アクションとバトルで“感情”を描く。監督が語る『アベンジャーズ』最新作(ぴあ映画生活) - Yahoo!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150615-00000000-piaeiga-movi
超大作『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』が全世界で驚異的なヒットを記録している。それぞれが単独で主演作のある人気キャラクターがチームを組む超大作を任されたのは、前作同様、ジョス・ウェドン監督。『アベンジャーズ』でヒーローの“弱さ”を描くことで緊迫感あふれるドラマを描き出したウェドン監督は新作で何を描くのか? 国際電話で話をきいた。
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“アベンジャーズ”は、天才的な発明家トニー・スターク=アイアンマン、怒りによって巨人に姿を変える科学者ブルース・バナー=ハルク、神々の国を追われたソー、女スパイのナターシャ=ブラック・ウィドウ、最強の射手ホークアイ、超人キャプテン・アメリカらが集結した夢のドリーム・チーム。前作『アベンジャーズ』でウェドン監督は、あえて彼らの弱さや不完全さを描き、彼らがひとつのチームとして団結できないドラマを展開させ、観客をハラハラさせた。
そしてついに公開になる最新作。「“チームもの”は常に進化し続けなければならない」という監督は、脚本を執筆するにあたって、フランシス・フォード・コッポラ監督の『ゴッド・ファーザー PartII』を参考にしたという。「あの映画は一度は崩壊したファミリーが新たな姿で再生していく過程を描いた作品です。この映画でも前作で出来上がったチームをもっとじっくりと描きながら、前作で露呈した“弱さ”にさらにメスを入れていこうという想いがありました」。
そこで監督は、アイアンマンやキャプテン・アメリカら登場人物たちの心情や背景をダイナミックなアクションに丁寧に織り込んでいった。結果的に彼らは極限状態の中で“なぜ戦うのか?”という問題にそれぞれ直面する。「“チームもの”の醍醐味は立場や背景、動機が違うメンバーが、何らかの事情でひとつにならざるをえなくなることだと思います。それはチームだけでなく、コミュニティや社会の原点です。それぞれ事情や動機が違って、そりが合わないかもしれないけど、同じ場所にいる以上は団結しなければならない。映画はどれだけシンプルな構造であっても、私たちが生きている現代社会を反映せざるを得ないと私は思っています。もちろん、この映画は政治的なメッセージを描いているわけではありませんが、私たちの生きている社会がどれだけおかしなことになっているのか? 絶望的な状況の中で団結することがどれだけ大事で、希望をもたらすのかを感じとってほしいですね」。
さらに監督がこだわったのは、登場人物たちのバトルや会話、衝突にドラマと意味を描きこむことだった。「今回こだわったのは、ランダムに衝突を起こすのではなく、ちゃんとそこに“意味”をもたせることでした。例えば、劇中で暴走したハルクと、“ハルクバスター”を装着したアイアンマンが戦う場面があります。あのシーンでは、壮大な見ごたえがあるアクションを描くのはもちろんですが、その背景には親友であるトニー・スターク(アイアンマン)とブルース・バナー(ハルク)が戦うことに意味があるし、感情的なドラマがあります。あれは単にバトルをしているのではなく、相手を説き伏せようとするシーンなのです。他のシーンでも同じように衝突が起こってもそこにはちゃんとドラマや意味があることにこだわりました」
さらに監督は本作で、あえて“愛”を描くことを選択した。「脚本を書きながら“キャラクターのこれまで観客に見せていない側面を見せたい”と考えたときに自然と“愛情”というテーマに行き着きました。もちろん、キャラクターの本質を表現するという点ではどうしても彼らのビジュアルやアクションが重要になります。しかし、キャプテン・アメリカが敵の攻撃をひたすら盾で防御する場面があるのですが、そこでは彼のもっている自己犠牲や愛情の精神が描かれていますし、ブラック・ウィドウ=ナターシャとハルク=ブルース・バナーのロマンスの背後にあるのは、“誘惑”のスキルを駆使して必要なものを手に入れてきたナターシャのスパイとしての過去があります。すべてのアクションやドラマの背後にはキャラクターの過去や性格、愛する人に対する表現の違いが描かれているのです」。
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』は圧倒的なスケールのアクションやバトルを描きながら、同時にキャラクターの“感情”やドラマを迷うことなく追求し続ける。そこにはウェドン監督の「メロドラマを描くことを決して恐れない」という信念がある。「私は映画の中ではキャラクターが感情をムキ出しにしたっていいと思っているんです。この映画は痛快アクション映画ではありますが、マッチョで汗がスクリーンから飛んでくるような(笑)映画は面白くないと思いますし、この種のアクション・エピックは、最終的につきつめていくとオペラと同じになると思っているんです。アクションもドラマもとにかく劇的で、それこそが醍醐味なのです。だからこそ、この映画では迷うことなく、感情を描くことを心がけました」。
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』
7月4日(土) 全国公開