兄弟喧嘩?


いやもう、この「ジュピター」も後半になってくるとタイクツして

「まだ? まだ終わんないの? まだ?」(←心の叫び)

とお子ちゃまレベルで焦れてました。映画でここまで退屈したのも久しぶりだわ。もっともその後、試写会で見た邦画がこれよりさらにひどかったので、逆に「ジュピター」の株は上がったんですが。


まあ、少なくとも、ほら、「ジュピター」、映像とアクションは見応えありますから。

これはやっぱりスゴイです。後半退屈しても映画館に行った価値はありましたよ。


ただね~、逆にここまでやっちゃうと、期待値が上がっちゃう分、物語がたいしたことないと徹底的につまらなく感じてしまうのですよ。


だって、世の中には「スター・ウォーズ」というSF映画の金字塔がドーンとそびえ立っておりますから、銀河帝国(みたいの)がどーだこーだという作品はどうしても比べられてしまうでしょ。そうするとスケール的に「SW」に匹敵する作品は、必然的に内容もそれにふさわしい物語を求められるわけですよ。ヒーローとヴィランが雌雄を決して戦うなら、銀河の命運とか人類の存亡とかかかってないとね。


あ、今思い出した!

そういえば「ジュピター」でも一応地球人類は滅亡に瀕していたのでした!

いや~、そうだったそうだった。でもキレイサッパリ忘れてたぐらいだから劇中でも全然インパクトなかったんだわ。


そうそう、それでその人類の運命がヒロインであるジュピターの去就にかかっていたわけなんだけど……あんまりそっちの方で張り詰めた感じ、なかったんだよなあ。だから退屈だったんだけど。


もちろんお定まりのヒロインと騎士役とのロマンスもあったんだけど……これも特段感動するとか、涙を絞るとか、全然なかった。恋に落ちるキッカケも特にこれといってなくて、相手がチャニング・テイタムなんだからそうなるわよね、みたいな感じで。


結局のところ、ヒロインのジュピターを筆頭に登場人物に魅力がないのが全ての原因でしょうか。このつまらなさ、前の記事で書いた『屍者の帝国』のそれにソックリなのです。主人公が傍観者的位置にいるのも含めて。世界観で風呂敷広げすぎて、たたみきれなくなって最後バタバタになった感も一緒かも。もっと深く描写すべき点があったんじゃないの? と思いつつも終わったことでほっとしてどーでもよくなってしまうあたりも……。


ミラ・クニス、この作品では彼女のチャーミングさを全然引き出してもらってなかったと思います。他の映画だともっと美人に撮って貰ってるよねえ? 身体を張ってアクションしてるのには感動したので、彼女の演じたジュピターが全然魅力的じゃなかったのが本当に残念です。


それはチャニング・テイタムも同様で、アクションは激しいし身体は立派だけど、彼の人間的な魅力が役に溶け込んで一体となって醸し出されるというのがなかったですねえ。「ホワイトハウス・ダウン」の彼の方がずっと素敵でしたよ。


良かったのは渋さを増したショーン・ビーン。娘を溺愛するオヤジ役が似合うようになったとは……「96時間」リメイク版の主人公に今から名乗りを上げとくといいと思う。


それからアカデミー賞に輝いたばかりのエディ・レドメイン。表情に一番見応えがあったのはやっぱり彼ですね。随所で光る演技を見せてくれてました。「ジュピター」に多少なりとも深みがあるとしたら、それはエディ君の演技の賜でしょう。


そういえば、それこそ「スター・ウォーズ」の向こうを張ったつもりか、エディ君演じるバレムとその母との確執がクライマックスとなり、そこで彼が口にするセリフがばっちり決まってそこでドラマは最高潮……と制作者は思っていたのでしょうが、残念ながら全然盛り上がらなかったのですよね。意外性はあったにしろ、共感が呼べないセリフだったんだと思います。いえ、セリフそのものじゃなくて、それを口にしたことになってる人の立場がね。「何言ってるのよ、アンタ」って感じですもん。



まあ、同じように銀河に大風呂敷広げた挙げ句、すっかりコケた作品に「リディック」というのがありますが、あれだけコケといてまさか続きはないだろうという大方の予想を裏切り、「ワイルド・スピード」シリーズで追い風にのるヴィン・ディーゼルが主役だったのをいいことにちゃっかり9年後に続編の「リディック ギャラクシーバトル」作っちゃったって例もありますから、今から10年後にチャニング・テイタムかエディ・レドメインかショーン・ビーンが大スターになってたら「ジュピター」だって作られる可能性はあるのです。誰も前の話覚えてないだろうから、何でもOKだし。


でも、他の星に転生したお姫様を主人公にSF映画つくりたかったんなら、日本に「セーラームーン」っていう立派な原作があったのにね。今ならそれこそハリウッドで実写化できるわよ。