「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」公式サイト

「オン・ザ・ロード」(路上)公式サイト


タイトルそのままですが、先日「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」を見ていたら、何故か思い出されたのが昨年見た「オン・ザ・ロード」だったのでございます。「オン・ザ・ロード」はこの前の記事に書かれているように、ジャック・ケルアックの小説「路上」の映画化作品。アメリカのビートニクを代表するような文学作品を原作とする映画と、イギリスの現代の酔っぱらいを代表するようなスプラッタの入ったコメディには似通った点なんてもちろん全然ないんですが、でも共通する要素がたった一つだけあったんですね。


それはサイモン・ペッグが演じた主人公であるゲイリー・キングの人物像。この役を演じているサイモンは、「スター・トレック」のスコッティや「ミッション・インポッシブル」のベンジーとはまるで違います。恐らく、彼自身が本来持っている容姿とも違うイメージで演じているはず。そこにいるのは、男の子同士でツルんだ時には絶対にリーダーになってしまう、かっこよくて面白くて、次に何をするのか全く分からないけどそれが楽しいことには確信が持てるという、異常なまでに魅力的なヤツなのですよ。


ただしその手の危なっかしい魅力は大人になったら失せると申しましょうか、取り巻き側にも分別がついてくるのでそういう危険なタイプとは距離を置くようになったりするものです。少なくとも、普通に社会生活送るためには、いつまでも危ない遊びは続けていられません。


ところがゲイリー・キングは昔のままで戻ってくる。

40ヅラ下げた男が悪ガキ時代のはじけるような勢いそのままで。

そして当時のカリスマ性をいかんなく発揮してかつての仲間を誘惑する。

そして仲間達は誘惑にのってしまう。何故なら、彼には抗いがたい魅力があるから。青春時代に郷愁を覚える年齢になっていることもあるけれど、何よりゲイリーと一緒なら決して退屈することはないから。その事実は経験として、彼らの脳裏にしっかり刻みつけられているのである。


そういう「ゲイリー・キング」って、絶対サイモン・ペッグが普段演じているようなタイプとはまるっきり別人なわけで。「ワールズ・エンド」におけるサイモンのカリスマ的魅力って、「ホット・ファズ」をもしのぎますよ。そこにいるのは「ST」のスコッティではなく、どっちかというとジム・カーク艦長に近い人物。常に主役の立ち位置にいる人。


「ワールズ・エンド」は非常によくできた映画なので、サイモンがカーク的な役を演じていても違和感ないのですよ。いろいろ、多分背を高く見せたりとか、様々な映画的小細工を弄してサイモンを普段よりもずっとかっこよく見せていると思います。共演者も、はい、サイモンが仲間内で一番ハンサムになるように細心の注意を払ってキャスティングしたな、と。しかも皆芸達者揃い。マーティン・フリーマンなんか「ホビット」の時の主役オーラ完全に消し去って、きっちり「脇役その3」ぐらいの顔で出てましたからね~~~。


その超かっこいいゲイリー・キング、映画で見ている分にはいいけれど、現実にこういう人にかかわったら人生台無しにされるだろうなあと思ったところで私の脳裏に浮かんだのが「オン・ザ・ロード」でギャレット・ヘドランドが演じた役なんですね。作品ではディーン・モリアーティという名前ですが、モデルとなったのは実在の人物でニール・キャサディ。


このニール=ディーンという男がまさに「悪い遊びのカリスマ」で、作家であるサル=ジャック・ケルアックを魅了し、誘惑して連れだし、危険だからこそスリルに満ちたこの上ない体験をさせ、そして破滅一歩手前に追いやってはそのまま捨てて行くんですね。


「あっ、これじゃん」と思ったわけで。

だって「ワールズ・エンド」でゲイリーがやってることって、今は分別盛りになってるかつての悪ガキ仲間を魅了し、誘惑して連れだし、危険だからこそスリルに満ちたこの上ない体験をさせ、そして破滅一歩手前に追いやってるようなもんですもの。体験そのものは全く違いますけど。


「オン・ザ・ロード」では物語の語り手(=作家)であるサルが大人になるところで終わるんですが、「ワールズ・エンド」はその終わったところから20年後に再び疫病神が降臨して、また話が転がり出すって感じですかね。実際「オン・ザ・ロード」でディーンの出てない部分って、かなり退屈ですから。「ワールズ・エンド」で昔の仲間がゲイリーの誘いにのこのこついていってしまうのは、彼が日常の退屈さ忘れさせてくれることを心の底で願っているからなんでしょう。


そういう意味では一見かけ離れた作品である「ワールズ・エンド」と「オン・ザ・ロード」、底の底には共通のテーマが流れているのかもしれません。退屈な日常からの脱出。どちらが好みかは、見る方次第だと思いますが、私は当然「ワールズ・エンド」に軍配♪ サイモン・ペッグって、名優だわあ♪


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