<レッド・ライト>コルテス監督に聞く デ・ニーロが超能力者役「自分が信じられなくなる映画」(まんたんウェブ) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130215-00200021-mantan-ent


目覚めたら棺の中……という衝撃的な作品「リミット」(09年)で一躍時の人となった、スペイン出身のロドリゴ・コルテス監督が、次の作品として挑んだのは、伝説の超能力者と超常現象を暴こうとする科学者チームの攻防を描いた新感覚の謎解きスリラー「レッド・ライト」だ。出演は、ロバート・デ・ニーロさんやシガーニー・ウィーバーさん、キリアン・マーフィーさんといった名優たち。作品のPRのために来日したコルテス監督は「まず、ネタバレは絶対なしだよ(笑い)」と断ってから、映画について語り始めた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

【写真特集】コルテス監督の表情と「レッド・ライト」の場面カット

 「皆さんはおそらく、この映画を見ながら、自分の考えていることを何度か覆されることになると思う。それによって、自分は果たして正確に物事を見ているのか、見過ごしていることはないのかと自問自答するはずだ。それによって、僕は皆さんに、自分自身が信じられなくなってもらいたかったんだ」と今作の意図を説明するコルテス監督。

 前作「リミット」は、棺の中に閉じ込められた男が脱出を試みる話だった。今回はそれとはまったく異なるストーリーでありジャンルの作品だ。アイデアの出発点は「超常現象をネタに人々をだます人たち」だった。「超常現象というのは説明がつかないもの。人間の“信じる”という気持ちに基づいてこそ成立する現象なんだ。それを使ってだます、うそをつく。“信じる”ことと“だます”ことは相対するもの。それが合わさって初めて成立するのが、“超常現象をネタに人々をだましている人たち”。その兼ね合いの面白さに引かれたんだ」という。

 今作でコルテス監督がキャスティングしたのは、デ・ニーロさんとウィーバーさんという2大俳優。デ・ニーロさんが演じるのは、30年も消息不明だった伝説の超能力者サイモン・シルバー役。スプーン曲げはもちろん、念写、念力、空中浮揚を悠然とこなす恐るべき男だ。一方、ウィーバーさんが演じるのは、超常現象の科学的解明に奔走し、これまで何人ものイカサマ超能力者のうそを暴いてきたマーガレット・マシスン役。2人の大物を演出しながら「彼らは、俳優としての自分たちの使命は、脚本に忠実で与えられた役割をきちんと果たすことだと考えている。その姿勢からは謙虚さ、まじめさが伝わってきた」と振り返る。

 また、マシスンの助手トム・バックリー役は「インセプション」(10年)や「ダークナイト ライジング」(12年)などに出演しているキリアン・マーフィーさんが演じた。マーフィーさんの起用の理由をコルテス監督は「バックリーは、映画の冒頭ではマシスンをサポートする目立たない存在に過ぎない。それが、シルバーが現れたことで性格がひょう変し、ダークサイドに流れていく。そうした役を演じられる二面性を持った役者を求めていた。キリアンはまさに、それができる役者だった」と明かした。

 映画は終盤、シルバーとバックリーの対決へともつれこむ。演出のポイントとして「ただただ、素晴らしい対決シーンを作りたかった。それは、宙に浮上して光を投げつけたりといったハリウッド的なものではなく(笑い)、言葉と言葉のバトル、例えばそれはシェークスピア的といえばいいのかな、決して自分の作品をシェークスピア劇と比べようと思っているわけではないけれど、内面的な言葉で意見を戦わせる、そうしたバトルを見せたかった」と語る。そして、そこで“おしまい”にしないのも、またコルテス監督の技だ。ここで、それまで強気だったシルバーが弱みを見せるのだ。その瞬間、「観客は裏切られたと思うはずだ。あれだけ自信満々だったのに、とね。それによって観客はまた、自分自身が信用できなくなる。それこそが僕の狙いなんだ」と、いたずらっ子のような笑顔を浮かべた。

 コルテス監督はまた、「この作品は、見終わったとき、そうだったのか!と頭の中の映像が巻き戻るはずだし、そうしてほしい」と強調する。「なぜなら僕自身、答えを提示する映画ではなく、質問される映画が好きだから。僕の映画はそうであってほしい。見終わったあと、皆さんの頭の中に新たな質問が生まれ、それについて考えてもらえたら」と、今作がもたらす効果に期待を寄せる。

 コルテス監督は、エンドロールのあとに、必ずあるショットを入れることにしている。今回ももちろん入っているが、それは「僕自身が子どものころから、ほかの観客が席を立つ中、エンドロールを最後まで見ているバカで(笑い)、僕と同類の“バカ”な人たちに、何か一つプレゼントを贈れたらと思う」ということからだ。「疑問を残す映画を作りたい」と語る監督に、その映像の意味を問うのは愚かなことだろうが、「あえてたずねてもいいですか?」と問いかけると、「聞いてくれていいよ」と快諾してくれた。無論、そのすぐあとに、「でも、答えないけど」と、またもいたずらっ子のような笑顔でスルりとかわされた。映画は15日からTOHOシネマズ六本木ヒルズ(東京都港区)ほか全国で公開。

 <プロフィル>

 1973年生まれ、スペイン出身。幼少時から映像作品の演出に興味を持ち、16歳で初めて短編を撮る。その後、いくつかの短編や音楽プロモーションビデオを手掛け、07年に「Concursante」で長編劇映画デビュー。長編2作目「リミット」(09年)が、サンダンス映画祭で絶賛され、その名を世界に広めた。また、ドキュメンタリータッチのスリラー「アパートメント:143」(カルレス・トレンス監督・11年)では脚本と製作を兼任。今作「レッド・ライト」では、監督のほか脚本、編集、製作の4役をこなした。