鬼才クローネンバーグ監督が語る 「日本への思い」と「初めて続編を望んだ映画」(クランクイン!) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141220-00034394-crankinn-movi


数多くの個性的な作品を世に送り出してきた鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督。最新作『マップ・トゥ・ザ・スターズ』ではハリウッドをテーマに、自身のキャリア初となるアメリカでの撮影に挑んだ。クローネンバーグ監督とハリウッド…不思議に感じられるこの融合に大きな意味はあるのだろうか。監督本人に真意を聞いた。

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 「僕自身、ハリウッドに執着したことは一度もないし、映画作りを題材にした作品は、近親相姦的なイメージがあって意識的に避けてきたんだ」と、クローネンバーグ監督。本作はあくまで脚本家のブルース・ワグナーのシナリオと感受性に惹かれてメガホンを取ったことを強調し、さらに「こういう映画を撮るとは夢にも思っていなかった。僕自身が一番驚いているよ」と笑う。

 それでも「色々な企画で何度もロスのスタジオには通っていたから、ハリウッドを知らないわけではないんだ」と付け加える。「ハリウッドが題材だけれど、この映画は、そこに住む人の恐れや野心、プレッシャーの中に置かれた状況を観察した作品。だからシリコンバレーでも、ウォールストリートでも成立する映画なんだよ」と作品に込めた思いを語った。

 そんなクローネンバーグ監督は、過去何度も来日するなど、日本に対しては特別な思いがあると言う。「僕は1950年以降の日本映画が大好きなんです。この間も、友人と、自宅で“今村昌平フェスティバル”をやろうって盛り上がってね。当然、黒澤明監督の作品も知っていますし、その時代の日本の作品はずっと見ている。日本映画には積極的に興味を持っているんだ」。


 となると、日本を題材にした映画製作への期待は高まる。「実は僕が初めて書いた『Consumed(原題)』という小説には、日本人のキャラクターが1~2名出てくるし、東京でのシーンも長く描かれているんだ。東京には奇妙な親近感がある。僕には日本語は難しすぎるけれど、不思議なことにアットホームに感じる言語なんだ」と、日本に対する思いを打ち明ける。

 しかし、そんな思いの傍ら「過去に一緒に仕事をしたプロデューサーが映画化をサポートしたいという話があった。でも途中で気づいてしまった。小説で完結しているものを、さらに映像で価値のあるものだと証明するのは意味のないことだとね」と胸の内を明かしたクローネンバーグ監督。ただ「別の監督がやりたいと手を上げれば分からないけれど」と可能性があることを示唆した。

 一方、「初めて続編を作りたい」と思ったという映画『イースタン・プロミス』については「ニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)がロシアに戻った後の物語ということで脚本も用意してあったけど、様々な事情でプロジェクトはなくなった。続編を作ることは絶対ありません」と完全否定。「今は小説執筆が最大の楽しみ」と語ると共に「映画はよっぽど素晴らしい企画じゃないとね」とファンにはちょっと寂しい展望を打ち明けた。(取材・文:才谷りょう)

 映画『マップ・トゥ・ザ・スターズ』は12月20日より全国公開。