狙い済ました“釣り”タイトルの勝利? 西内啓著「統計学が最強の学問である」(産経新聞) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130304-00000547-san-ent


著者は言う。「あえて断言しよう。あらゆる学問のなかで統計学が最強の学問であると」

 思わず反発する向きもあるだろうが、内容は統計学の大変すぐれた入門書であり、ビジネスでの実践も視野に入れた実用性の高い一冊。狙い澄ました直球の“釣り”タイトルの勝利である。

 では、なぜ統計学は最強か。「どんな分野の議論においても、データを集めて分析することで最速で最善の答えを出すことができるから」というのが、著者の答えだ。つまり統計学とは、さまざまな学問で汎用(はんよう)的に使える方法であり、武器なのである。したがって、あくまでも「最強」であって、「最高」や「最良」という表現ではないわけだ。

 著者は昭和56年生まれ、東大医学部卒、ダナファーバー/ハーバードがん研究センター客員研究員などを務めた統計家だ。「数字に強いのはもちろん、対人関係スキルにもすぐれている。新しいタイプの天才といいましょうか」と担当編集者の横田大樹さんは語る。

 本書の元になったのは、定額課金型コンテンツ配信プラットホーム「cakes(ケイクス)」の連載記事。横田さんによると、今年1月24日の発売以来、発行部数は現在4刷10万部を突破。電子書籍版も非常に好調だという。

 政治でも経済でも、日本全体で「統計リテラシー」が不足していると著者は嘆く。たとえば、デジタル化以降に各企業などが蓄積した膨大な電子情報を指す「ビッグデータ」という言葉の流行。適切なサンプリングなどの統計リテラシーを身につけていれば、必ずしもビッグデータを全数調査する必要はない。流行語を駆使するコンサルタントに乗せられて、高額なデータ解析システムの導入を考えている企業幹部などは、特に必読の一冊かもしれない。=ダイヤモンド社・1680円