驚くべき謙虚さ「マット・デイモン」 ハーバードの秀才の素顔(産経新聞) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140201-00000557-san-movi

ハリウッドスター、マット・デイモン主演の話題作「恋するリベラーチェ」と「幸せへのキセキ」が2月のスターチャンネルで放送される。公開間もないヒット 作が早くもテレビに登場。「恋する-」はDVD発売前の異例の放送とあり映画業界でも話題を呼んでいる。現在のハリウッドを牽引するスター、デイモンを平 成17年に取材した際、「僕は今は売れているが奇跡です」と奢(おご)る様子も見せずに語る姿が印象的だった。それから9年。彼の人気の秘密は奇跡ではな く、この謙虚さにあったことを証明する。

■いつまでも人気続くわけがない

 取材したのは彼の出世作の1本「ボーン・スプレマシー」の日本公開に合わせた来日時。当時、主演映画3本が日本で同時期に公開されるなど彼の人気は絶頂期にあった。

 「世界中であなたの主演映画がヒット中ですが、この人気をどう思いますか?」と質問すると、彼はそれを否定するように謙虚に話し始めた。

 「今の状況はうれしいですが、僕は奇跡だと考えています。この人気が続くわけがないとも思っています」

 そしてこう続けた。

「僕は今もずっと脚本を書き続けているんですよ。俳優として売れなくなってもいいように。親友のベン・アフレックと今も連絡を取り合いながら…」

 彼は幼い頃から秀才で、米国最難関といわれるハーバード大学に進学(その後、中退)するが、俳優志望の夢をあきらめなかった。幼なじみのベン・アフレックと共同で脚本を執筆していたのだ。

 あるとき1本の脚本がプロデューサーの目に止まり、「映画化したいので買い取りたい」と言われる。そこでデイモンは「僕たちが出演することが条件です」と交渉する。プロデューサーは当時、無名だった2人の出演を渋ったが、デイモンは粘った末に出演を勝ち取る。

 この映画こそ、デイモンとアフレックを一躍スターにした「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」(平成10年日本公開)だ。米ゴールデングローブ賞脚本賞をはじめ賞レースを総なめにし、デイモンとアフレックは同作をきっかけにスターダムを一気に駆けのぼっていく。

■スター然としていない

 取材で、デイモンは「僕たち2人は、脚本を書きながら、ハリウッドで活躍することを夢見ていた頃の苦労を今も忘れていません。だから、今でも脚本を書い ているんです。たとえ俳優として売れなくなっても、映画界に居続けたいのです。この世界が好きだから」と熱く語り続けた。

 「今に売れなくなる」という心配をよそに、デイモンとアフレックは、その後も順調にハリウッドの話題作に出続けている。

 この取材の後、映画会社の宣伝スタッフがこんな話を教えてくれた。デイモンは日本側のスタッフに常に気を配り、帰国の別れ際、感謝の言葉を語りかけながら、一人一人と握手を交わし、帰っていったという。

 「私たちも感動しました。彼のような謙虚で礼儀正しいハリウッドスターはそうはいませんからね」とそのスタッフは笑った。スター然とし、スタッフに横柄なハリウッド俳優ははっきりいって少なくないのが実情だ。

 国内外問わず、第一線で活躍し続ける俳優を取材してきて、ある共通点を持っていることが分かってくる。それは決してスター然とせず、横柄でなく、誰に対しても謙虚で礼儀正しいということだ。

■奥底からにじみ出る全人格

 映画監督やプロデューサー、スタッフ。チームプレーが重要な映画製作の現場において、彼らに「次も一緒に仕事がしたい」と思わせる俳優こそが長く第一線にいることが分かる。スターの最大の特徴は、誰からも好かれ、尊敬されているということだ。

 デイモンの周囲にもそんな映画人が集まる。「恋するリベラーチェ」のスティーブン・ソダーバーグ監督はデイモンの盟友の一人。チェ・ゲバラを主人公にし た「チェ」2部作を監督し、石油メジャーの裏側を描いた「シリアナ」をプロデュースするなど米国の闇に斬り込む問題作を次々と手掛けるハリウッドでも一家 言持つ武闘派だが、デイモンやジョージ・クルーニーらと何度も同じチームを組みながら数々の傑作を生み出している。

 映画ファンも同じだ。「次も彼の出演作品が見たい」。こう思わせる魅力は、演技力なども重要だが、その俳優の奥底からにじみ出る全人格にあるのだと思う。