2013年上半期映画、50億円超えは2作…ヒットのボリュームが小さくなった2つの理由(オリコン) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130521-00000330-oric-movi


お正月、春休み、ゴールデンウィークと2013年前半の3大興行成績がほぼ出揃ったところで、この上半期の映画シーンを振り返る。ムーブメントになりつつある好調なアニメ、奮起をみせる洋画シーンから2作の大ヒット、その一方で、これまでのところ苦戦を強いられている邦画実写――映画ジャーナリストの大高宏雄氏がその実態を独自の視点で綴る。今年ヒットのボリュームが小さくなっているふたつの理由とは!?

上半期興行収入TOP10作品の写真&成績

 今年もすでに5月の後半である。上半期の一歩手前という時期ではあるが、これまでの2013年映画興行を少し振り返ってみよう。当然と言っていいのか、意外と言っていいのか、全体では昨年実績を上回る成績になっているのが、まずは単純にいいことである。4月末段階で、推定10%近い上昇率を示す。その理由のひとつとして、洋画の奮起を挙げたい。これにアニメの健闘が加わる。

 前者は、東宝東和配給の2作品、『レ・ミゼラブル』(58億円)と『テッド』(43億円)が、合わせて100億円の興収を突破したのが、とくに目を引く。後者は、東映配給のアニメの2作品、『ワンピース フィルムZ』と『ドラゴンボールZ 神と神』が、それぞれ68億5000万円、30億円前後を記録したことが、大きな成果であった。数字上では、この4作品で、トータル200億円前後を計上する。

 これに反して、実写、アニメを含む東宝の配給作品が、昨年実績を大きく下回っていることも注目である。1月から4月までの4ヶ月累計で、東宝の興収は156億63万円。これは、昨年の65.6%である。『映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館』『名探偵コナン 絶海の探偵』は、前者が40億円、後者が33~35億円と、シリーズ最高レベルの成績になっているから、実写作品の落ち込みが顕著だといえる。

 まず、洋画の復調らしきものだが、これは東宝東和の先の2作品に顕著で、それが洋画全体の傾向を示しているかというと、微妙なところもある。米メジャー系の作品だけを見ると、これまでのトップが『007 スカイフォール』の27億3000万円。これに続くのが、『アイアンマン3』の25億円前後。両作品とも飛躍を遂げたとはいえるが、『アイアンマン3』は世界での大ヒットの規模を考慮すると、まだまだである。他の作品で、見込みを下回ったものも多い。だから、全体的には昨年前半のような体たらくは脱したものの、先行きの不透明感は否めない。

 アニメは、定番作品の安定感に『ワンピース』と『ドラゴンボール』の飛躍的な成績が加わり、圧巻の度合いを増した。単館系アニメの健闘もあり、アニメに関心を寄せる観客層の広がりが大きくなり、今や映画興行のムーブメントともいえる様相を呈している。

 東宝以外も含めた実写作品では、この5ヶ月で20億円を超えた作品は、『プラチナデータ』(26億円)と『ストロベリーナイト』(21億円)の2本のみ。次に10億円台後半で続くのが、『東京家族』『今日、恋をはじめます』『藁の楯 わらのたて』『図書館戦争』。これは、かなり期待はずれだといわざるをえない。昨年で見ると、この期間に公開された作品では、『テルマエ・ロマエ』が50億円以上、『映画 怪物くん』が30億円以上を超えていた。

 ヒットのボリュームが、格段に小さくなった。これには、大きな理由がふたつあると思う。テレビドラマやコミック原作の映画化ではないため、認知度の点で図抜けてはいないこと。作品の内容が、どちらかというとハードなサスペンスものが多く、ヒットしたとはいえ、観客層が少し限定的だったこと。このふたつである。

 要するに、多くの観客層にアピールできるイベント映画が、なかったということだ。これは、たまたまそうだったのか、そうではなく、そうした作品の製作が滞ってきたのか。判断は難しいところだが、この夏の大作の動向を見ていくと、そのあたりの事情が少しなりとも、明らかになっていくことだろう。

 以上、洋画、アニメ、邦画の実写に関する3つの傾向に関して、相当駆け足できてしまったが、どれも半年、あるいは1年単位で見ていくと、実体はまた変わっていくものと思われる。ただそれでも、映画興行は少しずつ変化を内部にはらんで、それが大きな塊となって、突き進んでいるのである。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)
※各作品の成績は最終興行収入の推定値