風満帆な人が誰一人いないように思えました。

【赤堀】そんなことはないんですよ。今回の作品の登場人物も平凡で、どこにでもいる細やかな幸せの中で暮らす人たちです。事件を機にタガが外れてしまっているけど、奇人変人大集合じゃない。作品をご覧になって「対岸の火事」のようなイメージを持つ方もいるかもしれませんが、身近な距離感で、誰にでもありうる事と受け止めていただけたら嬉しいです。

【堺】どれも一つずつの要素はそこら辺に転がっている日常、ゴミみたいなものかもしれない。でも、俯瞰で眺めて全てを見終わってみると、すごく崇高なものを観たという印象があります。登場人物は体臭漂う汗ばんだ男たちだけど、最後にこんなに美しいものがあったのかと。そういうことを気づかせてくれる作家であり、劇団です。今回はその一員になれたことが俳優として嬉しいですね。

 事件を機に人生が一転した主人公と、一方で罪の意識もなく日々暴力を重ねて生きる犯人(山田孝之)が、妻の命日に初めて出会う。日々の息苦しさと希望への渇望を描いた映画『その夜の侍』は現在公開中。