【インタビュー】アイアンマン・スーツのCGモデラー成田昌隆氏……異色の転身 http://www.rbbtoday.com/article/2013/04/23/106867.html @RBBTODAYさんから
トニー・スターク=アイアンマンの“最後の戦い”を描く、アクション大作『アイアンマン3』(4月26日、2D/3D日本先行公開)。この作品でアイアンマンスーツのモデリング(CG)を担当したのが、日本出身アメリカ在住のCGモデラー・CGアーティスト、成田昌隆氏だ。
異色の経歴を持つ成田氏に、この映画の見どころや、40代でアーティストとして独立した彼の“横顔”に迫った。
この映画に登場するメイン14体のスーツのCGモデルは、デジタルドメイン社によって開発された(他社がこのオリジナルモデルを使って、手足などを組み替えてバリエーションを増やしている)。マーベルのビジュアル・デヴェロップメント・チーム内にデジタルドメインの少人数チームも置かれ、成田氏がモデリングリードを務めた。
1963年生まれの成田氏。証券会社の米国駐在員などを経て、CGアーティストに転職したのは4年前。「CGが映画で多用されるようになった15年ほど前から、映画で活躍するCGアーティストになりたいと思っていました」という。
「1997年のゲームデベロッパーズ カンファレンス(GDC)でLightWave 3DというCGアプリケーションをその場で買って、3年間独学でCGを学びました。複数の制作会社などからオファーをもらいましたが、グリーンカードを待っている間に、父親の突然の死や娘の誕生、昇進などで現実に引き戻され、一度、CGアーティストになることを諦めたこともありました」(成田氏)
そしてリーマンショック後、会社が海外事業を縮小するのを機に、「これが最後のチャンスだ」と、こんどは会社を辞め、学校にも通った。そして週300ドルの小さな仕事から始め、CMを得意とする中堅のCG制作会社でついに映画の仕事に携わる。さらに「映画の全編にわたって活躍したい」という夢を追い求め、大手のデジタルドメインに移籍、『アイアンマン3』のモデリングリードの位まで登りつめた。なおデジタルドメインが人員を募集していた時は、作品名は明らかにされておらず、面接で『アイアンマン3』だと知ったそうだ。
「マーベル・コミックスから全身ビジュアル2面図(正面・背面)が届き、その2次元の絵を立体(3D)へと構築するのが私の仕事です。俳優のアクションを想像して、アイアンマン・スーツをつくり込んでいくわけですが、俳優にそのままスーツを着せるイメージだとバランスが悪いし、スタイリッシュにつくると本物っぽくならない。人間の関節の動きなどを忠実に再現し、リアリティを追求しながら3次元化していきます」
成田氏は、「アイアンマン・スーツの内側のメカの大部分を、自分の想像でつくり込んでいるので、ぜひそうした細部にも注目して観てほしい」とアピール。そんな成田氏の、日々の暮らしのなかで大事にしているところは何か?
「モデラーとして大事なところは、観察力と造形力。いかに対象物のディティールをとらえるかにかかっている。僕は、仕事場までクルマで1時間半かけて通勤するんですが、例えばフリーウェイを走りながら併走する大型トラックの細部なんかをよく意識して見ている。何についても細かいところにこだわるという気持ちがありますね。そういう意識はプラモデルで培ったと思います」(成田氏)
娘さんが学校で父親の仕事をアイアンマン・スーツのモデラーと紹介したら大騒ぎになったそうで「夢はかなったかな」と成田氏。さらに次の夢は「俳優。CG作業する手が動かなくなったら」と笑う。今50歳にしてさらに夢を追い続ける日本人アーティストの横顔の奥に、優しい人柄と力強い信念が垣間見えた。
<ストーリー> 史上最悪のテロリスト“マンダリン”からの襲撃を受けたトニー・スターク。すべてを失ったトニーに残されたのは、天才的な発明の才能と、大切な者たちを守りたいという信念のみ。トニー・スターク=アイアンマンの最後の戦いが、いま始まろうとしている……。
「アイアンマン」シリーズの最初の2本で登場したスーツは6種類、『アベンジャーズ』で1種類追加された。『アイアンマン3』では、スーツ作成に執着するトニーによって、さらに35種類のスーツが作られる。宇宙空間用に設計されたもの、水中用に設計されたもの、爆破用に設計されたものなど。それらのすべてが最後のバトルに現れる。