「ジャッジ・ドレッド」公式サイト


「ジャッジ・ドレッド」は未来が舞台ということで、特殊効果もてんこもりでございます。この監督は液体が飛沫となって飛び散ったり、ガラスが粉々になって砕け散ったりする際の光の反射がお好みのようで、随所にそれらの美しいシーンが挿入されております。しかもそれをスローモーションで見せるのが好きなんですよね。3Dで見たのですが、そういう場面だけは何かの環境ビデオかと思うぐらい綺麗です。ま、血も唾液も液体に数えられるんですが。


それと人体の破壊描写がかなり克明でしたね。「CSI」の如く科学的に正確に(恐らく)見せてくれてるので、エグイというよりはすごい~とパチパチ手を打って感心したくなる感じでしたが、「CSI」見慣れてない人は目を背けたくなるかもしれません。でも意外と残酷描写そのものは少ないんですよ。残酷さをうかがわせる描写とセリフは多いけど。


その「残酷さ」を一手に引き受けていたのが女ボス「ママ」役のレナ・ヘディ。いやもう彼女最高っす!


レナ・ヘディといえば、テレビシリーズの「ターミネーター」ではジョン・コナーの生みの母であるサラ・コナーで、映画「300」ではゴルゴ王妃で、今日本でも放映中の「ゲーム・オブ・スローン」ではやっぱり王妃のサーセイですが、「ジャッジ・ドレッド」では遂に女王の座に上り詰めたといっていいでしょう。身分はともかく、立場で。男どもの上に君臨する姿は完全に女王様。クイーンエイリアンを実写で撮るなら彼女が中の人になればぴったりというか。そのサディスティックな振る舞いでヤワな男を震え上がらせる姿には、レナ・オリン、ファムケ・ヤンセンの系譜に連なる偉大ささえ感じられましたよ。


何しろこの映画の彼女、すごいんだから! 

ザンバラ髪と頬の醜い傷跡でも彼女の美貌は封印できず、圧倒的な美しさはそのままに完全にイっちゃった人になってましたからね! 王妃を演じた時の誇り高い様子はどこへやら、元娼婦の女の凄みをド迫力で演じきり、登場する度に観客の度肝を抜いてくれました。

そこまでやるか! な演技を目一杯見せつけられて、ますますファンになっちゃったよ、レナ・ヘディ♪


彼女の演じた「ママ」がその名の通り地母神の成れの果ての狂える邪教の女神、手練手管を知り尽くした女の恐さの体現だとしたら、対するジャッジ候補生のカサンドラ・アンダーソンは未熟で見守り育むべき娘の位置でしょうかね。ジャッジ・ドレッドは別に彼女の父親じゃなくて、試験官として候補生を伴っただけなんですが、彼の振る舞い方は完全に保護者でしたから。全然異性として見ていなかったので、実はこの映画、女っ気はあるものの色気の片鱗もない作品ではあるのですよ。まあ、サスペンスにはムダな色恋がない方が面倒がなくて見やすいです。


アンダーソンを演じたのはオリヴィア・サールビー。彼女が出ていた映画を何本か見ているけれど誰を演じてたのか全く思い出せませんが、それはさておき「ジャッジ・ドレッド」の中では外見的にもとことん「ママ」と正反対に描かれておりました。黒髪で女性性の権化のようなママに対し、アンダーソンははかないブロンドで華奢な少年のよう。でも汚濁にまみれたママとは違いアンダーソンは清潔そのもの。自信に満ちあふれ何でも自分で命令を下すママ、荒削りで自信がなく全てにジャッジ・ドレッドの指示を仰ぐアンダーソン。


実は「ジャッジ・ドレッド」の話の軸ってアンダーソンの成長物語にあるんですよね。言ってみれば彼女がストーリー上の主役ではあるんですが……


ま、アクションで主役を張るのはやっぱ男じゃなきゃってわけで、ジャッジ・ドレッドがタイトル・ロールでヒーローなわけです。厳格なる法の執行官である彼はほとんど私情を交えることなくひたっすら戦い続けているのですが、でも彼のアンダーソンに対する「評価」が次第に変わっていく様子はセリフを通じて分かるようになっています。ドレッド、ひょっとして、ツンデレ?! 的な可愛さを感じられたら、あなたはもう彼のとりこ♪(何の事やら)


だって、ドレッド演じてるの、エオメルですからね。いや違った、カール・アーバンですからね、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの。彼がその美貌を、これはヘルメットで完璧に封じて熱演しているのがジャッジ・ドレッドなんですよ、無理矢理お口をへの字に曲げて。普段そんな顔しないのに、すんごいがんばって口への字にしてる様子が見られるのにはホロリとしてしまいました。いや、そうじゃなくて。


カール、口しか見えなくなるヘルメットをかぶりながらもしっかり感情表現しておりましたよ。ドレッドは元々感情豊かな男なのに、それを押し殺して任務に徹しているんだな、と私はひしひしと感じました。思い込みかもしれないけど。


これ、下手したら、中身空っぽな人間になっちゃいますからね、ジャッジ・ドレッド。そこに法に対する忠誠と生まれもった優しさを感じさせることができたのは、カールの演技力と人間性の表れだと思います。彼はいつも、自分が仕えるものに対して絶対の忠誠を誓っている人物を演じていますから。


カール・アーバンといえば大ヒット作である「ロード」のシリーズの他に、脇役ではあるけれどエージェントを演じた「ボーン・スプレマシー」や「RED」もヒットしたし、SFでは「スタートレック」では主役のカークの親友である軍医のマッコイも演じていてこれも大ヒットでしたが、自分が主役だとなかなかヒットに恵まれないみたいで気を揉んでおりました。「ジャッジ・ドレッド」も結構微妙なところですが、「DOOM」よりはマシでしょうか。カールって、目を瞠るほどの美男なので、アクション映画御用達のジェイソン・ステイサム的コワモテにはなりえないのですよね。だからこそ、その美貌を全面的に封じたヘルメット姿のジャッジ・ドレッドを選んだのかもしれません。カールの場合は顔だけじゃなく身体も最高に綺麗なのですが、それもごく一部分を除いて露出なし! 思い切った選択だねえ。


ま、「プリースト 」ではポール・ベタニーと対峙する悪役を顔出しで演じたけれど、この作品も興行成績はパッとしませんでしたからねえ(あたしゃ3Dで見に行ったけどさ)。


カールって、「ロード」シリーズで有名になった俳優の中ではヴィゴ・モーテンセンに並ぶぐらいおもしろい仕事ができてるんじゃないかと思う(ゴラム演じたアンディ・サーキスは別格です)。キャリアとしても主役じゃないにしても大ヒット作に出演してるから結構順調な方だろうし。何よりジョーン・ビーン並に仕事に貪欲だよね。ほんと、オーランド・ブルームにも見習って欲しいわ(←なんの事やら)。


カールは今年日本でも8月に公開される「スター・トレック イントゥ・ダークネス」にも出演しております。今度はベネディクト・カンバーバッチと共演だ♪ 今度はその御尊顔をしっかりスクリーンで拝ませて下さいませね~♪