「アフターアース」(公式サイト


そこまでヒドイ出来の作品とも思わなかったですが、いろいろ損をしてるなあとは思いました。


まず、未来の地球の姿、世界観の魅力において「オブリビオン」に負けてるし、数多出てくる動物達の表現において「ライフ・オブ・パイ」に負けてるし、師弟(父子も含む)がつながりを深めていく過程において「ベスト・キッド」に負けてるんですよね。


それから、例え上記の他の3作見てないとしても映画として何か物足りないと感じるのはストーリーがシンプルすぎる点かな。SFっぽい道具立てが派手なワリに、やってることがほぼ逃げるだけだから。実際に見てみると、これはSFじゃなくてホラーのスタイルですよね、「アフターアース」。ただし、万人をホラーと納得させるほど恐くもないのよ。これが一番残念だわ。


図式としては手を変え品を変え襲ってくる殺人鬼が地球の自然環境で、その魔手からなんとか逃げようとするのがジェイデン君、ジェイデン君に遠くから支援するのがパパのウィル・スミスとなるんですが……これ、一番よくなかったのは実の親子が共演という部分でしょうね。いろんな意味で観客がその点踏まえて割り引いて見ちゃうってのが最も損してる部分だと思う。現実の親子関係を映画に持ち込んじゃあダメだわあ。


だって、運よく生き残ったのが父と子だけ……って展開でもう観客は「はいはい」ってなっちゃうじゃない。あんた達実際に親子だもんね、勝手に仲良くやって、ってムードがいやでも漂ってしまいますよ。


しかもだ、実生活での親子ぶりを映画の中では一掃して何もない所から始めたいと思ったのか、ウィル・スミス演じる父親が全く魅力ないのね! 厳格というよりただの退屈な頑固親父です。こんなに魅力のないウィル・スミスは初めて見たわ。


そうやって、ウィルが自分の魅力を殺してまで華を持たせようとした主役がカッコイイかというと、別にそうでもないというのがつまらなさに輪をかけております。ジェイデン君はハンサムだし、彼の柳のように優美な肢体を際だたせてくれる衣装の美しさは目を楽しませてくれますが、なんというか性格づけが単調と申しましょうか、常に極限状態にあって脅えているだけにしか見えないんですよね。ジェイデン君、そういう演技が確かに上手いんですけど、そればっかりじゃね~~~。


で、テーマが「恐怖の克服」。恐いのに恐くないふりして強がっているジェイデン君が真の恐怖と向き合い、それをのりこえ成長するというという……あまりにもありふれている上に、古臭い程ストレート。大体それ、「ベスト・キッド」でやったばっかりじゃん。


たぶん、「ベスト・キッド」時代の幼さを残すジェイデン君なら「アフターアース」の世界観にも合っていたんですよ。でも、この映画の中に現れるジェイデン君はとても大人っぽく見えるのに、行動も精神構造も妙に幼く見えるのが不自然で、それで感情移入できないんですね。これ、子どもの成長の早さを甘く見てたのが一番の敗因かも。


まあ、父は遠くにいても常に息子のことを思っているぞ、というウィル・スミスのメッセージは明確に伝わりましたけど。


でもそれ言うために映画まるまる一本撮る必要ないじゃん、と。


恐らく、これに尽きますよね、「アフターアース」。