さらば銭形警部 名声優・納谷悟朗さん、慢性呼吸不全で死去(スポーツ報知) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130311-00000171-sph-ent
劇団「テアトル・エコー」の看板俳優として活躍し、アニメ「ルパン三世」の銭形警部、洋画ではクラーク・ゲーブル、チャールトン・ヘストンといった名優の声を担当した納谷悟朗さんが5日、慢性呼吸不全のため千葉市内の自宅で死去した。83歳。告別式は近親者で行った。後日、お別れ会を行う。「ルパン三世」で共演した声優たちは11日、スポーツ報知の取材に応じ、納谷さんを失った悲しみや、故人の思い出を語った。
よく響く、独特のだみ声でクラーク・ゲーブルを始め、数々のハリウッドスターの吹き替え担当をしてきた納谷さん。劇団関係者によると、80歳を過ぎて体力が少しずつ低下し、内臓だけでなく、呼吸器も影響を受けていた。そんな中でも仕事への気力を持ち続け、最後の仕事は昨年5月に吹き替えを行った映画「インセプション」だった。
1950年代に俳優としてデビューし、その後、洋画の吹き替えで人気を博した。しかし、「あくまで自分は俳優」というポリシーを貫き、「声優」という肩書を「許さない」とまで言っている。
酒とたばこと野球を愛し、熱狂的な阪神ファンとしても知られた。85年以降は胃潰瘍、胃がんなどの手術を経験。体力的に無理のない範囲で仕事を続けてきた。東京から千葉に転居後は、喪主を務めた妻で女優の火野カチ子(本名・納谷捷子=なや・かちこ)さんと穏やかな日々を過ごしていたそうだ。2人に子供はいなかった。
納谷さんは洋画の吹き替え以外にも「仮面ライダー」のショッカー首領、ウルトラマンA(エース)、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」の沖田十三艦長など当たり役が多いが、最も知られたキャラクターは「ルパン三世」の“とっつあん”こと銭形警部だろう。石川五ェ門役で共演した井上真樹夫(72)は、今回の訃報に「ショックで号泣した。本当に男気のある人でしたから」と声を詰まらせた。
「銭形と納谷さん自身が重なるところは全くない。普段は大変シャイで静かな方。納谷さんがあのキャラクターをすべて作り上げた。演技に没入する姿にはいつも圧倒された」と振り返った。
峰不二子を演じた増山江威子(76)も「(ルパン役の)山田康雄さんも納谷さんもいなくなって悲しくて仕方がない。『一緒に(天国に)連れて行って』とも言えず、置いてけぼりになったよう」。「私にとって児童劇団時からの“憧れの王子様”のような存在。以前は家が近所で打ち上げ後は納谷さんを送り届ける係が私でした」と振り返った。
次元大介役の小林清志(80)は「昔はその日の台本をもらってすぐに本番ということも珍しくなく、より高い集中力が求められた。どの役にも納谷さんの味わいがあり、ふだんは優しい親分肌という印象だった。亡くなったことが信じられません」と語った。劇中ではルパン一味として、銭形警部に追われ、逃げ回った面々も、アフレコを終えれば厚い信頼関係で結ばれていた。
◆納谷 悟朗(なや・ごろう)1929年11月17日、北海道・函館市生まれ。幼少時から児童劇団で活動し、59年、熊倉一雄さんに誘われて「テアトル・エコー」へ。60年代から米テレビシリーズ「コンバット」を筆頭に海外俳優の吹き替え、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」の沖田艦長、「風の谷のナウシカ」のユパなど数多くの声を担当。舞台の主な作品はニール・サイモン作「サンシャイン・ボーイズ」など。弟は俳優の納谷六朗。