ホラーの鬼才アジャ監督、漫画『コブラ』実写映画化は「キャスティング難しい」(クランクイン!) - Yahoo!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150509-00036767-crankinn-movi
『ハイテンション』『ミラーズ』『ピラニア3D』などホラー映画の傑作を次々と生み出しているフランス出身の鬼才アレクサンドル・アジャ。ホラー映画界の貴公子と呼ばれることもしばしばだが、最新作『ホーンズ 容疑者と告白の角』では、ホラーの枠に囚われない大胆な世界観を繰り広げている。アジャ監督本人に、新たな挑戦に懸けた思いを聞いてみた。
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本作は、スティーヴン・キングを父に持つ新鋭作家ジョー・ヒルの長編小説『ホーンズ 角』を、『ハリー・ポッター』(以下、ハリポタ)シリーズのダニエル・ラドクリフ主演で映画化した衝撃作。恋人メリン(ジュノー・テンプル)が殺害され、容疑者にされてしまったイグ(ダニエル)。苦悶の日々を過ごす中、彼の額に突如としてツノが生えだす。次第に大きくなっていくツノに恐れおののくイグだったが、そのツノは人に真実を語らせてしまう不思議な力があることを知る。
ホラー監督と呼ばれることに少なからず抵抗があるというアジャ監督。「自ら進んでホラーを撮ろうと思っているわけではなく、自分が惹かれた物語のジャンルが、たまたまホラーだった」と説明。さらに、「極限の状況に置かれた主人公たちを観て、その世界に観客も入り込んでいく“観客没入型”が好きなんだ。これはジャンルに関係なく成立するもの」と強調する。今回の作品は、まさに主人公が八方塞がりの状況に置かれるが、「原作を読んで、映画作家としてワクワクした。固定ジャンルから一歩踏み出すきっかけを与えてくれた」と声を弾ませる。
ところで本作は、殺人容疑者であるのダニエルの頭に突然ツノが生えるというホラー要素に加え、純愛、友情、人間ドラマなど、ジャンルに囚われない多面体な描き方に挑戦している。まるで短編映画の集合体、何が出てくるかわからないサイコロのような作品。「実は製作過程で上の人間に“どういう映画を撮りたいか”を説明するのが難しかった。だからいつも、この映画は『ブラックスワン』+『ファイトクラブ』だって言っていた。もっといえば、この映画はスーパーナチュラルな寓話。だから一番近いのは、『素晴らしき哉、人生』を逆回転させたものかもしれないね」と独特の表現で作品を解説した。
ダニエルの好演もこの作品を成功に導いている大きな要因の一つ。「彼は『ハリポタ』の呪縛から逃れられないことを理解しているので、それを払拭するために、難役に挑んでいるわけではない。役者としてのエゴがなく、自分の持っているものを100%ぶつけてくる強さを持った俳優だ」と絶賛。だが、その一方で、「この映画は、ある意味『ハリポタ』の延長にある作品かもしれない。なぜなら、魔法の力で大切な人を救うために、ダークな力を借りなければならない。とても似通ったところがあるので、『ハリポタ』ファンにも観ていただきたい」とアピールした。
現在、寺沢武一の人気漫画『コブラ』の映画化プロジェクトに奮闘するアジャ監督。小さい頃、母国フランスで夢中になって見ていた同作の映画化は悲願ともいえる。「映画化権を取得できたことはうれしいが、製作費が膨大にかかるし、キャスティングも難しい。あのコブラをいったい誰が演じるんだ? と考えると行き詰まってしまう」と吐露。ただ、難航はしているが、企画は確実に進行中ということで、今後の動きに注目していきたい。(取材・文:坂田正樹)
映画『ホーンズ 容疑者と告白の角』は5月9日より全国公開。