『ビトレイヤー』マーク・ストロング「セリフ、プロットが優れた、展開の読めないスリリングな映画だよ」(Movie Walker) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130502-00000020-mvwalk-movi


リドリー・スコット製作総指揮、ジェームズ・マカヴォイ主演のクライムサスペンス『ビトレイヤー』(5月4日公開)で、マカヴォイ扮する捜査官とコンビを組む、キンヘッドの強面犯罪者スターンウッドを演じるのは名優マーク・ストロングだ。確かな演技力と力強い存在感で本作の質を高めるマーク・ストロングに本作の魅力や撮影秘話について語ってもらった。

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――スターンウッド役について教えてください

「私が演じたジェイコブ・スターンウッドは大物の銀行強盗だった。効率的な犯行で逮捕されたことは一度もない。しかし、最後の犯行の際にジェームズ演じるマックスに追い詰められる。一時は逮捕されかけるがマックスの膝を撃ち逃走するんだ。その後、強盗からは引退し、アイスランドに隠居していた。しかし窮地に陥った息子から連絡が入り、ロンドンへ戻ることになる。それがマックスを再び駆り立てるんだ。彼は過去の因縁を晴らすべく、スターンウッドを追いかけて追走劇が展開されるのさ。2人の因縁はとても根深い。ジェイコブがマックスの膝を撃った際、殺すこともできたが、彼を生かしたんだ。そのことはスターンウッドにとって大した意味もなく、記憶も薄れつつあった。ただ最後の仕事というだけさ。一方でマックスはそのことを心の傷として抱えていた。マックスはスターンウッドに対して執着することになる。彼の大きな分岐点だったわけだ。効率を重視するスターンウッドにマックスを殺す必要はなかった。彼は様々な可能性を考慮し、殺さないことを選んだ。もし殺せば不要な罪が自分に課せられるのだからね。逃げるために膝を撃つだけに留めたのさ。スターンウッドは決して完璧な男ではない。かつての彼に比べると衰えているし、妻に先立たれ息子は窮地にいる。そして若い頃より内省的だ。ロイとのシーンなどでそんな雰囲気を感じさせるよ。老いを感じ始めた男を描く素晴らしいシーンだよ。そういう脆さも気に入ってるね。また、アイスランドのシーンも私のお気に入りだ。自分の城にこもり、追っ手が来るのを待っている。そして彼らが現れると、とても冷酷で効率的な方法で敵を追い払ってしまうんだ。引退後のスターンウッドが初めて描かれるのはこの部屋のシーンだ。部屋の様子から彼の日常が垣間見られる。ベッドには生活の跡があるが姿は見えない。そしてカメラがパンすると男が床で腕立てをしてる。それは彼が眠れずにいることを示唆しているんだ。身体が鈍っていないこともね。それをセリフなしで描くところが良い。動きだけで彼の様子が読み取れるんだよ」

――共演者についていかがでしたか?

「ジェームズは共演者として最高だったよ。彼とはこの作品で精神的な争いを表現してる。一緒になるシーンは終盤までないが、まさにプロといえる俳優だね。とても知性にあふれていて理想の共演者だった。ジョニーやデヴィッドなど一流のメンバーがそろった。共演シーンの多かったロイ役のピーターもまさに名優だよ。充実のキャストだね」

――この作品に惹かれた点はどこでしょう?

「今回の脚本が面白いのは登場人物の善悪が簡単に割り切れない点だ。人間というのは誰しも善にも悪にもなりうるもの。簡単に善悪を分けられるほど人間とは単純なものではないはずだよ。その点が描かれてる作品だね。スターンウッドにしても、かつては悪者だったがそこから変化を見せている。過去を悔いてるわけではないが、年を重ねて息子への愛情や妻に先立たれたことなどが彼の考えを変えていった。一方、マックスは善の側だ。彼は警察官だからね。だが2人は過去の出来事で共に傷を負っているんだ。刑事の仕事も強盗もそれぞれに払うべき犠牲があることを描いているんだよ」

――監督との過去の関わりと彼との仕事について聞かせてください

「優秀な人材が集まった作品だよ。エランはとてもエネルギッシュでしっかりとしたビジョンを持ってる。脚本も書いているし、とても仕事がしやすかったよ。演技で迷ってもそばに脚本家がいるからね。この作品のイメージが全て頭の中にあるんだ。そういう監督がいるのは心強いね。とにかく素晴らしい脚本なんだ。私はBIFAという映画祭で審査員をしていたんだけど、2、3年前のことだね。そこで『Shifty』という映画を審査することになったんだ。それで初めて彼の作品を見たのさ。その後、エランから今作の脚本が届いた。『Shifty』にも出演していたジェイソン・フレミングが共通の友人でね。だから脚本を読む前から幾つか情報は得ていたんだ。ロサンゼルスで会い、すぐに出演を決めたよ」

――イギリス映画界とその人材についてはどうでしょう?

「イギリス映画界は人材に事欠かない。だが皮肉なことに、我々はアメリカを基準に評価してしまう。アメリカに拠点を移すのが映画人の成功だと思われがちだ。向こうの方が市場が大きいからね。でも、イギリスとアメリカではやり方が異なる。どちらが良いわけではなく、アメリカの方が規模が大きい。だが私はロンドンに戻って映画を作れて楽しかったよ。私にとっては生まれ故郷だからね。とても嬉しい」

――カナリー・ワーフでの撮影について聞かせてください

「カナリー・ワーフでの撮影は作品にスケール感を持たせたね。とても洗練されていて、CGだと思う人もいるだろう。初めて監督に会った時にこのアイデアを聞かされた。彼はロンドンを見せたがっていたんだ。これまでガイ・リッチーなどが優れた作品を作っているが、この作品は少し違うロンドンを洗練された手法で描いてる。カナリー・ワーフを使えたのはその点で大きかったね。あの地域が持つ金属的な雰囲気が効いてる。これまでにない映像だよ」

――本作のターゲットとなる観客と、くみ取ってほしいメッセージについて教えてください

「幅広い層が楽しめる映画さ。アクション映画ファンやスリラーのファンもね。ただ、大人の映画とは言えるかもしれない。登場人物が皆傷を負ってるからね。一方でアクションも楽しめる。観客はその中から気に入る部分を見つけるはずだ。セリフやプロットが優れているし、展開の読めない面白さもあるスリリングな映画だと思うよ」