何度でも鑑賞に堪える映画、「のぼうの城」♪
私、日本を舞台にこういう作品が見られるとは夢想だにしてなかったですよ、正直言って。
「こういう作品」とは、例えばピーター・ジャクソンの「ロード・オブ・ザ・リング」三部作であったり、リドリー・スコットの「キングダム・オブ・ヘブン」や「ロビン・フっど」であったり、要するに大規模な籠城&城攻めのシーンがある時代劇(コスチュームプレイ)ってことです。まあ、日本が舞台なのでそんなに「ロード」程の「大規模」さには到底及びはしないんですが、それでも「二つの塔」や「王の帰還」を彷彿とさせるシーンがあって見ていて喜んじゃいましたね♪(無論私は「ロード」ファン)
攻め手が門を破るのに使う槌、これ「王の帰還」だと巨大な狼の姿を模した金属製の一種の振り子のような装置なんですが、「のぼうの城」だと丸太を三本束ねて上に御幣(でいいのかな?)をたてたものでした。見た目の迫力は違いますが、でもそれで門を破られるかもしれないという守る側のスリルは一緒なんですよね。これだけ合戦の緊張感を味わえる日本映画を見ることができて、ホント嬉しかったですよ。
とはいえ、洋画と違うスタイルだなと感じたシーンもあるわけで、それは鎧武者の戦う場面。
な~んか、怪獣映画なんですよね♪
撮影している対象は人間なんだけど、撮り方が怪獣♪
一騎打ちでも一対多でも、強い方がアップになったらそれは怪獣♪
さすが監督のお一人が特撮でならした樋口真嗣さんだけあって、その見せ方は絶対被写体怪獣だろうという撮り方をしております。だってもはや人間ワザじゃないんだもん♪
そりゃもちろんどんな映画だって主人公は人間離れした強さを見せ人並み外れた働きをするものですが、撮影されている時はちゃんと「人間」として扱われているのですよ。あのジョン・ウーの「レッド・クリフ」で八面六臂の活躍を見せる超雲だって関羽だって張飛だって強さは怪獣並ですが撮られ方は普通の人間なの。でも「のぼうの城」での柴崎和泉守の撮られ方は、あれ絶対怪獣なんだもんね♪ 違うのはまわりがミニチュアじゃないってことだけ♪ 往年の特撮による怪獣映画好きにはたまらんですよ♪ 見ていて懐かしくなっちゃった♪
「のぼうの城」では樋口監督と犬童監督が分担作業とせずいつも一緒に現場にいたそうですが、そのおかげもあってなのか特撮シーンがごく自然に物語の中に溶け込んでいて違和感ないのがよかったですね。ああ、この時代ってこうだったのかと観客に素直に納得させる特撮の使い方、これが「ロード」を思い出させるのですよ。そして城を守る側の知恵をめぐらせての必死の戦いぶりは「キングダム・オブ・ヘブン」に似ているのです。「キングダム~」の方はもっと悲壮感が漂ってましたが、勝ち負けそのものよりも「戦う」という行為によって相手からよりよい条件を引きだそうというあたりも「のぼう」と近いのかもしれません。
といいつつ、でも一番似ているのは先にあげた「レッド・クリフ」、というよりその元となった「三国志演義」かも。劉備をのぼう様こと長親、張飛が和泉なら関羽は丹波、諸葛亮には靱負(ゆきえ)をあてると、まあ、一応、形だけはおさまるかな、と。残念ながら彼ら自身が天下をどうこうというわけじゃないんで、ここまでなんですけどね。
2回目の鑑賞はそんなことを考える余裕も生まれつつ、それでもやっぱり野村萬斎さんの芸には腹を抱えて笑いながら楽しく見られたので、これはもうロングランになってもらって何度でも見に行きたい作品だと思いました。
まだの方はお早めにどうぞ♪
あ、そういえば甲斐姫の強さも怪獣並だったわ。