「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」公式サイト




1:カンヌでグランプリとったっていうし、2:気になる俳優のオスカー・アイザックが主演だというので見に行ったんですが、これでハッキリしました。


1:カンヌの評価は私の好みとは全く相容れない、2:オスカー・アイザックは脇でも主でもやっぱりクズな役。


ちなみにここで私が言うオスカーのクズな脇役って、「ロビン・フッド」でのジョン王ね。同じリドリー・スコット監督の「グラディエイター」でホアキン・フェニックスが演じたルキウスに勝るとも劣らぬ愚昧なボケ君主ぶりに、この人ホントにアホなのかと疑いを抱いた程。


むろんそんなことはないのでして。


他の映画で普通な役を演じているのを見ると、エキゾチックないい男なのであります。でも、普通の役で普通に話して普通に笑ってると、何故かこの方目立たないのね。映画にあふれる美男美女の中に埋没してしまうのですわ。


オスカー・アイザックが目立つのは、表情を殺した時。感情の発露を制限した時とでもいうのかな。たとえばジョン王。この人はお馬鹿さんという設定なので、表情も大変乏しいのですよ。それから「ボーン・レガシー」のナンバー3(ここでも名もなき男だわ)。何のためにそこにいるのか、観客にも恐らく本人にも全く理由が不明な男。でもジェレミー・レナーのアーロン・クロスと向き合って一歩も引かない面構えだけは見事だったのね。何考えてるのか全く分からなくて。


そうです、オスカーは、理由はどうあれ、「何を考えてるのか全く分からない」表情をしている時こそ、群を抜いて目立つ人なのですよ。馬鹿で何も考えてないのか、利口すぎてこちらの考えを凌駕しているのかもつかめない。……けど、どっちかというと、馬鹿に近く見えてしまうのがご愛敬でしょうか。


オスカー御本人はジュリアード音学院を卒業しているというから、音楽家としての素養は非常に高いはずなのに、そうは見えないというのがまたスゴイというか……なんなんでしょうね、この人。才能と見た目のギャップがただならないわ。だから次の「スター・ウォーズ」にも抜擢されたのか。



というのが、私が彼に興味を持って「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」を見に行った理由なんですが、この作品でもやはり「何を考えてるのか分からない」役でしたね。


ってゆーか、「何も考えてない」に近かったです、ルーウィン・デイヴィス。タイトルロールなんで、この男が主役なんですが。なんでこんな男が主役なのか、そもそもそれが私にはサッパリ理解できないというか。


この作品は、やることなすこと全てが裏目に出てどんどんのっぴきならない状態に追い込まれていく男の話です。まあ大体コーエン兄弟の映画はそうなんだけど。そういう話でも、もっと主役を突き放してコメディにするとか、「裏目」に変な髪型のハビエル・バルデムを配して強烈サスペンスにするとかしてくれれば私が見てもわかるんですが、「ルーウィン・デイヴィス」の場合はペーソスで語る人間ドラマらしいので理解不能なのです。



大体ですね、その全てが裏目に出る悲哀に満ちた状況だって、そもそもルーウィン本人が招き寄せてるわけですよ。彼の後先考えない衝動的な行動が原因で「今」があるわけですから、言ってみりゃ全部自業自得なんです。ああ、あのルーウィンの状況を一言で語れるなんて、日本語って便利。


で、私は「自業自得」でそうなった人に、同情なんか毛ほども感じないわけですよ、どんなにハンサムで歌が上手くてギターの腕が確かでも。


もっとも「自業自得」といっても、ルーウィン、さほど悪いことしたわけでも毎日怠けていたわけでもなく、一生懸命今の状況から抜け出そうという努力は重ねていたのです。だから「ペーソス」なんだけど、だからってそれが何? と思っちゃうのは、受け手である私の方にそれを感じるパーツが欠けているからでしょうか。ええ、ペーソスよりスーパーヒーローの方が好きなもんで。


ルーウィンの「自業」は、自分の行動が及ぼす結果についてまるで考えないこと。何か思いついたら、ただそうしてしまう。そこから何かが派生する可能性になんて、全く気づかない。


ちなみにこの対極に位置するキャラクターが「SHERLOCK」のシャーロックだったり「スタートレック」のスポックだったりするわけですよ。彼らの熱烈なファンである私がルーウィンに何の魅力も感じないのは当然っちゃ当然なわけだわね。


ってことは「SHERLOCK」に魅力を感じない人達はこぞって「ルーウィン・デイヴィス」に肩入れするわけか。なるほど。こうして世界は均衡がとれている。

しかしだ、「がんばってもがんばってもダメなのは、結局自分自身がダメだからだ」なんて映画見て、誰か楽しいんですかね? コメディとして見るにはリアルすぎるんですが。


笑う以外にないような変なキャラクター(ジョン・グッドマン)も出てきますが、下品でうるさいだけで別におもしろくないし。


そうそう、彼のドライバーとして出てきた人が「あ、ブラピに似てる!」と思ったら、ブラピに似ている役でデビューしたギャレット・ヘドランドその人でした。相変わらず似てるんだなあと感心したりして。それも現在のじゃなくて、若い頃のブラピに似てるってのが嬉しいじゃないですか♪


そのギャレットが「オン・ザ・ロード」で演じた役のディーン・モリアーティこそ、はた迷惑なクズ中のクズと言える役でしたが、それでもルーウィンよりはずっとマシだったわと彼を見ながら思ってました。行動がキレてる分、花があったもん。


そしてさらに思い出したのが、このディーンを彷彿とさせたキャラであるところのゲイリー・キング。「ワールズ・エンド」でサイモン・ペッグが演じた役です。こちらも見事なまでのクズでしたが、一本筋の通ったクズでした。自分がダメなことを知ってて、それが人間だと大見得切ってましたからね。


こうしてみると、同じクズなら積極的に周囲を巻き込んで派手にバカをするぐらいの方がかえって魅力的なのかもね。地味に借金とかで周囲に細かく迷惑かけて、それを繰り返して反省もしないルーウィンのようなタイプは、もうホント、映画で見るのも願い下げだわ。