バカ映画の巨匠、河崎実監督 今度は壇蜜で「地球防衛未亡人」(産経新聞) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140208-00000587-san-movi

人呼んで「バカ映画の巨匠」。デビュー作の「地球防衛少女イコちゃん」(昭和62年)以来、ずっこけギャグが盛りだくさんの特撮映画を手がけてきた河崎実 監督(55)が、今度はセクシータレントの壇蜜(33)主演で「地球防衛未亡人」(2月8日公開)を世に出した。一貫してぶれない創作姿勢に「おれは『天 才バカボン』と『空手バカ一代』で育っていますからね。バカは褒め言葉ですから」と胸を張る。(藤井克郎)

 「地球防衛未亡人」のバカぶりも相当なものだ。ある日、東シナ海に浮かぶ三角諸島に宇宙怪獣ベムラスが出現する。微妙な場所だけに日本政府も中国政府も 手が出せないでいると、ベムラスは次に日本本土に上陸し、原子力発電所の使用済み核燃料を食べ始めた。ベムラスに最愛の人を殺されている地球防衛軍のダン 隊員(壇蜜)は復讐(ふくしゅう)に燃えるが、日本政府は核廃棄物の処理にベムラスを利用することを決定、攻撃に待ったがかかる。ところがベムラスは核廃 棄物の食べ過ぎでどんどんおなかが膨らんでいって…。

 「頭にあったのは3・11です。放射能が怖くて関東から避難しようとした人もいたのに、今ではすっかり忘れたふりをしている。でもおれの場合は人を楽し ませることしかできない。だったら全部入れようということで、いわばラーメン二郎の全部入りですよ。美女と怪獣とベテラン俳優と緩いギャグがおれの4本 柱、プラス政治風刺です。ゴジラだってビキニ環礁の核実験から生まれた怪獣ですからね。ただ核廃棄物を食べた怪獣はこれまで一度もいないんです」と河崎監 督。ちなみに企画当初のタイトルは「怪獣の雲古」だったそうだ。

 4本柱の一つ、美女は最初はもっと若いアイドルを考えたが、この企画ではどこも受けてくれない。そこでブレーク直前の壇蜜に声をかけたところ、二つ返事 でOKが出て、元芸者の未亡人という主人公像が出来上がっていった。さらに脇を固める俳優にも、「ウルトラセブン」の森次晃嗣、「ウルトラマンA」の沖田 駿一、「ウルトラマンネクサス」の堀内正美ら、ウルトラシリーズに出演したベテランがキャスティングされている。

 「壇蜜さんはよく受けてくれたと思います。映画はキャスティングがすべてですからね。セリフがとちらなかったらいいんですよ。現場で芝居がうまくなるなんてあり得ない。だから基本的には一発でOKです」と打ち明ける。今回は芝居部分は1週間、特撮は2日間で撮りきった。

 とにかくありとあらゆる特撮ものに精通している河崎監督は、明治大学在学中から8ミリ映画を製作。「地球防衛少女イコちゃん」で念願の商業映画デビュー を果たすと、「イコちゃん」シリーズや身長2000メートルのあり得ないヒーロー「電エース」シリーズなどでカルト的な人気を集める。さらに「いかレス ラー」「コアラ課長」「かにゴールキーパー」など一連のかぶりもの映画で世界的にも知られるようになり、「ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発」はベネ チア国際映画祭にも招待された。

 「外国人の方が反応が速い。『いかレスラー』でカナダのファンタジア映画祭に行ったときは1000人くらいの超満員で、いかレスラーが何かやるたびに大 爆笑が起きた。『コアラ課長』もオーストラリアで大爆笑だったし、上映の翌日にシドニーの街を歩いていたらおばあさんに肩をたたかれて、『見たわよ、コア ラ』って言われた。今回もユーチューブで予告編が再生されていて、英語で200件ものコメントが寄せられている。何しろ目標は世界中の人が爆笑することで すから」とうそぶく。

 だが笑いの陰で、特撮に関してはかなり強いこだわりを持っている。今回も低予算ながら、怪獣の造形に地球防衛軍の戦闘機や隊員のユニホームなど、「パシフィック・リム」(ギレルモ・デル・トロ監督)にも引けを取らない徹底ぶりを見せている。

 一度くらい4本柱にこだわらない本格特撮映画を撮りたいとは思わないか、と聞いてみると、「まあ、まず依頼がないですよね」と軽く受け流してこう話す。 「大作映画になると、製作サイドからこの女優を入れてくれとかいっぱい注文が来る。こっちは何をやっても自由ですから。これまで脚本でだめ出しを食らった ことは一度もない。といっても、ちゃんとした会社がお金を出してくれている。こいつは何を言っても無駄だとわかった上で、お金を出してくれるんです」

 今後は「電エース」シリーズの最新作「母さん助けて電エース」のDVDが3月に発売になるほか、「電エースタロウ」の製作も控える。これらはインター ネットでのカンパで製作費を援助するクラウドファンディングで作られており、出資者はエキストラ出演の機会も得られるという。

 創作への意欲は一向に衰えないが、本人は「砂場で怪獣の人形を持って『「ガオーッ』と遊んでいる子供のまま」だと認める。「あれを50歳過ぎまでやって いるということです。『またやってる』と言う人がいますが、『まだやってる』となると尊敬に値する。こうなったらやり続けるしかないでしょう」