二回目鑑賞は3Dで吹き替えにしました。
なにしろビルボ役、マーティン・フリーマンの当たり役である「SHERLOCK」のジョン・ワトソンで彼の声を吹き替えた森川さんがそのままキャスティングされてると聞いてたので。
もっとも最初に出るのは「ロード」の物語にひきつぐために老ビルボなのですが。フロド役の浪川さん始め旧キャストは同じ声優さんが努めている中、ガンダルフだけはお声が違ってました。これは「ロード」の三部作でガンダルフを演じた有川博さんが惜しくも鬼籍に入られたため、代わりに羽佐間道夫さんが努められたとのこと。お声を有川さんに近づけようとなさったらしく、聞いていても全然羽佐間さんのお声とは分かりませんでしたよTVドラマでさんざん聞いたお声なのに!
さて、ガンダルフ登場と共にビルボの姿も若返り、マーティンにチェンジ! お声は最初は気取って挨拶したせいか普段のワトソンと違った感じでしたが、騒動に巻き込まれていく内に次第に「ジョン(・ワトソン)」の声になっていきました。
も~~~、ジョンも可愛いんだけどビルボったらそれに輪をかけて可愛くって! あの巻き毛のヘアスタイルとか服装も似合ってるんだろうけれど、ビルボの可愛さって仕草とか動きそのものにありますよね! もちろん表情も含めて。マーティン本人の声もいいんだけど、森川さんで聞いたら悶絶ものでしたわ! 「シャーロック!」の代わりに「ガンダルフ!」って言ってるだけでね♪
いやもう、よくぞマーティンをビルボに選んでくれましたと感謝したくなりましたよ。「ロード・オブ・ザ・リング」もそうなんですが、ぴったりの俳優さんが年齢も相応で全員揃う唯一のチャンスに映画が制作されたって感じ。
それはトーリン・オーケンシールド役のリチャード・アーミティッジさんも同じで、彼が風格を身につける年齢になったからこそのベストなキャスティングだわ~と思ったりして。この方はテレビドラマでも苦難の道ばかり歩んでましたが、それが艱難辛苦に耐えたトーリンを演じるにあたって生かされてるんだと思いました。
とにかく「ホビット」のトーリンはカッコイイ以外のなにものでもないですね!
アラゴルンと同様漂泊の王子なのですが、彼には常に忠節を誓う臣下が付き従っているのという点で孤高のアラゴルンとは全然違っているわけです。遠い昔に滅びた王国の復活にいちるの望みをかけて影に徹して中つ国の平和を守り抜こうとするアラゴルンの眼差しは時に憂いを帯びつつも常に冷静でしたが、自分が若き日に滅びた王国の再建を一生の悲願とするトーリンの瞳はいつも熱く燃えたぎっていました。そこには彼が心に抱えた恨みや怒りもありますが、臣下を守らねばならないという強い思いと、それに何より失われた故郷に向けられる深い愛が漲っているのですよね。昔々のマンガやアニメには目の中に炎が燃えている描写がよくあったものですが、そういう目を実際に見たらまさにこういう印象であろうと思ったのがトーリンの燃える瞳でしたわ。アラゴルンが水ならトーリンは火。同じ様な境遇と思われかねないようなキャラクターをよくぞここまで描き分けたなとひたすら感心してしまいました。
そのトーリンのお声をアテてたのは東地宏樹さんでした。東地さんはノーランの「バットマン」で主役を演じたりしているので、もはやヒーローを演じさせてもベテランの域ですから、トーリンも間違いなくハマリ役ではありました。
ただ、重要な問題が一つ。
予告編でも出てくるドワーフ達の歌、あれは素晴らしいもので、字幕で、つまり本人達(と思われる)が歌っている場面は戦慄が走るほど美しかったのですよ。コーラスをやってますからね、私、あのハミングで和音を奏でる段階でもそれがどれだけ上手かわかるんですが、そこにトーリンの歌声が重なった時の荘厳さはもう例えようもなく、もし自分が男だったら絶対この曲歌いたいわと思ったぐらいです(女声ではあの地の底から響くような低音の調べは歌えません!)。
で、そのトーリンの歌を東地さんご自身が歌われてたんですが……あ、この方は歌のトレーニングというのをこれまでなさった事がないんだな、とすぐに分かってしまいまして……つまり下手だったんですよね~~~~~、大変残念なことに。
もちろんトーリンの歌を歌うにあたり、その曲の練習というのはしっかりなさったのでしょうし、音程が突拍子もなく外れると事故もなくそれなりに歌われてはいたのですが……まあ、声優さんは歌のプロではないので仕方ないのですが、楽譜どおりに歌うだけでいっぱいいっぱいのように聞こえちゃうんですよね。トーリン本人の歌が心の底からわき出る感情がそのまま言葉になりメロディーを伴って口から出た、とでもいう具合にごく自然に聞こえていただけに、これは非常に残念でした。何も無理矢理日本語の歌詞つけて東地さんに歌わせなくても、そこだけプロ歌手にするとかでもよかったのに。最近じゃあ声優さんは歌も仕事の内なのかもしれないけれど、いやホント、ここだけが実に惜しかったです。
おかげで私はいつも自分が注意されているの理由がよお~く分かって助かりましたけどね。うん、これは一朝一夕になおせるものではないのよね。
とはいえそれ以外は吹き替えにも欠点はなく、3Dで見る分には字幕を追わなくていいので大助かりでした。情報量も多いしね。
2Dと3Dの違いはどうかというと、3Dだと見る側(つまり私)の反射行動が目立つということぐらいですかね~。だから頭の方はそれを3Dであると認識して身体が反応しているのでしょうが、目の方はもう慣れてしまったので3Dも2Dもあんまり違いを感じてないみたい。画面が明るい分2Dの方が見やすかったかも。
ギジェルモ・デル・トロが関わった影響なのか、地下深くを表現する3Dが目立ってましたね! それで底の方は底知れぬ闇に閉ざされていたりするので、見ててもあんまり嬉しくないというのもあるかも。「わ~深い!」とは思うけれども、どのぐらい深いが真剣に追求したくないというか。3Dなら空を飛ぶ方がよいですな♪ もちろんそういうシーンもちゃんとありましたが、あんまり浮遊感がなかった感じ。そういうジェットコースターのような楽しさは「タンタンの冒険」の方が強く感じたと思います。ま、「ホビット」は冒険とはいえ道のりは厳しいのもなので、丁度いいさじ加減と言えるのかもしれません。
なんであれ、一度見たらすぐ次にまたもう一回見たくなるんですから、PJのつむぎだす中つ国の魔法は未だ健在なのでございます。