カンバーバッチ、いまだにリサーチしている!『イミテーション・ゲーム』役への思い入れの深さ明かす(シネマトゥデイ) - Yahoo!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150420-00000015-flix-movi
映画『イミテーション・ゲーム』で運命に翻弄(ほんろう)された悲劇の天才数学者アラン・チューリングにふんし、オスカー初ノミネートを果たしたベネディクト・カンバーバッチが4月上旬、電話インタビューに応じ、役と時代背景について「いまだにリサーチして、話を聞いて、本を読んでいる」と作品への思い入れの深さを明かした。
カンバーバッチがプロポーズ!フォトギャラリー
チューリングは、第2次世界大戦時に世界最強とうたわれたドイツ軍の暗号エニグマを解き明かして戦争終結とコンピューターの発明に貢献した人物。しかし、それが機密作戦であったことや、その後当時違法とされた同性愛で逮捕され、1954年に41歳で自殺したことから長らくその活躍に光が当てられることはなかった。ベネディクトは『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(2013)の撮影中に、映画化されていない優れた脚本のランキング“ブラックリスト”のトップにこのチューリングについての脚本があることを知った。
「同じころエージェントにも薦められて読んだんだけど、すぐさまその脚本と恋に落ちたよ。(脚本家の)グラハム・ムーアは1ページ目からアランを素晴らしく描写していた。ミステリーだった。彼とそのチームがどのようにしてエニグマの暗号を解いたのか、そして彼自身についても明らかになる。チームや(キーラ・ナイトレイが演じたチューリングのよき理解者で数学者の)ジョーンとの関係や、子供時代のフラッシュバックによってね」。
ヒュー・ホイットモア作のイギリスの戯曲のテレビドラマ版「掟/ブレイキング・ザ・コード」を観ており、チューリングについての知識は多少あったものの、ムーアの脚本を読んで「なぜこんなことが起きたのか。この物語を伝えなくてはならない」と決心。脚本を追っていたベネディクトは製作スタジオが決まった段階でプロデューサーたちに会い、その後モルテン・ティルドゥム監督とも会って見事役を射止めた。「奇妙なプロセスだけど、僕は運がよかった。これは僕がやりたいことで、そのままどこかへやってしまうなんてできなかった。とても強い力を持った脚本だったんだ」と振り返っている。
役づくりでは伝記や資料を読むだけでなく、現存のチューリングのめいや彼の元同僚から話を聞いてその内面に迫った。「彼らはアランの人間性、内面を教えてくれた。子供たちはアランと一緒に居るとき、ほかの大人たちと居るときよりもリラックスでき、楽しんだ。それはアランが対等に扱ってくれるからだ。対等という意味ではジョーンについても同じ。当時は完全な男性社会だったが、彼は彼女を同等に扱い、男性と同じ給料が支払われるよう計らった」。ベネディクトは「彼は冷たく、心を閉ざした人というわけではなかったんだ。面白くて、礼儀正しくて、内向的ではあるがとても温かい人だった」と声に力を込めた。
めいや元同僚たちがベネディクトに語ったチューリングの本当の姿そのもののように、本作にはユーモアがあふれている。「本作を通して最初に観たのはトロント国際映画祭(昨年9月)のプレミアでのことだったんだけど、こんなに面白いなんて信じられなかった。忘れていたんだ。シリアスな題材で悲劇の物語なのにね。それが本作を特別なものにしている」。
晩年、同性愛で有罪となったチューリングは、“治療”のため毎週ホルモン注射をされることになってしまう。「医者が毎週の投与を避けようと、腰のところにホルモンを少しずつ出す装置を埋め込もうと提案したそうだ。チューリングはそれを受け入れるんだけど、ある夜、キッチンに行って、引き出しを開けて肉切り用の大きな包丁を手に取った。装置を体から取り出そうとしたんだよ。だから僕は、彼が(機械の)クリストファーと自分の人生にさよならを言う最後のシーンで、足を引きずることにした。痛みがあったはずだからね」。
本作でのベネディクトの演技が人々の心を揺さぶるのは、その裏に徹底した役への理解があったからだろう。ベネディクトは「戦争の英雄で、ゲイのアイコン、そしてコンピューター科学の父……。あの短い生涯でこんなにも多くのことを成し遂げた。彼の人生は並外れているよ」とチューリングへの称賛の言葉を惜しまなかった。(編集部・市川遥)
映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』は公開中