遺作『ワイルドスピード SKY IMSSION』公開。車を愛した在りし日のポール・ウォーカー(Stereo Sound ONLINE) - Yahoo!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150417-00010000-ssonline-movi
インタビューの名手として知られる、映画ライターの金子裕子さん。これまで取材したスターは星の数ほど、というベテランです。そんな金子さんが実際に会って感じた“スターの素顔”を、Stereo Sound ONLINE独占でお届けします! (Stereo Sound ONLINE 編集部)
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久しぶりにロサンゼルスへ来た。東京は、寒の戻りで桜も早めに散ったのに、この地は真夏の匂いがする。そしてカリフォルニアの青い空には『ワイルドスピード SKY IMSSION』のビルボードがデーンとそびえ立っていた。
これが遺作になるなんて……、ああ~ポール・ウォーカー……涙。
2013年11月、カリフォルニア州のサンタクラリタで、カーレースドライバーの友人が運転する赤いポルシェが、コンクリート製の街頭や街路樹に激突して大破。助手席に乗っていたポールも帰らぬ人となったのだ。
事故の知らせを受けた父親は、「いつかこんなことになるんじゃないかと心配し、日頃から注意をしていたのだけれど……」と悲嘆にくれていた。
私がポールに初めて会ったのは、『ワイルドスピードX2』のプロモーションで来日した2003年。『シーズ・オール・ザット』(99年)の頃から、ちょっと頼りなさそうな風情だけど一途な想いを秘めた美しい瞳に惹かれていたから、実物との会見には大きな期待を寄せていた。
そして、その想いは裏切られることなく、もの静かな語り口と、じっとこちらを見つめる誠実なまなざし、そしてなにより照れくさそうな笑顔が本当に素敵な人だった。
「この映画に関わる人、キャストもスタッフも全員が、映画はもちろん、車も大好きなんだ。もちろん僕も大好き。この撮影のためにクラブカーレースにも通ったし、ドライビングテクニックのトレーニングも欠かさなかったから、かなり巧くなったと思うよ。その違い、みんなわかってくれたかなぁ?」
車の運転も改造も大好きというポールの、もうひとつの趣味はサーフィン。ティーンの頃は『ビッグ・ウェンズデー』(78年)に憧れて、1日中海に居たのだとか。
そして、いまはそんなふたつの趣味を堪能するために、海へ続く浜辺沿いにあるマリブの邸宅には、バカでかいガレージと修理工場も備えているという。
「暇さえあれば、メカをいじり、飽きたら海に入る。そういう気ままな時間が、最高にしあわせなんだ。もっとも、いまはこのシリーズがヒットしてお金も入ってくるようになったから、改造なんかしなくても速い車を買えるようにはなったんだけどね(ニヤリ)」
そこでよせばいいのに、「どんな車を、何台くらい持っているの?」と質問するや、「ポルシェやBMWや、とにかくたくさん持っているけれど、なかでも日産はすごく優秀で……」と車の話を熱っぽく語ってくれる……。
す、すみみません! じつは、私は免許も持っていないクルマ音痴。ポルシェも日産も区別がつかないんですが……。
それを伝えると、「そんな君が『ワイルド・スピード』シリーズを楽しめたの?」と心配顔。「でも、大丈夫。クルマには興味がないけれど、イイ男には興味津々だから。ハンサムなあなたを観ているだけで、楽しめたわ」と答えると、「そういう映画の楽しみ方もあるんだねぇ」って大爆笑された。
インタビューの最中に、「普通の道路ではスピードを出さないように気をつけている。でも、その代わりサーキットに行って猛スピードを出す快感を味わってはいるけどね」と言っていたポール。
亡くなった事故では、彼がハンドルを握っていなかったことがせめてもの救いだが、それでも死んでしまえばおしまいだ。あのチャーミングな笑顔はスクリーンの中に閉じ込められ、実物には二度とお目にかかれない。
遺作を観るたびに、この悔しい気持ちがいつも蘇るんだろうなぁ。残念!
■『ワイルドスピード SKY IMSSION』作品情報
監督:ジェームズ・ワン
出演:ヴィン・ディーゼル/ポール・ウォーカー/ドウェイン・ジョンソン/ミシェル・ロドリゲス/ジョーダナ・ブリュースター/タイリース・ギブソン/クリス・リュダクリス・ブリッジス
原題:FAST & FURIOUS 7
2015/アメリカ/2時間18分/シネスコ/ドルビーデジタル
配給:東宝東和
4月17日(金)全国ロードショー