「クロユリ団地」(公式サイト


完全ネタバレなので下げます(ネタバレしても恐さに変わりはないと思うけど、一応ね)。


こちらは正真正銘、恐怖の映画。

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これ、監督、「パイレーツ・オブ・カリビアン」のゴア・バービンスキーって知ってました?


タイトルは「クロユリ団地」ですが、団地を舞台にしたお化け屋敷ものではありません。団地に巣食っている悪い霊が全ての原因のようで。

この悪い霊、すなわち公式サイトでもばんばん名前出しちゃってるミノル君ですが(だから映画見てても意外性が何にもないんだってば!)、これが何で悪い霊になったのかがまず私には理解できないんですわ。


ミノル君はかくれんぼでゴミ容器に隠れたら出られなくなっちゃって、しかもそのまま業者に容器ごと回収されて焼却場で業火に焼かれて非業の死を遂げてるのですが、でもさ、それって悪いのは自分じゃない? なんぼ非業の死を遂げたからって、なんで団地に取り憑いて孤独な人を取り殺すわけ? 5歳児に理屈は通らないからとでも言いたいわけ? でも恨むんだったら、せめて直接自分を焼却場に運んだ業者を恨めばいいんじゃない?


この筋の通らなさ、ほとんど稲川淳二の語る怪談の世界でございます。ここで語られる霊って、ほとんど自分が死んだというその事を恨みに思って誰彼となく祟るでしょ。一応、何かどこかで見るとか聞くとか触れるとかして霊と通じ合うというのがキッカケになるみたいですが、それって肩がぶつかったと言って因縁つけてくるヤクザとまるっきり同じでございます。日本人にとっては理屈の通じない相手が一番恐いのか。


まあ、それはおいといて、現実の日本では幼児がそんな事故に遭わないよう親がしっかり注意しておくのが普通だと思うのですが、不思議なことに映画の中ではミノル君の両親出てきません。5歳児が暗くなっても帰って来なかったら親は探しに行くだろうし、その前にかくれんぼしてた友達が探し回るでしょう。ミノル君、出られなくなってゴミ容器の蓋をガタガタ言わせてたんだから、誰かが通りかかれば発見して貰えたはず。この辺のリアリティーの無さを全て「ミノル君は運が悪かった」で片付けたとしてもですよ、じゃあ彼が恨むのは自分を見つけてくれなかった人達であるべきなのでは? なんでそういう直接関わりのある人すっとばして無関係な人々を祟るわけ??? 


日本には菅原道真という人がいて、不本意な死に方をしたもんだからその後国中に祟ったという古いお話があります。ミノル君、もはやそのレベルです。5歳児だったからクロユリ団地程度で済んでるけど、これが50歳になってから非業の死を遂げてたら日本を滅ぼしてたかもしれないわ。



だけどさ、それがいくら悲惨な死に様だったとして、なんでただの、ゴミ容器に隠れる危険性が分からない程度の5歳児がさ、死んだだけでそこまで強力な悪霊になれるのよ? 誰かに殺されたわけでもないし、それまで友達と楽しくかくれんぼできるような環境で育ってるんだから誰かに激しい恨みを抱いていたわけでもないでしょうよ。焼却炉で焼かれるのはもちろん恐怖と苦痛以外の何物でもないでしょうが、その時に一体何を思ってたらあんな立派な悪霊になって復活できるわけ? コツを教えて貰いたいもんだわ。


ってゆーか、悪霊になってから好き放題やってるのに、なんでまだ成仏しないの? しつこいようですが、ミノル君の親は供養もしてないわけ? 神として祀らなければいつまでも悪さをし続けるんですか、日本の悪霊は? ほんとにもう、図々しい。


この勢いでぽんぽん悪霊が誕生するんだったら、日本全国津津うらうら悪霊だらけになると思いますが。夏になれば怪談話に事欠かないのはそのせいですか。 


とにかく無差別&無制限の祟りって、恐いというより迷惑です。人でも霊でもこういうのには取り憑かれないのが一番。まさに、触らぬ神に祟りなしの世界。


だって原題の日本じゃうっかり触っちゃったら祟りを免れる方法って、ないんだもんね。尼崎の殺人事件も、主犯に因縁つけられて取りつかれた方々が結局その「祟り」を祓えずに死に追いやられたようなものでしょう。映画よりも現実の方がよっぽど恐いのです。