(話的には この記事 の続きになります)。
NYから帰る便でも延々と機内上映の「スター・トレック イントゥ・ダークネス」を見続けていた私ですが、さすがに疲れていたので何度かけ直しても必ず途中で眠り込んで一回も完全に見通すことができなかったんですよね。
それが悔しくて帰国してからもう一度映画館に見に行ったんですけど、そこで耳にした「スター・トレック イントゥ・ダークネス」の楽曲の素晴らしさにに改めて感銘を受けてしまいました。実は私の耳は左右で聞こえ方が違うので、イヤホンだと音楽がちゃんと聞き取れないんですよね。脳がその「左右で聞こえが違う」状態に慣れるまで結構大変だったりします。で、その状態で聴いていたものと本来のサントラを両耳でとらえたものとでまるで違うんです。だから劇場で空気をふるわせて伝わってくる「イントゥ・ダークネス」の響きに身をひたした時、「あ、こんなに素晴らしい音楽だったのか!」と、今ひとたび感じ入ってしまったのですよ。
とにかく冒頭のホルンの、ちょっとくぐもったような優しい音色で流れてくるテーマに触れた瞬間から「スター・トレック」ファンなら心を奪われるわけで。このテーマはJJ監督がリブートさせた「ST(スター・トレック)」の前作からそのままひきついだもので、当然作曲家さんも同じ方なんですが、前回の時よりこの「イントゥ・ダークネス」の方が数段よくなっているような気が致します。メロディーそのものというよりも、アレンジの多彩さやオーケストレーションの巧みさ、さらに使用する楽器の幅の広さなど、とにかく多岐にわたって厚みが出てより複雑に、かつ精緻に構成されているという印象が強いです。それはやはり登場人物にベネ様演じるあの方がいたからでしょうか♪ それはさておき、とにかく映画音楽を知り尽くした作曲家が精魂傾け、丹精込めて作りあげたスコアだと思えます。
それは例えば、「ロード・オブ・ザ・リング」三部作でハワード・ショアがつけたスコアによく似ています。メロディーそのものではなく、音楽で作品のストーリーをきちんと語っている、その手法がね。感情がもりあがる部分に施す和音の趣味も。エンドクレジット聴いていると、物語を全部なぞってますもんね。オペラの序曲みたい。でも最初に全部ストーリーライン語っちゃうような序曲より、最後にもう一度ふりかえって陶酔するこっちの方が私は好きかも♪
ところで「ロード」のハワード・ショアといえば、三部作全部でオスカーとってる作曲家さんなわけですよ。だから私はこの「イントゥ・ダークネス」もオスカーレベルだろうと思ったんですね。それで作曲者であるマイケル・ジアッキーノ氏を調べたら、やはりオスカーウィナーでした。受賞作は「カールじいさんの空飛ぶ家」なんですが、これが「スター・トレック」と同じ2009年の作品なんですよね。この年は「ST」も大ヒットしているので、「カールじいさん」の受賞の影にはこちらも影響しているのではないかと思ったりして。どんなにヒットしてもSFだとノミネートさえ難しいから、オスカーは。来年「イントゥ・ダークネス」が作曲賞でノミネートされることを切に願います。
さて、「イントゥ・ダークネス」で特徴的なのは、ここぞというシーンでの的確な楽器使い。聞いてると、燃えます! 一部男性コーラスもありましたよね? この辺、実際、「ロード」のスコア研究したんじゃないかなと思ったりして。
でも「ロード」と一線を画しているのがピアノの使い方なんですよね。「イントゥ・ダークネス」では登場人物の心の襞に触れるようなシーンでは必ずピアノの調べが流れていました。これがまた泣けるのよね。
このピアノの静かな音色は、何しろ他の曲が全体的に激しいもんで一度や二度聞いただけでは全然覚えられなかったんですが、さすがに飛行機の中で5回ぶっ通しで聞くと覚えましたね。それでようやく思い出したんですが、こういうピアノの使い方は他でも見たぞ、いや、聞いたぞ、と。どこで見て聞いたんだろ……としばらく考えて思いついたのが「LOST」!。あ、JJ監督、同じ作曲家さんと組んでるのね、と思ってもう一度調べたら、そうだったのでした。うん、「LOST」でも「心に染みるシーン」になるとピアノが聞こえてきたものでしたよ。ピアノの響きは心の琴線にダイレクトに伝わってくるものなのね(人にもよるのでしょうが)。
作曲家のマイケル・ジアッキーノ氏、J・J・エイブラムス監督とは「エイリアス」時代から組んでいるそうな。ブラッド・バード監督とも「Mr.インクレディブル」から組んでて、私の大好きな「ミッション:インポッシブル」の3と4も音楽担当していたそうで……すいません、今まで名前覚えてなくて。今回、「イントゥ・ダークネス」でしっかり覚えたので、もう忘れません。
今年は「アイアンマン3」もお気に入りだったのですが、とにかく何度も何度も繰り返し見たのが「スター・トレック イントゥ・ダークネス」(帰国してからも5~6回見たのよ)。それはベネ様を始めとしてクリス・パインやザカリー・クイントなどキャスト全員の姿と声が好きなせいもあるけれど、何より大きいのは音楽のパワーだと思ってます。だって何度聴いても飽きないんだもの。聴くたびに心を持って行かれ、映画の冒頭から最後の一音の響きが消えるまで身を委ねて無上の喜びに浸っていることができます。これは本当に至高の体験ですね。