「エンド・オブ・ ホワイトハウス」(公式サイト


こちらは上映前に劇場に入ったはずなのに、スクリーンを見るといきなりホワイトハウスが攻撃されて炎上してたので自分が時間を間違ったかとビックリした人が続出したとかしないとか……ええ、実はそちらは「ホワイトハウス・ダウン」の方の予告だったんですが。ちなみに「GIジョー2」では出番の少なかったチャニング・テイタムがこっちでバリバリ主演を努めております。共演はジェイミー・フォックス。


で、肝心の、「エンド・オブ・ ホワイトハウス」の主役の方は我が愛しのジェリーさんことジェラード・バトラー。ワタクシ、彼がまだマッチョになる前(つまり「300」以前)のドラキュリアの頃から心酔しているのですが、この方スーツにネクタイのきっちりした姿で登場する作品って少ないんですよね! 毎回「300」のようにマントに皮製フンドシ一丁というわけではありませんが、カジュアルだったりラフだったりの方が多く、ジャケット着ててもノーネクタイという印象が強いのですが、この作品ではブラックスーツを着こなしたりタイできっちり決めたりした嬉しいお姿を披露してくれております。いや~、眼福だわ~。


共演はモーガン・フリーマン。「オブリビオン」で見たばっかりだっつの。もう一人の共演がアーロン・エッカートなので、うっかりするとこれはバットマン・シリーズなのかと思っちゃいそう。少年とその美人のお母さんも出てくるし♪ アシュレイ・ジャッドはお母さん役がはまっていても、実にゴージャス。こんな奥さんだったら夫もいつまでもメロメロだわ、という雰囲気を全身で醸し出してました。


その奥さんにベタ惚れなのがアーロンで、家族共々住んでいるのがホワイトハウス。つまり合衆国大統領で、その御一家を警護するシークレット・サービスの責任者がジェリーさんというわけ。「24」でもそうでしたが、シークレット・サービスというのは大統領の家族とかなり密接な関係を築いているのですね。「エンド・オブ・ホワイトハウス」では大統領の他に特に息子君と仲が良いという設定です。むろんこの設定が後々効いてくるのですが♪


さて、絵に描いた様に幸せそのものの御一家ですが、映画やドラマを見慣れている人には当然わかります。死亡フラッグ、めちゃ立ってるや~ん、と(前回の「クリミナル・マインド」もそうだったわ)。


というわけで不慮の事故をきっかけに一同不幸のどん底に突き落とされるわけですが、ここまではただのプロローグ。次に起きる事件に備えて人員を都合良く配置しておくための、いわば設定に過ぎないのです。この部分をポンポンポ~ンと歯切れ良くスピードにのって見せてくれるのが監督の手腕ですね。アントワン・フークワ監督、「シューター」の頃よりさらにテンポが早まったような。


いきなり月日は立って、ジェリーさんはホワイトハウスを離れて閑職についております。いや、デスクワークも忙しいかもしれないけれど、現場ラブな彼にとっては退屈極まりないのですね。


そこにホワイトハウスが急襲を受けたという連絡が入り、ジェリーさんは当面の仕事なんぞすっかり投げ出して現地へと駆け出すのでございます。


はい、ここ、大事なポイントです。


「エンド・オブ・ホワイトハウス」、このあと例えて言うならホワイトハウスを舞台にした「ダイ・ハード」的展開になるのですが、「ダイ・ハード」シリーズの主人公であるマクレーンが常に事件に巻き込まれているのに対し、ジェリーさん演じるマイク・バニングは自分から現場へ乗り込んでゆくのですよ。逃げ惑う群衆をかき分けて逆走する勢いで。


彼の向かっている現場ではホワイトハウスを守ろうと果敢に飛び出してくるホワイトシャツ姿の皆様が次々に撃たれては朱に染まって倒れているのです。それはもう、あんた達なんで防弾チョッキもつけずに白シャツのまんま出てくるのよと筋違いの抗議をしたくなる程の悲惨さで……。


「バレット」だとね、血は弾が抜けると共に人体の一部と共に後ろに噴出するものだったんですがね、「エンド・オブ・ホワイトハウス」の場合は距離と服があるので胸にあいた穴は見えませんからね、その分銃撃の激しさを表現するために白いシャツが瞬時に真っ赤に染まる演出にしたのでしょう。それにしてもホワイトハウス勤務の人はホワイトシャツを着なければいけない決まりでもあるのでしょうかね? 銃を手に飛び出して来ても白シャツではまるで無防備に見え、しかも見えたかと思うと胸に血の花を咲かせて斃れるんですよ。悲壮感にあふれる一方、幾らなんでもちょっとやられすぎじゃね? 的なツッコミ入れたくなるような、鼻白むのをスピードと勢いで押し切っちゃう一幕ではありました。


ちなみに渦中のホワイトハウスに乗り込んで行くマイク・バニングのシャツは白じゃないんですよ、これが。朝、奥様に検分して貰ってたダークグレーのカラーシャツ。濃い色のシャツ着てるだけで強そうに見えますね、もう。現場についたらあちこちで装備拾ってすぐに防弾チョッキ姿になりますけど、その時いつの間にかネクタイむしりとってシャツの袖まくりあげてるのですよね。スーツで決めた姿もステキだけど、やっぱりジェリーさんは逞しい首や太い前腕むき出しにしてる方がセクシーよね♪ マクレーンがタンクトップならバニングは袖まくりを勝負服で決めて欲しいわ♪(シリーズ化決まってないけど)


ところでバニングの奥様役、ラーダ・ミッチェルなんですけど、これが「96時間2」におけるファムケ・ヤンセン並の勿体ない使われ方で、それだけが残念でした。あ~た、ラーダ・ミッチェルっつったらあれですわよ、出演作で人間以外のありとあらゆるものと戦ってきた女傑ですわよ。ワニと戦ったって勝利を収めてたんだから(その映画でサム・ワーシントンは負けてた。ラーダにじゃなく、ワニに)。ラストで「ダイ・ハード」的大団円を迎えるために良い役にはついてましたけどね。奥様は戦わないのね、この映画。


でも女でも奥様じゃなければ男同様に戦います。ってゆーか、女性戦闘員が男同様に殺されてました。これちょっと、珍しいんですよね。これまでのハリウッド監督ならどこかに女性を守る部分があって、女性が殺される場合はそこになんらかの躊躇があったり、見せ方をソフトにしたりとの工夫があったんですが、「エンド・オブ・ホワイトハウス」では本当に無頓着に殺されていきます。男女の差別がないというよりも、女性に対して無関心なんじゃないかと思うぐらい。あの、これが「トランスフォーマー」のマイケル・ベイ監督ならね、男も女も関係なく自分以外の人間はゴミだと思ってますからまとめて無慈悲に殲滅するんですけどね、それとも違うんですよね。相手がテロリストの場合は一切の区別なく問答無用で撃ち殺すということなんでしょうか。ちょっと引っかかった部分です。


とはいえ、ラーダの代わりに戦ってくれる強い女性キャラもおりまして♪ 山猫の如く勇猛果敢な国防長官、ルース・マクミラン。このキャラには拍手を送りたい! 演じたのはメリッサ・レオで、そういえば彼女も「オブリビオン」で見たばっかりだけど、「エンド・オブ・ザ・ホワイトハウス」の方がずっといい役だったわね。


もう一人、忘れちゃいけないアンジェラ・バセットはバニングの上司役で、モーガン・フリーマンと一緒にいいとこどりしてました。フークワ監督って、微妙に人種的偏向があるように感じるわ。


悪役が誰かは見た瞬間に分かると思うのでもはや書きません(ってゆーか予告見たら一目瞭然だがな。これ、一応、伏せておいたら観客ビックリ仰天するはずのシーンだったと思うんだけどな)。


で、最後まで見て、ジェリーさんが死ぬ程かっこよかったというのはおいといて、この作品で監督が何をやりたかったのかというと、恐らくホワイトハウス(とそれに象徴される全てのもの)を、完膚無きまでにボロッボロにしたかったんでしょうな。なんでそこまで壊すんだホワイトハウス、歴史的建造物なのに、とこれまた筋違いの文句を日本人の私だって言いたくなるんだから、本国の人が見たらいい気持ちしなかったであろうことは想像がつきます。バニングはアメリカ人かもしれないけれど、演じたジェリーさんはスコットランド人だし、奥様役のラーダはオーストラリア出身だし、いいとこどりのモーガンとアンジェラは黒人だし、そんなに「白」が嫌いかと。ホワイトハウスも白シャツも気の毒な限りでありました。


もっともそんなのは些末の話、映画自体は大変おもしろいので是非劇場まで足を運んで下さいませ。戦闘シーンの迫力は音響共々絶対大きいスクリーンの方がいいですぜ!