英国のナショナルシアターライブの映像配信を日本のスクリーンで見られるのは、ひとえに主演の一人であるベネディクト・カンバーバッチの人気の高さのおかげですね! 

「フランケンシュタイン」はベネ様ともう一人のシャーロック(「エレメンタリー」の方)、ジョニー・リー・ミラーのダブルキャストで、今回見たのベネ様がフランケンシュタイン博士でジョニーがモンスターの方。

本編(?)上映前にナショナルシアターで現在上演中と思われる「コリオレイナス」に主演しているロキたんことトム・ヒドルストンの予告が流れるというオマケつき! これは見なけりゃソンでしょう! 舞台が始まる前には最初の「フランケンシュタイン」の映画の抜粋も見られます。有名な「イッツ・アライブ!」の台詞もあったわよ♪

一応劇場で見たので舞台ではなく「今年見た映画」の範疇に含めますと、満足度も面白さも「ターミネーター」に次いで第二位! 映画も見たし原作も読んでるし話は知ってるはずなのに舞台ならではの創意に満ちているので意外性も充分。脚本も演技も演出も素晴らしいので緊張感も持続するし、ところどころにふっと笑えるシーンも用意されているし、しかも最後は感動の内に幕が降りるという……欠点がどこにも見あたらない大傑作でした。それなのになんで第二位かというと、書かれた時代のせいでサラ・コナーみたいな女性キャラが出てこないからです。芯の強い、優しい女性はしっかり出てきますけどね♪

この「フランケンシュタイン」にも報復によって過激化していく暴力の描写は出てくるのですが、「スティーラーズ」や「オンリー・ゴッド」にはカケラも出てこなかったものがしっかり描かれています。

それは「理性」。そしてそれによって己の行動を顧みる「内省」。「フランケンシュタイン」でこれを行っているのがモンスターですから、「スティーラーズ」や「オンリー・ゴッド」の登場人物達はモンスター以下ってことになりますね。

それともうひとつ、「ゆるし」があります。実は「オンリー・ゴッド」の原題は "
Only God Forgives" なんですが、私にはそのタイトル以外どこにも "Forgive" が見いだせなかったんですよね~。それで物足りないというかしっくりこない気分でいたんですが、その後続けて「フランケンシュタイン」を見たおかげで「私が欲しかったのはこれだ!」という気分になれました。最後にカタルシスがないとね、映像で暴力シーンを延々と見せつけられてもゲンナリするだけじゃないですか。「オンリー・ゴッド」でそれが得られなかったのは痛かった。「スティーラーズ」にはハナから期待もしてませんでしたが。

それにしても「フランケンシュタイン」、実に現代的な内容でした。かなり原作に忠実なのに、見事な脚本だったと思います。

それにもまして見事だったのはジョニー・リー・ミラーのモンスターの演技。私、今まで映画やテレビで見ても彼のことをそこまで演技派だとはとらえてなかったのですが、土下座して謝りたくなりました。舞台の彼は最高です。身体表現も台詞も感情移入も素晴らしい! 声もまたいいんですよ。本当に舞台で映える役者さんです。

もちろんフランケンシュタイン博士を演じたベネ様も負けてはおりません。モンスター程派手な動きはないんですが、内面の変化をじっくりと見せてくれます。シャーロックやジョン・ハリソンで見せる「世界で一番頭がいいのはこの私」的傲慢さもあふれんばかりで、嬉しくなっちゃいましたね♪

次はこの二人の役が入れ替わったバージョンを見てくるつもりです。これはホント、チャンスがあるなら見なきゃソン! 2700円と普通の映画よりは少々お高いですが、英国に渡らなくて済むんだし、何より字幕ついてますから!!!