『テラフォーマーズ』原作者、「怒りを物語に反映しているから」とヒットの理由を分析(クランクイン!) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140818-00032296-crankinn-ent
火星に放ったゴキブリが500年間でおそるべき進化を遂げ、人間に牙を剥く――斬新な世界観と迫力たっぷりのバトル描写が話題になり、2013年版「このマンガがすごい!」ではオトコ編第1位にも輝いた『TERRAFORMARS(テラフォーマーズ)』。待望のコミックス10巻同梱OVA「バグズ2号 前編」がいよいよ発売となり、この秋からTVアニメ「アネックス1号編」が放送となる。ますます盛り上がりを見せる本作の原作者・貴家悠氏に、原作の誕生秘話を聞いた。
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「連載が始まったときは、6話で終わる予定で描いていたので、こんなに続くとは思っていませんでした。いずれラグビー漫画でブレイクする貴家悠の初期の迷作になればいいなって思っていたくらいです(笑)」。
屈託のない笑顔で明るくジョークを飛ばすのは、大ヒット漫画『テラフォーマーズ』の原作者・貴家悠(さすがゆう)氏。若干25歳にして、本作がデビュー作となる新進気鋭の漫画家だ。貴家氏が「いずれラグビー漫画でブレイクしたい」と語るのにはわけがある。
「もともとラグビーをやっていたこともあって、ラグビー漫画が描きたかったんですよ。それでネームを編集さんに見せたら、『よかったよ。それじゃあ次は潜水艦か火星の話を持ってきて』って言われて。えっ、今読んだのラグビー漫画ですよね? って(笑)」。
実は当時、担当編集者が夢中になっていたのが映画『第9地区』や『K‐19』だったのだ。そんな何気ない一言から誕生したのが『テラフォーマーズ』だった。それにしても、「火星に放ったゴキブリが進化して、人間と戦う」という奇想天外な発想はどこから生まれたのか。
「なんでゴキブリなんですかってよく言われるのですが、特にゴキブリありきで始まったわけじゃないんですよ。火星を住めるようにするテラフォーミングという考え方自体は昔からあるんです。そこから火星でゴキブリと人間が戦う話を思いつきました。なんで戦うのかって言われたら、そりゃもう行ったら戦うしかないですよ! 人生は戦いですからね!(笑)」。
『テラフォーマーズ』を描いていると言うと、昆虫に詳しいのではと思われることが多いという貴家氏。しかし、実は本作の連載が始まるまで、特に虫が好きなわけではなかったのだという。
「連載することになってから図書館の昆虫本コーナーに通ったりしているうちに、面白いなと思い始めてちゃんと調べるようになりましたね。子どもの頃に虫取りなんかはしたことありますが、でもせいぜいカブトムシくらい。僕の世代で最後くらいじゃないでしょうか」。
漫画が何より大好きな子どもだったという貴家氏。小学生の頃から漫画は大好きで、漫画誌を何冊も買って読んでいた。当時、夢中になっていた作品から受けた影響は大きいと話す。
「『ジョジョの奇妙な冒険』と『ダイの大冒険』、それに『世紀末リーダー伝たけし!』と『ARMS』、『グラップラー刃牙』に強い影響を受けています。近代バトル漫画は『ARMS』が完成形。あれにどれだけ近づけられるかが勝負だと思っています。ジョジョ、刃牙、ARMS、たけしを知った上で『テラフォーマーズ』を読むと、あ~! って思う場面が出てくると思いますよ(笑)」。
とはいえ、『テラフォーマーズ』は決して、それら過去の名作の模倣で終わっていない。貴家氏がこれまでに読んだ作品や自身の経験から生まれた独自のエッセンスが、唯一無二のオリジナリティを与えている。
そんな貴家氏自身は、『テラフォーマーズ』のヒットの理由をどのように分析しているのだろうか。
「抽象的な表現なのですが、感覚が若いのかもしれません。溜め込んでいる怒りだとか、熱い思いだとかをダイレクトに物語にぶつけているんです。たとえばアドルフさんの辺りの話は熱がこもりすぎて、作画の橘先生にネームを読んでいただいたら、面白いとかつまらないじゃなくて『怖いよ』って言われました(笑)。人生で起きたことへの怒りをエネルギーに変えて物語に反映しているのが、読者に伝わって共感していただいているのかなと」。
『テラフォーマーズ』を生み出した若き作家・貴家悠。豊かな感性と類まれな探究心を糧に、これからも物語を紡ぎ続ける。(取材・文・写真:山田井ユウキ)
コミックス『テラフォーマーズ 10巻 OVA同梱版(バグズ2号前編)』は、8月20日発売。価格は1980円(税込)。
TVアニメ『TERRAFORMARS(テラフォーマーズ)』は、TOKYO MXにて9月26日24時30分より、CSテレ朝チャンネル1にて10月2日24時より放送開始。