「ホット・ファズ」といえばサイモン・ペッグとニック・フロスト主演の知る人ぞ知る傑作コメディーで、日本でも上映して欲しいと有志が署名活動まで行ったといういわくつきの作品。もちろん私も署名して、晴れて日本で上映された暁にはしっかり当日料金払ってまで見に行きましたともさ! 私が1800円払って見た数少ない一本だわよ。
だからここで「ラストスタンド」のおもしろさを「ホットファズ」になぞらえているのは、コメディーとして傑作であると太鼓判を押しているのも同然なのです、って自分で説明したら何にもならないけど。
シュワ映画のコメディーといえば、まず「ツインズ」。これは紛れもない傑作。あとは「キンダガートン・コップ」、「ラスト・アクション・ヒーロー」、「ジングル・オール・ザ・ウェイ」ぐらいかな? これらの三作はどれも「子ども」が登場するので、まあそれだけでもおもしろいし(シュワとお子ちゃまのただならぬ身長差だけで笑えるんです)、言ってみれば「ツインズ」も含めて人情ものなわけです。特にアイヴァン・ライトマン(「ツインズ」と「キンダ-~」)はアメリカのアメリカの山田洋次みたいなものですから。コメディーの源流でいけばチャップリン的な方。
とっころが「ホット・ファズ」は違います。これはどちらかというとスラップスティックなんですよね。日本で言うならドタバタ喜劇。昔の全員集合してた時代のドリフターズとか(「ラストスタンド」のシュワはいかりや長介にあたるかな?)。多少、登場人物間の思わぬ心のふれあいにじんとくる部分はありますが、かといってそれがメインではない。メインはあくまでもドタバタ。「ホット・ファズ」の場合、撃ち合いです。肉親のしみじみとした情愛(人情ものの基本)なんぞ風穴あけちまいな! の勢いでここを先途と撃ちまくる。クライマックスだけなら「マトリックス」にも負けてません!
ただ、ここに至るまでが、ちょっと長いのね、「ホット・ファズ」。観客を退屈させない程度のシーンは随所にあるものの、いわゆる「くすぐり」程度なのでニヤリとはするものの、声を上げて笑うに足だけのパワーに欠けるのよ。イギリスの、おそらく「ど」のつく田舎町ののどかな日常風景に全てはのみこまれて事もなく終わるんじゃないかと観客が思い始めたその時、突然、爆発的に始まるのね、ドタバタが。そう激しい銃撃戦が!!
この鮮やかな切り替え、この掌の返しっぷり、あざといまでの意表のつきかたが見事すぎて、観客は一気に情動のてっぺんまで持って行かれて……あとは笑うしかないのでその後ずっと笑いっぱなしになるのです。これだけ劇場中が大笑いに包まれた映画も珍しいよ。
言ってみれば観客は「笑い」が生まれる直前の状態で長時間ずっと我慢させられ、じらされてたわけで、だからこそ一旦「笑い」が解放されたらそれは堰を切ったごとくあふれ、とどまることを知らなくなるのですよ。も~、涙出るほど笑ったわ。しかもここで前半の伏線が生きてきて、それが見事に全部回収されていくわけですから清々しいったらないの! 笑って笑って気分爽快になります。
で、「ラストスタンド」の構成ってちょうどそんな感じなんですね。
私は見る前は、なにしろシュワ側の人数があまりにも少ないので最終的には「要塞警察」の如く立て篭もって悪人側と対決するのかと思ってたんですが、フタをあけたら全然そんなことはなくてむしろ「ホット・ファズ」だったという嬉しい驚き。周囲が全部敵のたてこもり映画って、最近だと「ジャッジ・ドレッド」や「ザ・レイド」という傑作がありましたから、ここでシュワがそれやってもちょっと分が悪いんじゃないかと思ってたんですよ。でも「ホット・ファズ」なら大歓迎♪ ガンガンやっておくんなさいって感じです。
というわけで「ラストスタンド」は王道をいくコメディーですので、おかしいシーンがあったら遠慮なく声を出して笑ってくださいませ。うん、我慢しようと思っても後半は自然に笑えちゃうから言うまでもないかな?
シュワ史上初(?)のスラップスティック「ラストスタンド」、ゴールデンウィークに笑いたい方には特におすすめでございます♪
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